得た力と技の再現
さて、飛び出したはいいんだが・・・
「これどうなってんの俺?」
鎧を纏って奴に向かって突っ込むってところまでは意図通り。
だけどまさか勢い余って宙に浮くとは思わなくね?
明らかに身体能力が俺の考えていたものと違う。
スキルは戦ってた時点で強化率が上がっているのは分かっていたが、ここまででは無かったはず。
つまりこの異常な力は
「ってあぶね!?」
空を跳ねるように飛ぶ俺に向かって岩の塊が飛んでくる。
それをいつものように横にジャンプして躱すイメージで体を動かす。
足元に一瞬だけ黒い波紋の様なものが現れて足場となった。
あ、これこういう使い方も出来るのか。
「多様性がありすぎるぞブラザー!」
友が残した黒き鎧。
それはただ俺を守るだけのものではない。
彼が使っていた魔法。その力がこの鎧に込められている。
それを身にまとっている間、俺はその力を存分に扱うことが出来る。
先ほどの足元に現れた波紋もその魔法だ。
闇を支配する魔法。
【闇魔法】ともいうべきこの魔法は、彼が見せていた様に恐ろしい程の汎用性がある。
魔法自体初めて使うが、何故だろう。
俺はこの使い方を知っている。
「だからこんな使い方も出来る!」
掌に黒い球体を生み出し、豊宝竜に投げる。
球体は豊宝竜の真上まで行くと、そこから無数の小さな矢を放ち始めた。
それだけでは小さくて豊宝竜にはダメージにはならないが、目的はダメージじゃない。
矢は集中的に一部に、豊宝竜の目にだけ集中して降り注ぐ。
「グォォォォ!!!」
「今だ!」
目を狙えばそこを守るために視界を塞ぐ。さらに鬱陶しいという。
その隙にさらに距離を詰める。
「あれ?そういえば赫爪どこいった?」
ふと『赫爪』のことが気になった。
先ほど球体を生み出した際に赫爪無かったよな?
でも外した覚えが無いからどこかにはあるはずなんだが・・・
改めて手を見ると、篭手の部分が今までと変わっていないことがわかった。
つまりこれは、黒い鎧として赫爪が吸収されたということか?
「となると。お、やっぱり」
いつものように爪の刃を出す。
すると出てきたのはいつもの赤い刃ではなく黒い魔力の刃だった。
恐らく吸収された時点でこの鎧と同じ力を得たのだろう。
まさかの『赫爪』に強化が来た。
いや。鎧が赫爪を取り込んで、鎧に能力が増えたって感じが正しいか?
試しに折れているはずの右の刃も出してみるが、こちらも普通に出てくる。
「まぁ使えるならいっかねっと!」
再び岩を回避する。
段々肉体の把握も出来てきた。
そろそろやるか。
次の瞬間、戦闘形態へと鎧を変化させる。
イメージは彼が使っていた様に、鎧の上にさらに魔力を纏うイメージ。
更に巨大で鋭い爪を、両の手に出現させる。
その姿を、彼の『アークオリンピア』での姿を知る者ならこう思うだろう。
ゲームの戦士が、ついに現実に現れたと。
「ヒヒッ!ハッハッハッハ!!行くぜぇぇぇぇぇぇ!!!!」
消耗していた精神力が戻って来たという実感が湧いてきた。
先程の戦いに比べ、心身ともに今の方が勝っていると思えるほどだ。
波紋を踏み込む独特の破裂音を響かせながら空中から豊宝竜に急襲する。
黒い爪は容易く豊宝竜の鱗を切り裂く。
赫爪と比べても切れ味が大きく勝っているのが分かる。
だがこれ以上伸ばすと恐らく砕けるか。その辺は魔力の刃になったことの欠点か。
暫く豊宝竜の上でザクザクと体を斬っていると体を大きくゆすり始めた。
勢いがすごくその場で立っていられない。
すぐにそう判断して空に逃げる。
するとそれを追うように木から何かが飛んでくるが刃で切り落とす。
「んだこりゃ」
一つだけ串刺しにして飛んできたものを確認する。
「リンゴ?え、あいつそんなもの飛ばしてくんの?」
もしやこれ、戦いが長引くと収穫できる果実が減ったりする?
それは不味いな。価値があるんなら出来るだけ大量に欲しい。
ならば速攻あるのみ。
豊宝竜の脅威は口から放たれるブレス攻撃と踏み付けなどの巨体を活かしたヘビーアタック。
空にいれば攻撃は岩球と果物攻撃しかなく、気を付けていればまず当たらない。
今も岩と果物の弾幕が俺を襲うが全て避けきることは出来ている。
ならこの状態で出来るはずだろ。あの『溜め』を。
空中で一度姿勢を整える。
イメージするのは、彼がやっていたあの『溜め』の姿勢。
あれをこの場で再現する。
何となくその姿勢を取ると、魔力の流れが分かるような気がする。
だから彼はあれだったのか。
また岩が放たれるが、一度魔力を意識出来たら後はもう動いても溜めが出来る。
いつも通り回避して、さらに上空へ。
「成程。こうなるのか」
体の意識した部分。右腕全体に膨大な魔力が圧縮されている。
これが彼がやっていた『溜め』か。なるほど、これは確かに。
赫爪が折れたのも納得だ。こんなものを受け止めればそら折れるわ。
彼はそれを額から延ばした角として使用した。
なら俺もそれに近い形を取ろう。
流石に俺が角を作るのはぴんと来ないから違う形にするが。
ただ尖った物にはしよう。
「圧縮、形成・・・そして開放」
右腕全体から、手のひらへ。
魔力の球を生み出したのと同じように体の外に排出し、そこから形を整えていく。
太く鋭く、破壊的な形に。
「『闇の投槍』」
黒い大槍が空気を裂いて豊宝竜へと突き進む。
それに対して豊宝竜は岩を何発もぶつけて相殺しようと試みるが、まるで意に介していない。
そしてついに、槍は豊宝竜に突き刺さり、そのまま肉を食い破って貫通した。
だが豊宝竜の巨体では、それは致命傷にはならない。
「そら。お代わりをくれてやる」
両手に『溜めた』魔力を全て開放。今度は槍ではなく爪にする。
今までとは比べ物にならない程の巨大な爪。
豊宝竜の足の爪と比べても遜色ないサイズ。
これなら、殺しきれる。
「■■■」
踏み込んだ瞬間、背中から魔力が放出され俺の体をさらに早く前へと進める。
もはや岩での迎撃も間に合わない速度に達し、俺自身が摩擦熱で赤熱し始めた。
「『インパルスダイブ』」
爪から着弾すると、轟音と共に豊宝竜が自身の体を支えきれずその巨体を地に倒す。
だが俺がそこで止まらず、さらに肉を突き破って進んでついには地面に届いた。
そこで更に爆発。豊宝竜の体が浮かび上がる。
「『ランソルブブレイド』!!!」
伸ばした爪を地面に突き刺し、一気に振りぬくことで魔力斬撃の渦を生み出す。
斬撃は浮いた豊宝竜の肉体を切り刻み、一際大きな斬撃が豊宝竜の首に大きな傷跡を刻み付けてみせた。
ついに致命となる一撃を刻まれた豊宝竜。
今までのダメージも合わさり、流石に耐えきれなかったようだ。
最後に一つ大きく咆哮を上げると、ついに動かなくなった。
「シャァオライ!!!」
あ、ここいると潰される。




