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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 冒険者になる
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帰宅/協会への報告

「ただいまー」


その後も色々聞かれたりして、帰りの時間は遅くなった。

でも夕飯前に帰ってこれたからセーフ。

元々遅くなるかもとは伝えていたからな。


「おかえりー!」

「おうただいま。あいつは?」

「部屋にいるよ?あ、晩御飯出来てるけど食べる?」

「食べる食べる。色々あって腹ペコでな」


俺を出迎えたのは妹だ。

戸村千尋とむらちひろ 俺とは三つ違い。

母親に似た明るい茶髪の元気印。

そしてうちの家事担当でもある。

俺ともう一人の同居人が料理出来ないからな・・・。


「手洗ったらお姉ちゃん呼んで来て!」

「あいよ」


洗面所で手を洗い、リビングではなく地下へと向かう。

地下にあるのは一室だけだが、かなり広い空間がある。

使っているのは一人だけで、鍵も掛かっている。


「おーい。生きてるかー」

「・・・」


重そうな扉をノックするが返事は無い。

聞こえてないのか、無視してるのか、それとも倒れてるか。

こうなると基本待っていても返事は無い。

一度リビングへ行って合鍵を取り、それを使って扉を開ける。


中は一部にしか明かりが点いておらず、不気味で薄暗い。

その光に照らされた場所に、ゴスロリ少女が倒れていた。


ああ、やっぱり倒れてる方か。

まぁ前に外に出てきたの三日前だし。


「起きろ引きこもり」

「むぎゅ」


仰向けに体勢を変えて少女のお腹に脚を乗せる。

全く力を入れてない。でも声を出す元気はあるのが分かった。


「そうなる前にさっさと外出て来いって」

「・・・集中が切れる」

「それで倒れるまでやるんだと結局集中出来てないよな?」

「そうでもない」

「あらそ。ほらさっさと立てって」

「ん・・・」

「あん・・・?」

「抱っこして」

「・・・ハァ」


深いため息が出るが、こうなるとずっと同じことを言われ続けるので仕方なく抱き上げる。

この時お姫様抱っこをしないと無言で不機嫌になる。何だこいつ。


「何が良いんだこれ」

「私専用な所」

「誰がお前専用だってリアさんや」

「ソウジ」



【アメリア・戸村】 年齢は16歳で俺と同じ。4月生まれ。

名前から分かるだろうがこいつは日本人じゃない。

そもそもこいつの容姿を見てそう思うやつは少ないだろうが。



「んで?今回は何が出来たんだ?」

「あれ」


指で示されたのは、金髪の人間・・・ではなく人形だ。

思わず人間と見間違いをしてしまう程の完成度。


俺がこいつを引きこもりと呼んだのは別に蔑称でも何でもなく事実だからだ。

学校には通っておらず、既に通信で終えている。

では何をしているかというと、リアは人形師を生業としているのだ。


詳しくは知らないが、こいつの作る人形は非常に人気が高いらしい。

一点オークションに出せば、大きな金額が動くんだとか。

でも基本的にこいつは自分の気分が乗ったタイミングで無いと人形を作らない。

昔はともかく、オーダーメイドでのみ製作を受けているリアはその辺の期間も非常に緩い。

何せリアの気まぐれ納期を理解した人間だけが注文出来るのだから。

それでも数年単位で注文が埋まっているってんだから恐ろしい話だ。

俺には全く分からない話だが。


「ふーん。相変らず綺麗に作るもんだな」

「仕事だから」

「そんなもんかい。運ぶけど良いか?」

「ん」


流石に今の抱き方で階段を上るのは危ないので背中に移動させる。

その時胸が当たるけど慣れたから大して気にならない。

というかこいつに欲情したら負けだと思ってる。


「おら来たぞー」

「お兄ちゃんありがとー。お姉ちゃんも昨日ぶりだね!」

「うん。サンドイッチありがと」

「何だ。飯は食ってたのか」

「寝不足で倒れてたけど」

「寝ろ」


いつもの席にリアを座らせると俺も席に着く。

テーブルの上には揚げたての香りを漂させたメンチカツが並んでいる。

今日は本当に色々あったから、マジで腹が減って来た。


「白飯大盛にしてくれ」

「おけー。大変だった感じ?」

「感じ。詳しくは言えないけど」

「いいなぁ。私も早く冒険者になりたいよ」

「はぁ?お前興味あったのか?」

「そらそうよ。魔法とか使いたいもん!」

「ああそこか。リアは?」

「どうでもいい」

「あらそう」

「あ、でも」

「でも?」

「糸が欲しい」

「糸?」

「蜘蛛のモンスターから紡がれるやつ。数が少なくて買えない」

「・・・蜘蛛嫌いなやつ多いだろうしな。」


需要があってもそこは嫌だろうなぁ。

なんせ他の物なら精神的に楽に稼げるわけだし。






























東京に本拠地を置く、日本冒険者協会。

そこの一室で今、桜木はある二名の前で今日の出来事に関する報告を行っていた。



「本日の研修中に起きた事故の報告は以上になります」

「ご苦労。下がっていいぞ」

「かしこまりました」


報告を聞いていた一人がそう言うと、桜木はそのまま退出する。

それを確認すると、黙っていた方の一人がもう一人に話しかける。


「どう思う」

「桜木の感知系のスキルは強力な物です。彼女が見落とすとは思えません」

「だろうな・・・それは私も知っているさ」


比較的若い方の男性が桜木を擁護するような発言をする。

するともう一人のやや年老いて見える男性の方もそれに同意した。

決して彼も桜木を非難するつもりはないのだ。


「だが事実強力なモンスターの発見が遅れたのは事実。

 そもそも他の監督官たちは何をしていたのだ」

「どうやら別の階層で救援要請が出ていたようです。

 他にもタイミング悪く、その場にいる事が出来なかったと報告書にはあります」

「成程。そうなると文句も言いづらいか」

「職務を全うした上で生じた問題です。やはり、人手不足かと」

「分かっている・・・はぁ。どうにもならんなこればかりは」


今回起きた事故の責任は、モンスターの接近に気が付くのが遅れた桜木にある。

それは本人もそう言っているし、恐らく間違いではないのだろう。


問題はそれに関する罰則の方だ。

責任がある以上無罪放免とすることは出来ない。

だが桜木クラスの実力者を下手に罰することも出来ないと言う、協会の問題がある。

人が足らないせいで、一人動けなくなるとその時点でどこかにしわ寄せが生じる。

その為の調整でまた時間と人が必要となり・・・無限ループになる。


だからこそどうしたものかと、この二人は頭を悩ませているのだ。

何なら抱えたいと思っているのは二人の共通認識だ。


「そもそも何故そのモンスター達は桜木の感知から逃れたんだ?」

「桜木の感知スキルは【危機感知】。自分の周囲にいるモンスターの数を知る為のスキルです」

「使えば使う程、感知範囲は広くなるんだったな」

「はい。なので本来なら彼女の感知から逃れることは出来ないはずです」

「どこぞの冒険者が罠を踏んだのだったな。そいつらについては?」

「探してみた所、罠があったであろう場所で遺体が発見されております」

「成程。罠から出たモンスターは感知を逃れられる・・・ならもっと近寄られてもおかしくないか」

「はい。ですので何か他の要因があるかと」

「だがそんな原因になりそうなものは・・・」

「一つあります」

「何だと?」

「研修生達です。彼らの・・・いえ、問題の彼が原因ではないかと愚考します」

「そんなバカな」


問題の彼とは鬼を倒した研修生、戸村宗次のことだ。

ダンジョンに潜った初日に、ずっと下にいるはずのモンスターのレア個体を倒すと言う偉業を成し遂げたイレギュラー。


彼がスキルに影響を与えるとは考えにくい。少なくとも老齢の男性はそう考えていた。

だがもう一人の男性は違った。


「これはあくまでも私の考えになります」

「・・・聞こう」

「わかりました。まず、桜木の【危機感知】についてです」


若い男性の考えはこうだ。

【危機感知】は自分の周囲にモンスターが存在している場合、その位置と距離を何となく察することが出来る。

所謂感知系スキルと呼ばれている、非常に強力なスキルだ。

これがある限り、基本的に不意打ちを食らうことが無く。敵がいない道を選ぶことも可能になる。

また使いこめば感知距離が広がり、より正確性も増す。

欠点として感知距離ギリギリのモンスターは微妙に感知しずらいというものがある。


「私はあのスキルに関してもう一つ欠点があると考えております」

「それは?」

「近くの脅威を優先的に感知すると言う欠点です」

「・・・それは欠点なのか?」

「はい。桜木も言っておりましたが【危機感知】は多くの敵を一度に感知するのは苦手としております」

「ほう」

「その為鬼の感知が遅れたのも、近くに鬼以外の脅威がいたと考えれば納得がいきます」

「ふむ・・・いや待て、それは絶対に」

「はい。この理屈では戸村宗次が脅威的な力を持っていなければいけません」


ありえない。老齢の男性は話を聞いてもやはりそう思った。

何度も言うが桜木は協会全体で見ても上位の実力者だ。

その桜木が脅威を覚える程の力が、冒険者になったばかりの学生が持っているなどというのはあり得ない。


だからこそ、その後に続けられた言葉には耳を疑った。


「それは現時点での話です」

「何?」

「もし、彼の潜在能力が恐ろしい程高く、桜木がそれに対して無意識に危機感を覚えていたとしたら?」

「・・・そんなことがありうるのか」

「可能性の話です。ですが現時点ではこれ以外に桜木がモンスターを見落とすとは思えません」

「・・・」


今までにない事情で、今までにないことが起きた。


そしてこれが切っ掛けとなり、何かが大きく変わる。

老齢の男性に確証は無いが、何故かその思いが強く残った。

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