先輩(同期)からのアドバイス
「とれたー!」
「えぇ!?大きすぎない!!??」
「流石ダンジョン産ですね」
少し離れた所で女子三人が盛り上がっている。
野菜の大きさだけであれだけ盛り上がれるんだから、何と言うか女子高生のパワフルさには勝てないなと思う。
対して俺と日坂さんはいつも通り。
地面に敷いたシートの上でのんびりとしている所だ。
「ズズッ・・・ダンジョンでこうものんびりすることがあるとは」
「ズズッ・・・最近だとハイキングダンジョンとか話題だし、そのうち流行るんじゃないかな」
「ダンジョンハイキング・・・?」
「幻想的な風景が広がってて観光地化したいって動きがあるんだって」
「へぇ・・・ズズッ」
日坂さんのスキルで広げられたバッグを存分に使用して持ち込まれたピクニックセット。
俺が何が好きなのか分からなかったからという理由でコーヒーから緑茶の茶葉まで色々入っていた。
なので折角だからと急須でお茶を入れてもらいました。
一緒に食べる最中も美味しいねぇ。
「駅前のお店だよ?」
「え、こんなのありましたっけ」
「うん。ちょっと大通りから外れるけど。私が良く使ってる安いスーパーの近くの」
「ああ。あそこの」
通称主婦の戦場ね。
俺は二度と行きたくないけど。
というか日坂さんの背丈であの群れの中に突っ込むのを見るのは非常に心が痛いのでやめてほしい。
お金持ってるんだからもっと近いところとかあるでしょうに。
何だかんだ貧乏性と言うか、金銭感覚が前のままなんだよなぁ日坂さん。
贅沢したところで問題ないくらいには稼いでるのに。
「それは戸村君が頑張ってるからでしょ?だから私はいいの」
「言うて俺は頑張ってるてか、楽しんでるだけですけど」
「あと単純に贅沢に慣れてないから、高い物買おうとすると震えるんだよね」
「深刻だな・・・」
これがこれから世界中で最も稼ぐ冒険者の姿ですよ。
バッグ売るだけで大金持ちってデザイナーか。
「とむらー!ここら辺は終わったよー!」
「分かったー!じゃあ回収だけ行きますか」
「お茶準備しておくねー」
遠島たちが辺りの収穫を終えたらしい。
呼ばれたので荷物の回収に行く。多分足腰が結構やられてるだろうからな。
実際彼女達に近づくと、全員土の上でへばっていた。
「髪に土とかつくぞ」
「ぼ、冒険者やってるなら今更だよ」
「その分ケアで時間取ってるからセーフ・・・」
「・・・」
遠島と松来はまだ余裕ありそうだな。
でも小鳥遊がダメっぽい。さっきから無言で倒れてる。
案外体力ないな?これだとダンジョン内でそこまで活動出来ないだろ。
「いや普通一、二時間くらいいればいい方だから・・・」
「えぇー?俺普通に四時間くらいいるぞ?」
「休日?」
「平日」
「とむらっち意外って割とマッスル系・・・?」
「まぁ元から鍛えてたしな」
「・・・あ-そういえばそうだったね」
「あと俺は一部以外の冒険者の平均的な活動時間を知らねぇ」
「「えぇ・・・」」
マナとアーサーはあっちがしゃべって来たので知ってる。
でもあいつらも長い時には半日とか潜ってるらしいし、俺は別におかしなことはしてないと思う。
休日に朝から夜までコースはプロ冒険者としては普通な方だろう。
「学生冒険者としてみるなら異常だよ」
「トムラッチって本当に強いんだねぇ」
「・・・さ、流石プロの方ですね」
「お、復活したか。とりあえず移動するぞ」
「「はーい」」「・・・はい」
うーん。本当に大丈夫か小鳥遊は。
ちょっと心配になるくらい疲れてると思うんだが。
「小鳥遊って普段からこんなん?」
「いや。流石にこれほどじゃないんだけど」
「ちょっち珍しいよね。肩貸すよん」
「ありがとう」
普段は違うのか。まぁ慣れないダンジョンだからってのはあるかな。
それに戦うのとは違う所の筋肉使ってるだろうからその分が来てる可能性はあるか。
疲れてるというか、筋肉が痛い的な。
「でも戸村っちなら私達より早く収穫できるんだよね?」
「まぁそうだな」
「なら自分でやった方が良かったんじゃないの?」
「いやぁ。流石に人手には勝てんよ」
一本一本抜く速度は間違いなく俺の方が早いだろうけど。
ちょっと試しに、土に隠れてまだ収穫されてなかった芋のツタを引っ張ってみる。
すると一気に土が舞って埋もれていた芋が全部露出した。
「大体こんな感じ」
「「「」」」
ダンジョン産の野菜は色々な意味で丈夫だから収穫の時に力加減をそこまで気にしなくてもいいよね。
俺の収穫風景を見て口を開けてアホ面になった三人の目の前で手を叩いて正気に戻しておく。
少し落ち着いたのか小鳥遊も歩くくらいは出来るようになったみたいなので日坂さんの所に戻りましょうか。
「お待たせしましたー」
「お疲れ様みんな。はいお茶どうぞ。冷たいのはこっちね」
「やったー!」
「え、もしかしてそのバッグの中に全部入ってたんですか?」
「そうだよ。私のはずっと自分で持ってるからみんなのより容量が多いの」
「へ、へぇ・・・え?明らかに私たちの方には入らない量だよね」
「恐らく私達のは本当に少しだけなんだと思いますよ」
「すっごいなぁ。やっぱり私たちもスキル欲しい」
「そこは頑張れ」
俺も自分が使えるスキルなら欲しいからな。
「そういや宝箱あったか?」
「いいや。この辺には無かったと思うけど」
「まぁそううまくはいかんか」
「気長にいかないとだめだよ戸村君」
「わ、分かってますよ」
いつも何でも早いんだから、今回くらいはゆっくりしなさい。
これはこの間の相談時にも言われたことだ。
ゲームに集中していた時期みたいに、のんびりとする時間も必要だと。
それに急いで今回の問題を解決したとしても、それが不十分だったりすると近い将来また同じ問題にぶつかるからな。
どうせなら長く使える物を手に入れたい。
その為には長い時間を見ないとダメ!・・・って言われましたはい。
でも俺そんなに焦ってるかな。結構俺的には落ち着いていると思うんだけど。
「たまーに戦う時にいつもと違う感じするよ?」
「マジっすか」
それはいかんわ(迫真)
ただでさえ先に進めないんだから、一戦一戦大事にしないといけないのに。
あと雑に戦うと『赫爪』だって壊れかねない。
これ壊れたら今度こそ俺暫く使い物にならなくなるぞ。
「そういや。お前ら二十層近くまで来るの初めてだよな?どうよ実際」
「感想?うーん。正直ここだとあんまり実感湧かないというか」
「まぁそらそうか」
人によってはダンジョンの下に層に行くとそれだけで疲れるって人がいる。
それは下に行くことでダンジョン自体の環境が冒険者に厳しくなる。
だから感じる空気自体が重くなるからとかで、場合によってはそれに慣れるところから始める奴もいるんだとか。
そしてそれは大体十層ごとに起こる現象らしく、
その層が近くなっても出てくるんだとか。
「もしかしたら、小鳥遊はそれに近いのかもな。緩いとは言えここ十八層だし」
「なるほど。確かに言われてみれば少し肩が重い気がします」
「私は全然平気かなー?」
「松来はそのあたり大丈夫そうだよな。図太そうで」
「なんだとー?」
こいつが気負されるってのが想像できないわ。
遠島もそのあたりは強そうだよな。姉は・・・どうなんだろうか。
でもここでその空気感を体感出来たのは良いことだろう。
下を目指すのなら絶対に通らないといけない道なわけだし。
「そうしたらプロも近くなると思うし。良い事尽くめだな」
「あ。三人はプロ志望なんだ」
「はい。一応はですけど」
「へぇ。じゃあ戸村君みたいにダンジョン漬けなんだね」
「え、いや。戸村程はあれですけど」
「え?じゃあ短いの?うーん。それだとちょっと難しいかなぁ」
「えぇ!?」
「そ、そうなんですか?」
「時間が短いと声も掛けられないだろうし・・・今最高で十一層だよね?」
「は、はい」
「じゃあやっぱり時間短いかなぁ。それくらいなら大体声は掛けられるだろうし」
これは俺も知らなかったが、プロの冒険者としてスポンサーを得るには探索時間は結構重要な要素らしい。
プロの冒険者に求められる物の中で大きな要素。
一つ目はもちろん力。強くないとプロにはなれない。
もう一つは運。これが結構馬鹿にできない。
正確にはクエストなどで依頼されたドロップ品の入手率ってところか。
ようするに求められた物をどれだけ短期間で、確実に入手出来るかが重要。
プロとして雇うなら、スポンサーから見たらそこが無い冒険者はちょっと声を掛けずらい。
そして最後に探索に使う時間。
ダンジョンの中にはどうしても探索に時間が掛かる場所が存在している。
そういった場所に行けるか行けないか。
問題があっても探索時間を増やして解決出来るか出来ないか。
様々な面で、探索時間が長い冒険者は融通が利く。
「だから企業側が一番見てるのって、実はそこだったりするんだよね」
「へぇ」
「じゃ、じゃあ私達は今のままだと・・・」
「流石に二十層近くまで行けばどこかからか来ると思うよ?
でも卒業後とかも続けるかどうかみたいな話になるかなー」
「ああ。学生の時だけって話でも困りますもんね」
「うん。それにみんなは多分こっから停滞すると思うし」
「え?」
「そうなのですか?あまりそういう話は聞かないのですが」
「今まさに戸村君が引っ掛かってる問題なんだよねそれって」
「あー」
そうか。言われてみれば確かに十一から下はそこで躓くな。
言われてみれば納得だ。そしてあんまり聞かないのも理解できる。
「いったい何が原因で・・・」
「みんなの武器が通用しなくなるんだよね」
「・・・あ!!」
「何か思い当たる事ある?」
「十一層で、ちょっとだけ」
十一層のモンスターは確か・・・そうだ。上位のコボルトだったっけ。
どうも遠島たちはそいつらと戦った時にちょっと苦戦したらしい。
どうも攻撃が効きづらくて、一戦やったら下がったんだとか。
「槍も刺さりづらくって、無茶しちゃったから壊れちゃってるんだよね」
「ん?じゃああれは?」
「新しく買ったんだよ。あれなら通用する」
現状人間が作る武器で、ダンジョン外の素材で作られた装備が通用するのは十層までと言われている。
それも武器の扱いに慣れた人間での話。
恐らく素人ならもっと上の段階で躓くだろう。
遠島たちはそれなりに時間をかけて進んでいるから、能力が高くなって武器の問題がそこまで表面化していなかった。
だけど十一層で苦戦し、武器を失っていたのか。
俺もその辺りで鉈ぶっ壊してるし。似たようなもんだな。
「ま、それならそっから下は厳しいだろうな」
「そ、そうなんだ」
「俺十七層で武器ぶっ壊したし、その前でも配給された武器やってるし」
「えぇ!?プロ仕様の武器を!!??」
「戸村君の場合力任せにするからだよ・・・」
「似たようなもんですよ」
雑に投げたのは気にしてはいけない。自覚はあるから反省している。
「んで?実際時間増やせそうなのか?」
「き、厳しいかなぁ」
「流石に・・・」
「うーん。勉強とかあるし」
「まぁそうだよな」
「・・・戸村君そういえばお勉強って?」
「???授業聞いてたら問題なくないです?」
「この天才め・・・」
ゲームやりたいだけやる為に出来るだけ授業中に済ませようってした結果だよ。
やろうと思えば誰でも出来る・・・とは言わないけど、多分近い事ならだれでも出来るだろ。




