表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 鎧を得る
60/885

闇を友に、黒を纏う

「・・・しんど」

「戸村君!」


最後の一撃。


特殊個体のモンスターの角と俺の爪の衝突。

互いに最後の力を振り絞った全力の一撃。

力負けした方がそのまま相手の凶刃に倒れるしかないという状況で、まさかの出来事が起きた。

その結果、勝利したのは俺だった。


正直、完全に負けた気分だ。


「あ゛~ひさかざん~」

「うや!?・・・ど、どうしたんですか?」


横になっていると近くに日坂さんが来たのが分かったのでそのまま抱き着く。

俺の方が背がデカいので俺が縋りついてるみたいな感じになったけど。


それを見てとりあえず俺にケガなどはないと分かってくれたのか。

心配というよりは、困惑の色が強いような、優しい声色で語り掛けてくれる。

その優しさが今は染み入るぅ・・・


「『赫爪』壊れた・・・」

「え・・・えぇ!?」

「ほら」

「うわぁ。本当だぁ・・・」


最後のぶつかりあい。

それは本当に残った体力や集中力全てを費やした、恐らく今までにないくらいの最高の動きだった。

だからなのだろう。まだ壊れないはずの『赫爪』の刃が折れたのだ。


幸い・・・いや別に幸いでも何でもないんだけど、

右の刃に関しては根元からぽっきりと折れている。

何より傷ついたのは、このおかげで俺が勝ったのだという事実だ。


赫爪が折れ、モンスターの角の刃が俺に迫るはずだった。

だがぶつかりあった姿勢の関係で、その刃は俺の横を通り過ぎた。

同時に俺と奴自身も交差する形になるのだが、その時点で俺の体は、俺の意思とは関係なしに動いていた。

残った左の赫爪の刃を伸ばし、流れる様に奴の体に刃を突き立てた。

通常時ならば、刃は鎧に阻まれていただろう。

だが最後の一撃に全てを掛けていた奴の鎧はもはや赫爪に対して何ら意味を成さなかった。


そのまま駆け抜けると同時に刃が肉を切り裂く。

結果奴は倒れ、俺が立っている。


「納得いかないんですけどぉぉぉぉぉ!!!???」

「ちょ、わ、分かったから。分かったから一回離れ・・・!!」


オレ、トテモ、カナシイ


「もう一回やり直しを・・・」

「いや出来ないですからね?」

「ウッス」


勝ったには勝った。だがこれはどうなんだ。

俺の方が武器の性能が低いから勝った?ふざけるなよ。

そんなものは勝ちではない。


刃が砕かれた時点で次の動きが出来た分は確かに俺の方が勝っていたと言えるのかもしれない。

だがそうじゃない。そうじゃないんだ。


「と、とりあえず胸から顔を離してくれると・・・//」

「あ、はい」


なるほどそれは不味い。日坂さんじゃなかったら・・・いや、日坂さん相手でも一発で逮捕では?


「その辺どうです?」

「ギリアウト」

「うーむ。弁護が難しい」

「なんてこったい」


抱き着いた際に体を起こしていたのは上体だけなのでどうしても変な格好になる。

そのせいでちょうど顔が日坂さんの胸の位置になっていたのだ。

ちょっと錯乱してるので感触が思い出せないのがもどかしい。


どうせならもっとたn


「戸村君?」

「ウッス」


今一瞬本気で寒気がした・・・


とりあえず日坂さんから離れて立ち上がろう・・・あれ?


「脚がっくがくでワロタ」

「怪我とかは?」

「ないっすね。ちょっと疲れはしましたけど」


主にロデオのせいだな全く。

だけど歩くだけならまだ問題ない。


後ろを振り返り、奴の姿を見る。

まだ死んではいないのか。体が消える様子は無い。

しかし力はもうないのだろう。完全にダンジョン内の闇が晴れてきている。


奴は・・・まだ俺を見ている。

その目は、俺に何かを訴えていた。


「・・・ハァ。まったく」

「あ、戸村君」

「大丈夫ですよ。もう戦う気は無いみたいなんで」


奴に近づいて、その大きな体に俺の体を預ける。

改めて、こいつの力強さを感じる。

よくもまぁこれだけの体を持って生まれてきたものだ。


「まさかああなるとはなぁ。何か悪いな」

「・・・」


どうも気にしてはいないらしい。躱せなかった自分が悪いのだと。

まぁこいつならそういう気がしていた。

恐らく俺とこいつは似ているんだろうなぁ。俺も相手に、同じことをやられたら同じ様に思うだろう。

だからこそ、こいつも少し呆れているんだな。何変なことで悩んでるのかと。

何せ俺もそう思うだろうから。


桜木さんたちは、ある一定距離から近づいてこない。

俺達の雰囲気がそうさせているのか、まだこいつが生きているから警戒しているのか。

でも俺とこいつがまるで話しているかのように振舞っているのには驚いているようだ。

何にせよ、近寄ってこないのはちょうどいいのかもしれない。

今だけは、ゆっくりと二人で話したかった。


「まぁあれだ。また生まれたらやろうや」

「・・・ブル」

「えー。つれない事言うな・・・え?」


特殊個体のモンスターが。いや、一度殺されたモンスターがそもそもまた生まれ変わるのかは分からない。

それでもきっとこいつならまた俺と戦ってくれると、そう思ったから聞いた。


だけど断られた。

断るなんて短い一言で。

何て冷たいやつなんだと、顔を見ようとそちらに顔を向ける。

するとそこには、体の一部が徐々に別の何かに変わっていく奴の体があった。


「な、なんだ、これ」


思わず体を奴から離す。

それを見るや否や、さらに変化は加速する。

こいつが使っていた魔法の角の様に。

黒くて重厚感のあるそれへの変化は、こいつ自身が自らの意思で望んで姿を変えているように見える。


「お前何を」

「■■■」

「いや確かに壊れたけど」


敗者は勝者に従うもの。

そしてお前の爪が折れたのならば、代わりになってやろう。


そう言うと、彼の体が少しずつ薄くなってすぐに消える。

残されたのは、彼の体そのものが変化した、一つの鎧であった。


そうか。お前は俺の元に来てくれるのか・・・ならば。


「いいだろう。ならば共に」


手を伸ばすと、鎧が意思を持っているかの如くこちらに飛んでくる。

そのまま俺にぶつかり体の中に吸収されるように溶けていく。


力が体の底から湧いてくる。

本当に一体となったかのようだ。

そしてあの鎧の使い方、能力すらも把握できている。


「ありがとう。深き闇の友よ。これからは、共に最強を目指そう」


どこか遠くで、馬の嘶きが聞こえた気がした。

特殊個体討伐完了!・・・ですがまだこの章はもうしばし続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] へ、へんしんしたー!!?? 世界初!の事例になるのだろうか。
[良い点] いやかっこ良すぎやって ドロップじゃなくて死ぬ前に自ら装備になるのアツすぎる!
[良い点] あー…この熱さ、めっちゃ好きです!w 面白いです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ