いざ北海道へ
「・・・まさか公欠扱いになるとは」
「すごいんだね最近の高校って」
「いや日坂さんも割と最近まで高校生でしょうよ」
特殊冒険者について説明を受けたあの日からはや数日後
俺達は今飛行機で空の旅を楽しんでいる。
ちなみにお高い席を自腹で取った。金はあるからな。
あと時期が時期だからか俺たち以外には誰もいない。なので余計に広々。
目的はもちろん試験の為。
向かうは北海道の釧路にある特殊ダンジョン『無効化ダンジョン』
スキルを無効化する特殊な環境が続くダンジョンの制覇が今回の目的だ。
当然一日二日で終わるような話ではない。
だから学校どうするかと思っていたのだが・・・何と公欠扱い。
つまり欠席とは扱われない特別扱いを受けることが出来たのだ。
これには国から見たダンジョンの重要性。
さらに俺という冒険者の価値やら色々複雑な理由がある。
簡単に言うと、特殊冒険者の数と言うのは色々な意味で重要だということだ。
まぁ俺的には無駄に欠席にならないなら何でも良いんだけど。
高校辞めるって選択は流石に無いからな。
もう冒険者一本で食っていけるとは言え流石に。
「でも飛行機って結構広いんだね」
「ん?日坂さんって飛行機乗るの初めてですか?」
「そうだよ。そんな余裕無かったし・・・」
「あー」
ちょっと闇が見えたけどね日坂さん。飛行機は普通こんなゆったりとはしてないんですよ。
「まぁいつか行く家族旅行の下見ってことで」
「余裕出来るかな?」
「いけるんじゃないですかねぶっちゃけ」
これは別にダンジョンを甘く見ているとかそういうわけじゃない。
『無効化ダンジョン』は全ての種類のダンジョンでも見ても非常に危険な場所だ。
自分が手に入れてきたスキルが全て使えないとすると戦闘スタイルから何まで全てを変えるって人もいるくらいだ。
その時点でも大変なのに。出てくるモンスターはそれなりに強力。
はっきり言って、世界でも有数の難易度のダンジョンなのだ。
では何故俺はこんなに余裕綽綽なのか。
「多分『闇夜』の力は消えないんで」
「やっぱりその鎧結構あれだよね」
「普通にヤバいと思います」
何やらどこぞの馬に文句を言われてた気がする。
でも仕方ない『闇夜』の力は普通に考えてヤバいんだ。
今回のダンジョンで言うなら、闇夜の力は俺のスキルじゃないから無効化されないってのがヤバい。
魔法はそもそも無効化の範囲外だが、身体能力の上乗せに関しても無効化されない。
その為スキルの『身体強化』が無くてもある程度は能力を保てるのだ。
うーん。何だこのピンポイントにメタ張った鎧は。
まぁ多分だが、協会内に俺達を推してる人がいるんだろう。
その人が試験を出すってなった段階で、わざとそういうダンジョンを選んだ可能性は高いと睨んでいる。
何せもう一個のダンジョンとか完全に権力の私的利用だし・・・。
そっちはもうちょいと後で行くことになったのは面白かったけど。
「どうします?ニ時間くらいありますけど」
「意外と近いんだね。でもそうか。おさらいでもする?」
「そうしましょうか」
俺達に・・・厳密に言うと俺に出された試験は全部で五つ。
二つはダンジョン制覇。『無効化ダンジョン』『図書館ダンジョン』の二つ。
残り三つはモンスター討伐だ。
そのうち一体は今回行く『無効化ダンジョン』に出現するモンスター。
『グレートウルフ』と言う超大型の狼の討伐だ。
「今戸村君のレベルっていくつだっけ?」
「53っすね」
戸村宗次 Lv53
所持スキル
【身体強化】
所持魔法
【】
相変わらずスキルも魔法も増えてないので表記はレベル以外は変わっていない。
スキル無しの素の身体能力は大分上がってるからあんまり気にしてないが。
「・・・闇夜の魔法が書かれれば見栄えも良くなるんだけどなぁ」
「あはは・・・桜木さんとか一杯書いてあるもんね」
「なかなか出ないってのもありますけど、出ても関係ないスキルなのが本当にクソ過ぎて」
お陰で懐がどんどん厚くなる。でももうそんなにいらないのよ。
最近無駄に千尋の欲しい物とか、リアの仕事道具とか買ってあげたよね。
全然減らないけどな。
いや食費も大分増えてるから相殺・・・出来てねぇわ増えてんだわ。
「まぁでもそのレベルなら問題は無いんだよね」
「ダンジョンの推奨レベルが30で、グレートウルフは40ですもんね」
グレートウルフは特殊モンスターで特別な罠を踏むことで強制転移が起きた結果現れる。
その為普通に探索しているだけでは出会うことすらない。
もちろんその分強い。
あと毛皮がとんでもない価値がある。
爪も牙も手に入れば武器として超大な価格が付く。
ちょっと考えてる事があるので、出来れば俺の物にしたいところだ。
「そういや。日坂さんの鞄は大丈夫なんでしたっけ?」
「あ、戸村君浮島さんの話聞いてなかったでしょ」
「・・・いやちゃうんすよ」
「モンスターに夢中なのは分かるけど話は聞かなきゃダメ!」
「ウッス」
でも実際その通りなので何にも言えない。
日坂さんのスキル『鞄拡大付与』
実はこれは無効化ダンジョンでも被害を受けないスキルの一つだということが判明している。
何故ならスキルの効果は、『鞄の容量を増やす』という効果を鞄に付与すること。
ダンジョン内では付与は出来ないが、付与した鞄が急に小さくなるとかそういうのは起こらないのだ。
だから物資的な話も問題にならない。
あれ、本当にこれ試験になるのか?
まぁ楽が出来る分には良いか。
「そんなことよりバターサンドが欲しいです俺は」
「あ、私も欲しい」
「というかあの店のお菓子は出来るだけ全部買いましょうか」
「それは買いすぎじゃ・・・あ、でもお友達とかにも上げられるからいっか」
「桜木さんたちにもお土産として渡せますしね」
とりあえず時間作って買いに行こう。
あと牧場に行きたい。馬見に行きたい。
「え?馬?・・・ゲーム?」
「それもあるっすけどどちらかと言うとこいつが理由ですよ」
まぁやってるから否定はしないが。
日坂さんに鎧の一部を出して見せる。
馬を見に行く理由は『闇夜』が理由なのだ。
これについては今言ったところでどうしようもないことではあるだがな。
「鎧の為に?」
「鎧って言うか、鎧になったこいつの為っていうか」
あの戦いは未だにしっかりと思い出せる。
最後の決着についてまだ納得してないってのはあるが、それ以上にその前が引っ掛かっているんだ。
「何だかんだ、あいつと一番心が通じてた時間だったなと思いまして・・・まぁ感傷っすよ」
「戸村君・・・」
あいつの背に跨っていた時。
あの瞬間は間違いなく俺とあいつは繋がっていた。
お互いにどう動くかが分かっていたからこそ、勝負は互いの根性の比べ合いになったほどだ。
もし俺が、もっと上手に乗馬が出来たのなら。
ああいう結末ではなく、もっと違う形であいつは俺の力になってくれたかもしれない。
今の姿も非常にかっこいいし気に入ってはいるんだが・・・どうにもなぁ。
種族は違うが、こいつは俺の友達だ。
だからこそ、いつの日かまた出会う時にはきちんと馬に乗れるようになっておきたい。
「今は流石に戦うのが優先ですけど、どうせ北海道行くならってことで」
「そうだったんだ・・・」
「それにそのうちこいつが元の姿に戻る事も考えてますしね」
「え?」
「いや。モンスターがそのまま鎧になってるんですよ?俺がもっと強くなって、魔力が増えたらワンチャンありそうじゃないですか」
その為には魔法もちょいちょい使わないといけないんだが、そこはエンチャントの強化率で減らすから。
心の中だけで呟く。こいつにも聞こえてたらいいが。
「素敵な夢だね」
「まぁムサシより強くなっても、全然戦うの辞められなさそうですけど」
「えぇ!?」
「え」
「と、戸村君・・・戦うの辞める気だったの!?」
「え」
いや・・・え、俺っていつまでも戦ってると思われたの?
「俺だって普通にサラリーマンになる将来を考えてはいたんですけど・・・?」
「いやいやいやいや」
「首をそんなに振るほど解釈違いか」
後日、同じことを桜木さんに話したら同じだけ首を振られた。
そして協会の雇用条件やら伝えられて絶対に冒険者を止めないでくれと止められた。
待ってくれ、皆俺のこと何だと思ってるんだ???




