表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

呪いと福音

 とある地に刀神を崇める神社に使える刀匠の一族がいた。

 一族にある時、一人の天才が生まれた。

 その少年は三つの福音の持っていた。

 彼の見出した素材は、刀匠だった父によって最高の刀を生み出した。

 少年が持っていた一つ目の福音は素材の眼。

 その刀は、少年が見つけた使い手は、その刀の力を余すところなく引き出すことができた。少年は人の才能を見抜くことができた。

 少年が持っていたのはもう一つの福音は素質の眼。

 そして少年は金属に愛されていた。

 どんな金属を扱うにも、その特性や性質が少年には手に取るように分かった。

 少年は若くして一族を担う刀匠となった。

 しかし、それが悲劇の始まりだった。

 少年が見出した素材は高額で取引がされた。

 その利権を求めた一族たちは、血塗られた利権争いに身を落とした。

 少年が見出した才能ある者は、少年の刀が譲り受けられた。

 しかし、その刀の魔力に取り込まれた悪意ある者がそれを奪い取った。

 その刀によって多くの無為な命が奪われた。

 少年は家族に愛されなかった。

 母は少年を金の成る木と言った。

 父はその才能に嫉妬し、少年を殴った。

 そしてある日自身に絶望し湖に身を投げた。

 少年は一人になったとき、自分の姿が変わっていることに気が付いた。

 才能には代償があった。

 少年は人の倍早く齢をとった。

 幼いとき共に遊び学んだが十歳になったころ、少年は既に二十歳の身体となっていた。

 友は去り、利権にまみれた大人だけが周りに残った。

 少年は自身が打った刀を手に取って、(しがらみ)を断ち切った。

 一つの一族が終焉を迎えた。

 少年は姿を消した。

 福音は呪いとなった。

 少年を縛る一番の呪い。

 それは、事件を経てなお、少年は自身が求める最高の刀を打つことに囚われていたことだった。

 放浪の果て少年が辿り着いたのは、まだ見ぬ未知の素材を宿した大陸だった。

 すべてを失っても、少年は刀に(すが)る。

 少年はそれしか知らず、そして執着していた。

 それが修羅の道だと解っていても。

 呪いをその身に少年は最高の刀を求め続けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ