イベント終了
『結果発表の時間だよ~』
『・・・結局最後まで緩かったわね』
イベント終了。
初めに集められた空間で今回の参加者、さらに周囲に用意されたスペースに観戦者たちが集まっている。
その集まりの中には行かず、舞台裏にひっそりとしている数名がいた。
「いやぁ。負けたねぇ」
「ひっさしぶりにガチで負けかけた」
「ははは。僕がもっと掴むのが早かったらなぁ」
「ほんとそれな」
集まっているのはイベント上位入賞者。
要するに俺達とアーサー達のコンビだ。
最後の戦い。あれ自体は結局俺の勝ちで終わっている。
だが内容を見れば、圧倒的有利を作った俺に対してアーサーが最後の最後で成長したことで猛追している。
なので俺的にはちょっと不満というか、反省点が大いに残る終わり方をしてしまった。
『そこまで反省する内容でも無かったと思うが』
「いやぁ。あれだけ追っかけられちゃねぇ」
「私は見れてないんだけど、実際どうなったの?」
「あーっとですね・・・ん?てかアルチャ氏、もしかして結構早めに落ちた?」
「うっ。いやいや。どっちかというとムサシさんがね?」
「は?ムサシが?」
『・・・久しぶりに貴公以外で抜いた』
「あー」
あれか。あのアホみたいな刀を使ったのか。
細かい詳細は知らない。ただあれを使うと使わないのではムサシは全く強さが違う。
俺が目指している本気のムサシはそっちの方だ。さらに上があるから、恐らくそこまで言ってないと思うが。
というかそこまでやってるムサシ相手にアルチャ氏が戦えたら流石に凹むんだが。
「じゃあ仕方ないっすね」
「でしょ?」
「てかそれならお前途中から見てたのかよ」
『そうだな』
「なら援護しろよ。イベント的に」
『・・・あっ』
「おい」
「僕的には助かったよ。お陰で大分良い経験になった」
くっそアーサーの奴戦ってる途中はあんなに変な感じだったのに今や完全に吹っ切れてやがる。
何に悩んでたのか知らないし、自分から聞こうとは思わないが。
そのうち自分から話してくれるだろうという感じもしてるしな。態々聞くことじゃない。
というか問題はそこじゃなくて、思ったよりアーサーにやられたことだよ。
「あれ自体は練習してたのか?」
「いいや?今回初めてやったね。そもそも出来るとは思わなかったし」
「うっへ」
この天才ちゃんがよぉ・・・
元々秀才タイプのアーサー。なんでもそつなくこなし、頭も回るのは今回のイベントで改めて証明してみせた。
そこに加えて、冒険者としての経験とゲームでの経験。+武術の技量が合わさるとか控えめに言って盛りすぎでは???
「君がそれ言うのかい」
「あんたは人の事言えないからね?」
「俺は武術しないんで」
『武術は良いぞ』
「いきなり肩掴むな脳筋!」
ここぞとばかりにムサシが俺を同じ世界に勧誘してくる。今に始まったことじゃないが。
一応言っておくと、全く使ってないわけじゃない。
俺だってムサシ達の動きを見て勝手に自分流にアレンジはしている。
だけどそれは所詮は我流。本物には遠く及ばない。
しかも俺の場合結構いろんな人の動きを見て盗んで変えてをやってる分割と纏まりが無い。
なので動きにどうしても無駄な部分や、無理が出てくる部分が存在する。
それを無理やり身体能力でどうにかしてしまっているのだ。
質の悪いことに、それが俺にとっての最適解なのが余計に俺を武術そのものから遠ざけている。
「そういえば君のあの空中機動自体も誰かの動きだったね」
「そうそう。今はもう引退しちゃってるんだけど」
扇雀と違い、完全な引退をしている人だ。
本人曰く結構な中年らしいので目が追いつかなくなってしまったんだとか。
こればっかりは仕方ないとは思うが、当時はちょっと悲しかったなぁ。
『あれをしていたプレイヤーが他に?』
「蒼ほど出鱈目じゃなかったけどね」
「あー。そういえばいたっけ。一時期話題になってたような」
「ゲーム史上初の空中戦をしていたプレイヤーだからね」
元々その人は、俺の様に戦闘メインではなかった。
曲芸。魅せる為の動きをメインに極める人。動画映え何かも狙ってたっけな。
俺がその人を知った理由はまさにその動画だ。
あの時は身体能力強化特化では無かったけど、俺にあう方法を見つける為に色々してた時期。
まだレートランキング自体存在してなかったから、ムサシも俺も有名ではなかった。
「どこで何してんのやら」
「あれ?知らないの?何か意外だわ」
「何でです?」
「あんた結構いろんな人とオフで会ってるじゃん?師匠的な人なら会ってるもんかと」
「あー」
流石にあの時はまだそういう感じじゃなかったんだよなぁ。
今もガキだけど、それに輪をかけてガキだったし。
ちなみにこんな事言ってるけど、アルチャ氏には会ったことが無い。
「今度会います?」
「いやぁ。私にあってもおもしろくないでしょ」
「蒼が面白いからいいんじゃないかい?」
「それどういう・・・?」
『・・・むぅ』
「ムサシは・・・来ないんだよなぁ」
『会ってみたいとは思うが、億劫でな』
「意外と引きこもりなの?ムサシさんって」
『一駅先に行くくらいなら良いのだが』
「あー。そういうタイプか」
遠出になると急に面倒になるやつ。まぁ分からんでもない。
うちだとリアがそんな感じだからな。
『それじゃあそろそろ上位二チームの発表だね~』
『とはいっても、みんなもう分かってると思うけど』
「おや、そろそろだね」
「みたいだな」
「順位発表で上位来るのって久しぶりだなぁ」
「・・・君、この間遠距離武器限定のイベントで勝ってなかったかい?」
「いやいや。ああいうのとこの手のイベントじゃ違うっしょ」
アーサーの言ってたイベントって確か遠距離武器での名中距離と精度を競うやつだったか。
まぁ確かに今回の見たいなガチバトルイベントじゃないから違うのかなぁ。
俺はその手のイベントあんまり出ないし・・・前は出てたんだけど出禁になったし。
そんなことを考えていると、舞台上から俺達を呼ぶ声が。
運営スタッフに促されて裏から出て行く。
急に明るさが変わったことで一瞬目が眩むがすぐに慣れた。
そしてそれと同時に、周囲から大きな歓声が上がる。同時に怨嗟の声も上がる。
それに対する反応は各々ばらばらだ。
ムサシは案の定無反応。
アーサーは大きく手を振って歓声に応える。
アルチャ氏も手を振っているが、アーサーのそれに対して非常に控えめだ。
俺の反応?俺の場合は・・・
「クタバレ」
『『『『『『『『『『ウォォォォォォぉ!!!!!!』』』』』』』』』』
罵倒共に中指(爪)を立てる。
するとさらに大きな歓声が上がる。これが俺のキャラというか、扱いなのだ。
完全にヒールキャラというわけではないんだが、何故かこういう反応を返すと喜ばれる。
大会で勝つようになってから、時々やるようになったのだが最近ではずっとこんな感じだな。
「あんたって結構ファンサするよねー」
「この間リアルでファンにサインしましたよ」
「ちょ、なんだって?」
反応が収まり始めると、司会の二人が進行を再開する。
「いやぁ。ここの二組の戦いは熱かったねぇ」
「そうね。まさかバトルロワイアルでタイマン勝負を見ることになるとは思わなかったけど」
「終盤で一気に削ったからねー。あれは元から考えてたんですかアルチャさ~ん?」
「え?私」
「やったのは君だから。当然だね」
「指示したのそっちでしょ!?」
二人のやり取りに会場が笑いに包まれる。
「それで結局どっちなの~」
「そうだね。まぁ隠す事も無いから言うと、イベント前から考えてたね」
「えぇ~?すごいね~」
「イベント前って、もしかしてイベントエリアの情報を・・・」
「当然調べてたさ。そこの筋肉コンビは知らなかったみたいだけど」
「勝ったからセーフ」
『うむ』
「それはそれでどうなんですかね・・・」
さらっとこちらを刺されたが、言った通り勝ったからセーフ。
何事も勝てば官軍負ければ賊軍なのだ。
まぁ調べた方が勝率は上がるので絶対に調べた方がいいけどな!!!
現役アイドルにもこいつらいつもそうだなって目で見られたい奴は調べるな。
アーサーが今回で立てた作戦の話が終わると、今度は会場中がどよめく。
無理もない。全コンビの動き、何より俺達がどう突破するのかを事前に予測してそれを的中させたのだから。
「でも勝てなかったね~」
「ちょっと僕が集中しきれてなかったね。あれが無ければ・・・どうだったかな?」
「そしたら俺も最初から潰しに掛かるが」
「だろうね。ちょっと今回は一対一で戦うことにこだわりすぎちゃったかな」
「それが無ければ勝てたと?」
「勝ってたね」
「勝ってただろうな」
「勝ったと思いますよ」
『負けてただろうな』
「えっ?」
上からアーサー、俺、アルチャ氏、ムサシだ。
そう。イベント中も思ったが、あれだけ完全に俺達の動きを読めたのなら勝つ方法はいくらでもあった。
俺とムサシは確かに強いが、無敵ではない。
残ったチーム数。そして街中という環境。アルチャ氏というトップクラスのトラッパー。
これだけの要素があれば勝ち目は十分にあった。
それを選ばなかったこと。選べなかったことが今回の敗因なのだ。
「い、意外とあっさり認めるんですね?」
「まぁそこは本当だからなぁ」
『・・・猫』
「こいつがこれだったし」
「「あ~」」
どうやらこの二人の目線で見てもあれはやらかしだったらしい。是非も無し。
「お二人を追ってたカメラも、途中から完全に動物と戯れる動画になってたもんね~」
「あれはあれで需要ありそうよね」
「全身鎧と笠男のどこに需要が」
「二人のファンには受けてたよ~」
『こちらはともかく、貴公はアリでは?』
「ねぇよ」
俺のファンって大体俺の戦ってるところが好きなんじゃないんかい。
そう聞いてみると、何かふわっとした感じに誤魔化される。
えぇ。何その反応・・・
「話を戻して~。えーっと。まずはムサシさんとアルチャさんの戦いかな」
「この辺りね。アルチャさんがムサシさんを誘導しながら罠に掛けまくってたわね」
「それを全部斬ってたわね。これどうなってるの・・・?」
「あー。これ解説いります?」
「お願いします!」
「えーっと。まずこのゲームの罠の仕様なんですけど」
厳密に言えば、罠というアビリティは存在していない。
アーツアビリティを変化させ、罠の様に使用することが出来るだけなのだ。
そしてアーツアビリティはアーツアビリティで相殺することが出来る。
もちろん相性というか、威力の差で相殺出来ないことがほとんどなのだが。
「でも罠みたいに使うと、ある弱点が出来ちゃうんですよ」
「弱点・・・ですか?」
「はい。どんなアーツアビリティでも相殺できちゃうんです」
「・・・それは、弱点なのー?」
「まぁ・・・普通はそうでもないんですけど」
ジト目で俺達を見てくるアルチャ氏。
そんな目で見られてもその何だ・・・困る。
「この人たち何故か出来ちゃうんですよねぇ」
「結果あれと」
「そうそう。流石に全部は斬られませんでしたけど、それでも六割くらいやられましたよね」
罠の発動から攻撃タイミングの発生まで微妙にタイムラグがある。
ようするに、発動を見て反応してアーツアビリティを使えば対処できる。
まぁ大抵の人間はこれが出来ない。
だけど俺達は出来る。それは先読み、慣れ、動体視力、反射神経などが理由だ。
「僕はあんまり出来ないんだけど?」
「あんたも結構大概よ?」
「一人だけ逃がすか」
「いや逃げてるつもりはないんだけど・・・?」
アーサーの場合先読みでそれを成す。
でも時々は外れるのでその場合は失敗して普通に罠を食らうことに。
なので基本は避けるタイプ。先読みである程度は罠の位置がわかるのでその方が確実だからな。
ムサシは反射神経。罠が来たと認識した瞬間に体が反射行動を起こす。
沸騰中のやかんに触った時に起こるあれだ。
防衛本能で起こるそれは、ムサシの場合刀を振るうという動作で行われる。
これがなかなか厄介で、何に対しても反応するから攻撃が通らない。
「この場合四割も罠通したこの人がおかしいんですよ」
「人聞きの悪い事言わない」
「いや結構普通におかしいよ君は」
『今度からは速攻でやろうと思う』
「私の強みが!?」
あなたの強みはまだまだあるのでそこまで悲観することないだろう。
地味に・・・いやド派手に遠距離最強格なのは伊達ではないでしょうに。
「あれ~じゃあ蒼ちゃんはどうなの?」
「俺?俺の場合は勘なんで」
「勘」
「勘」
「・・・本当におかしいわよねあんた」
「貴様~?」
さっき言った中だと慣れに当たる。
一体俺が何度アルチャ氏の罠に引っ掛かったと思っている。
まぁそれでも今回についてはガチで分からなかったうえに大体引っ掛かったのであれなのだが。
「てか何すかあの跳弾」
「最近覚えたんだよね」
「やっぱおかしいわ」
「貴様~?」
街の中という壁が多い場所とはいえ、あの精度あの密度で跳弾を放てるのは控えめに言っておかしい。
今回はムサシもいたからどっから来ても対応できたが一人なら数発当たっていたもおかしくは無かった。
「ちなみにその時の映像って?」
「これだね~」
先ほどまで俺とアーサーの戦いが映っていたスクリーンに跳弾に襲われている俺とムサシが映し出される。
その跳弾の軌道を追いかけてみると、複数個所に設置されたバリスタが見える。
さらに数十発は自身でも撃っている。合計で言うと全六か所からの射撃があったわけか。
「・・・今度からアルチャ氏とは密室では戦いません」
『いや。狭いのならやりようはあるのでは』
「ん?それもそうか。アルチャ氏今度一緒に」
「や り ま せ ん」
まぁでしょうね。そうでなくても断られること多いのに。
あっても新しい罠の実験台にされるくらいだからな!!
あれ、この人本当に控えめなのか?割と便利に使われてるような???
「蒼ちゃん蒼ちゃん」
「あい?」
「女の子をお部屋に誘うのは良くないと思うの~」
「いやそういう話!?」
ミホのボケにルミが突っ込む。
うーん。この流れも鉄板だなぁ。




