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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 鎧を得る
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我慢比べ

怪物が一歩踏み出す。

瞬間、本能が何かに対して危険だと叫ぶ。

それに従い、赫爪を振るうと爪が見えない何かを切り裂く。

切り裂かれたそれは俺の横を通り過ぎると背後で爆発した。


「ふぃぃぃ」


だが止まることなく、再び体中が危険を訴えてくる。

今度は無理か。


そう判断した瞬間にその場から姿勢を低くした状態で、モンスターを中心に円を書くように走り出す。

俺の背後では、また次々と何かが地面にぶつかり爆発していく。

数秒それが続くと、一瞬だけモンスターが姿勢を低くする。

何度か見た、『溜め』の姿勢だ。


「オォォォォ!!!」

「!!!」


コンマ一秒未満の判断でモンスターに突っ込み赫爪を振るう。

だがそれはモンスターの額から伸びた黒い刃で受け止められてしまう。

暫くそのまま鍔迫り合いになるが、また例の攻撃が飛んでくると判断してその場から後ろに飛び退く。

すると俺の予想通り、先ほどまで俺がいた地点が爆発した。


先ほどからずっとこれを繰り返している。


「ああクッソ。面倒な魔法使いやがって」


八本足の馬のモンスター。

魔法と思われる攻撃。そして圧倒的なパワー。

まさに特殊個体に相応しい強い存在。


本来の二十層にいるモンスターではないが、そんなことはどうでもいい。

問題は相手の魔法攻撃が性能として非常に厄介であることだ。


連発可能。爆発するため広範囲にも当たる。角にもなるようで赫爪を正面から受け止めてなお余裕あり。

さらにチャージで性能が変わるのか、攻撃のタイミングや威力が先ほどから一定ではない。

唯一の隙は『溜め』の動作の瞬間。

それを見た瞬間に動けば近づくことは出来る。

だが相手も馬鹿じゃない。その瞬間に魔法で刃を作って抵抗してくる。

馬なだけあってパワーが今まで戦ってきたモンスターの中でもトップクラスなのもヤバい。

総じて、このモンスターはちょっとヤバいレベルで強い。

少なくとも今すぐ勝つのは難しそうだ。


「まぁ負ける気はしないけどなぁ!!」


俺が奴に勝っている点は二つ。

一つは小回りが利くこと。奴は体が大きくて八本足な分速度やパワーはあるみたいだが小回りが利かない。


二つ目は俺の直感。

奴の放つ魔法が迫ってくると、その瞬間に危険だと分かるのだ。

お陰で回避か迎撃かを選ぶ余裕がある。

むしろこれが無かったら速攻で撤退してたまである。


でもこの直感は偶然の産物ではない。

俺はこいつと戦うのは初めてだが、これと似たような攻撃をしてくる奴との戦闘経験はある。

そう。『アークオリンピア』の中で。


「マナよりおっせぇ!!」


視界の隅でわずかに空間が歪んだのを見逃さずに魔法を避ける。


魔法使いスタイルでのトッププレイヤー『マナ』

やつの戦い方は敵を足止めしてから大火力をもって一撃で葬るスタイル。

その足止めの中には、こちらの動きを拘束するものが多いがそれ以外にもいくつか変わった魔法がある。

そのうちの一つに、不可視の魔法でこちらを狙ってくるものがある。


実際にはうっすらと違和感があったり、空間が歪むので本当の意味で不可視ではない。

だけど奴のあの魔法弾幕に比べれば十分対処できるレベルだ。

故に負けることは無い。少なくとも遠距離戦であいつが俺を殺しきれる札は今のところ見ていない。

まぁそれは俺も同じことなんだけどな。爪延ばしでも普通に避けられるし。


結果、俺達の戦いは均衡状態にあると言える。

互いに一撃貰ったら簡単に崩れる均衡ではあるが。


「はてさてどうするかね」


弾幕が途切れたのを見て一旦魔法の範囲外まで逃げる。

正確には魔法が発動して着弾するのに少し時間が掛かる距離を保っているだけだが。

それでもかなり精神的には楽だ。

いくら前兆が分かるとはいえ、どうしてもギリギリの回避を続ければ疲れる。


でもそれはあちらも同じだ。

魔法を使用すればその分魔力や体力を使う。

あれだけ連発すれば、いくら特殊個体と言えど消耗するだろう。

僅かだが戦闘開始前より乱れた息を整えながら様子をうかがう。


モンスターも僅かにだが息が乱れてる。

苛立ってもいるのか、先ほどから前足で地面を蹴るのをやめようとしない。

纏めると、やっぱり魔法が無い分俺の方が不利だな。

どうもこのままだと俺が削り切られそうだ。


仕方ない。パワー負けしてる相手にガチの肉弾戦を挑むのはセオリーからは外れるがやるしか・・・おや?


「おいおい。お前が動くのかよ」


また溜めの動作に入ったかと思うと、すぐに額から刃が角の様に伸びてくる。

さらにそこで終わらず。胴体を覆うように鎧の様な物が出てくる。

まるで戦車だ。まぁ戦車なんぞ目じゃなくらいの脅威なんだが。


あの状態になることで何が変わるのかは分からない。

でも一つ分かることは、あの状態に接近戦は先ほどとは比べ物にならない程に俺が不利だということだ。

だがそれを避けては勝ち目が見えぬ。


「故に突っ込む!!」


ここで引いてはそれこそ本当に勝ち目が無くなる。

引いてたまるかという思いが無いわけではないが、それ以上にそれしかないと解かる。


あちらも受けて立つつもりなのか、姿勢を低くして溜めの姿勢を作る。

次の瞬間、モンスターが爆発しこちらに突っ込んできた。


「こなくそ!!」


ぶつかり合うが一瞬で俺が吹き飛ぶ。

しかし分かっていた事なのですぐに姿勢を戻して再突撃に備える。

するとまた同じように爆発して突っ込んでくる。

今度は俺は止まっていたので横に転がって避ける。


耳元をものすごいスピードで巨体が通り過ぎる。

それだけで体が吹き飛びそうになるが何とか耐える。

耐えれば小回りの利かない奴に隙が生まれるはず。その為にここは耐えないといけない。


赫爪を地面に突き刺して奴をやり過ごす。

完全に体が通り過ぎ、衝撃が消えさる。

即座に体を反転させて無防備な奴の背中に爪を伸ばす。

だがそれは奴の後ろ脚を蹴り上げるような動作によって防がれる。

蹄の部分にも魔法が纏ってあるのか。

というか、さっきの爆発移動はあれが原因か。


「いやまっじで良いなお前・・・」

「・・・」


奴が体をこちらに向けるとにらみ合いになる。

その眼に悪意はない。野性的な強さと、俺と言う強者に対する畏敬の念を感じる。

恐らく相手も俺の目に似たようなものを感じ取っているのだろう。

暫く互いに動かずにいた。


「・・・」

「・・・」


特殊個体のモンスターと戦うのは二回目。

一度目は鬼と戦ったが、あの時は今みたいに余裕が無かった。

背後には俺よりはるかに弱い人間が三人。しかも恐怖で逃げることもままならなくなっている状態だった。

そのせいか、俺はあの鬼に対して何かを感じることは無かった。

今までゲームの中で戦った時、相手が強者ならば必ず何かを感じていたというのに。


あったのはただ己の力を実感したという喜びだけ。

今思えば、あの時の俺はいつもとは違ったのだろう。


その感覚自体はもう一度感じる機会があった。

鎧蜘蛛と戦い、糸で捕まったあの瞬間。

それまで苦戦していた鎧蜘蛛を一瞬で倒したあの瞬間。また同じように自分の力を感じてしまった。

日坂さんがあの時声を掛けてくれなければ、恐らく何かが致命的にズレていただろう。


だからこそ、今この瞬間が楽しくて仕方ない。

俺は俺だけを感じているわけじゃない。

俺はしっかりと、敵を見ている。

この戦いは、間違いなく俺の血肉となり得る・・・と。


そう思ったその時。体が動きだした。

タイミングは、全くの同時であった。


爪と角がぶつかり合う。

だけど・・・今度は押し返されない。


「ハハハハ!!」


力がみなぎる。俺のスキルが、いつも以上に力を増しているのが分かる。

頭の中で何かが切り替わる感覚もない。

今のこれが、俺の最高点だ。


「オラッ!!」

「!?」


拮抗する力を下に流し相手の首を下げ、即座に蹴り上げる。

たたらを踏むモンスターに対して爪を振るうが、それは鎧に阻まれる。


「かってぇなぁ!!」


そのまま力を込めるが、鎧を突破する前にモンスターが体当たりをすることで俺を後ろに吹き飛ばしてくる。

それには逆らわず、むしろ受け入れることでダメージを最小限に抑える。

着地と同時に魔法の予兆を察知したので前に出ることで潜るように回避。

また腕の間合いまで距離を詰める。


一歩、また一歩。

そして一歩・・・この時に予想より進んでしまう。


「おっと」


通り過ぎてしまったが即座に修正して背後を突く。

鎧に覆われたあの体を傷つけるのは無理だな。さっきの衝突でそれは理解した。

ならちょいと振り回してみるか。


「ロデオってな!」


攻撃ではなく、背に乗る。

一瞬奴は何が起きたか分からなかったのか戸惑うような動きをしたが、俺が背に乗ったのだと分かるとすぐに落とそうと暴れてくる。


ロデオとは言ったが、まぁ普通のそれの比ではない。

少し動くだけで地震が起きるのではないかと思ってしまうほどのパワー。

それに跨って分かったが、こいつ体中が筋肉の塊みたいなやつだ。

しかもただ固いだけじゃなくてしっかりと柔軟性も備えている。

何て素晴らしいきんn・・・じゃなくて恐ろしいモンスターなのだ。

良くこいつと鍔迫り合い出来たな俺。


暫く暴れると、それだけでは俺を落とせないと判断したのか奴が走り出す。

どこかで急停止するか、そのまま速度で俺を落とすつもりか。

いずれにしても上等だ。この状態で魔法に頼らないその姿勢は好まし過ぎるぞ!!


暗闇の中のダンジョンを駆け回る。

道中で明らかにおかしな動きが挟まれるが、何となく来るのが分かっていた為耐えられる。


俺も乗っているだけではないぞと爪で首を狙うが、その瞬間に動かれて狙う暇がない。


互いに互いの動きを理解している。理解してしまっている。


だからこそ、普通には終わらないと分かっていた。

そうじゃなきゃ普通魔法でどこでも狙えるこいつの背に乗ろうなんて思わないだろう。


「我慢勝負だ。悪いが付き合ってもらうぞ・・・!!」

「■■■■■!!」


その声は俺には意味として伝わらない。

だが何となくこう言っていた様に聞こえた。


「上等だ」と


「なら徹底的にやろうやぁぁぁぁぁ!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」


暗闇の中で、誰にも見られることのないデッドヒートが始まった。

最近感想をちょくちょくもらえるようになりました。

内容は様々ですけどやっぱり嬉しいですねぇ

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― 新着の感想 ―
[一言] む! これはさんざん殴りあって「お前に惚れたぞ!」と愛馬にするフラグ! …マサカネー
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