模擬戦のあと
「うーん。まぁまだ勝てんわな」
『数度負けていると思うが?』
「偶々勝利を拾ってるのを勝つっていうならそうなんだろうけどな」
俺だって流石に十割勝ち続けたいなんて言わない。
だが最低でも六割の勝率はキープしたいところ。
今回お互い本気では無かったとはいえ五分五分ってところだと、まぁ本気の時には勝てないわな。
それでもいくつか課題は見つかったし、後は何度か試して修正していく感じかね。
「その後はまたダンジョン行って感覚磨いて・・・」
『それだ』
「あい?」
『貴公、ダンジョンに行っているのか・・・?』
「え?まぁ・・・あれ?知らないのか?」
『知らない』
「アスカの奴は知ってるっぽかったんだが・・・気のせいだったか」
『・・・』
どうも本当に知らなかったようだ。
まぁゲーム内の知り合いにリアルの事情全部を教えることは基本無いから当然ではあるんだが。
アーサー達ははお互いにランカーで且つ冒険者という理由があるから、
俺からアドバイスを求めることもあるだろうと教えたみたいなところあるし。
アーサーの時はまだやる気が無かったから、ネタ半分で言っただけなんだけど。
アスカが知ってる理由は・・・多分マナかロメあたりだろうな。
しかしムサシが知らんとは。割と話は聞いてるタイプだと思ったんだけどな。
「何?興味ある感じ?」
『・・・多少はな』
「まぁ気になるよなぁ。特に俺達みたいなのは」
ゲームで強くなるには当然そのゲームをやり続けるしかない。
やって反省して、それを次に活かしてと無限に繰り返す。それが基本で絶対だ。
だけどアークオリンピアに限って言うならそれだけでは強くなれない。
ゲームとは言え、VRのフルダイブゲーム。自分の体を動かすのと変わらない電脳世界で遊ぶゲームは何より体を動かすことを要求してくる。
実際の肉体の能力ではなく、あくまでも体を動かすことが出来る才能や能力をだ。
当然実際に運動してるやつとしたことない奴では、前者の方が強いのはあたりまえだが。
要するに、ゲーム内に慣れると同時に実際の体を鍛えるとなお効率が良いのだ。
もう一つ理由がある。
俺やムサシが直面しがちな問題だ。
「なんせ戦っても経験値になる連中が少ないからなぁ」
『偏りはどうしても・・・か』
「そういうこと。てか俺もそれ目的で行ってるし。最初はやる気無かったけど」
『ほう?』
「いやさ。ダンジョンってもお前や他のランカー連中より強いってことは無いだろ?」
『それは・・・初めはそうなのだろうな』
「そうそう。最初はな。でも満足するレベルまで辿り着くのにかける時間を考えたらどうなの?ってさ」
『そういうことか』
実際はいきなり鬼と戦うことになったのだが。あれは今思えばいい出会いだった。
何せ時間を掛けなくても強いモンスターに出会えると分かったのだから。
それにあそこで戦いながら稼げばバイトとかに時間を取られずに済む。
今は日坂さんもいるから、冒険者の平均以上に稼いじゃってるけど。
「この間も一瞬死にかけたしな」
『何っ!?』
「え?・・・驚くことかそれ」
『ああいや。貴公は、その。あまりその手の事とは縁遠いと思っていたからな』
「まぁそこ意外だと実際・・・初日にヤバかったのあったな」
『ダンジョンとはどこまで過酷なのだ』
いや流石にあんなのレアケースだし。
鎧蜘蛛とか普通に避けようと思えば避けられる分脅威度は低いから。
まぁそこに突撃していったのが俺なんですけどね。
しかも佐々木さんからもらった装備がなきゃ普通に死にはしなくても重症だったろう。
『経験を積むのは良いが、堅実に行くのも重要ではないか?』
「ぐぅの音も出ない正論だなおい」
そこに関してはやっぱり事情があるからとしか言えなかった。
俺の個人のことならともかく、日坂さんの事情を勝手に話すわけにはいかないしな。
ここは何となく誤魔化しておこう。
「新しい装備手に入ってテンション上がってな」
『・・・ありそうだな』
納得してくれたのは良いんだけど、こいつ俺の事そうなりそうだって思ってたのかおい。
でも実際そういう姿を見せたことがあるような気もするので何も言えない。二つの意味で。
うんうんと頷くムサシ。
しかし、何となくこいつは俺より先にダンジョンに行ってそうだと思ったんだけどな。
いやそもそも年齢が低いのか?ロメみたいな例もいるし、それは普通にありえそうだな。
『どうかしたか?』
「いや。お前が実は俺の想像より若いんじゃないかと思っただけ」
『今のどこにそう考える要素が・・・ちなみに十五歳だ』
「普通に言うのかよ。てか一緒か?高一?」
『いや。通っていない』
「あー・・・家庭の事情的な?」
『そうだともいえるし、自分の希望でもあったからな』
「はぁん?」
あ、これもしや日坂さんと同じパターンか?
だったらあまり突っ込まないで・・・いや、困ってるっぽいならどうにか・・・いやしかし・・・
『家の道場を継いだからな。働いているのと同じだ』
「俺の心配を返せ。てか、道場?」
『そうだ・・・知らなかったのか?』
「聞いてないな。それっぽいなとは思ってたけど」
詳しい話はされなかったが、要するにムサシの家は結構歴史のある名家らしい。
そして父方の祖父の家が代々道場で剣術を教える家系なんだそうだ。
そんな家だからこそ、ムサシも若くして道場へと入り鍛錬を続けた。
『そしたら、いつのまにか最強になってしまってな』
「いつのまにかってところが実にお前らしいわ」
それって多分いつの間にかっていうもんじゃないと思うんですよ。
しかしこいつの強さの一旦はやっぱり武術系か。
どこか決まった動きというか、ある程度の一定の流れが存在しているとは思っていたが。
「でも今どきそんな家あるんだな」
『剣道や柔道なども教えているからな。もはや剣術はおまけの様なものだ』
「世知辛い世の中・・・でいいのか?」
『さてな。私も何となく継いだら働かなくていい立場になっただけだ』
「雑が過ぎるぞ大丈夫か」
『普段は門下生の稽古も観ている。決してニートではない』
何か今みているのニュアンスが違って気がするが・・・
ジトメで見ているとすっと視線を逸らされた。
ああこいつ半分はニートなんだな。
「家事能力とか無さそうだな」
『それは流石に風評被害だ』
「暇だから覚えただろ」
『・・・何だ。貴公はエスパーか何かか?』
そんなこったろうと思ったよ。
「でもそういう名家ってんなら、あれか。お見合いとかあるのか」
『っ・・・そうだな』
「はぁ。大変そうだねぇ。いや彼女いないとかよりは良いのか?年がら年中お見合いとか?」
『いやそれは無い・・・というか、暫くそういう話は無いな』
「は?」
『昔は頻繁にあったと記憶しているのだがな。そういえば最近はさっぱりだ』
「・・・あ、うん」
スゥー・・・これもう突っ込まない方が良い奴だな。
あれだ家の格とか、顔面の美醜とかそういう類じゃないと何となくわかる。
そしてそれは直接言うとヤバいと本能が訴えてくる。
マジで戦ってる時と同じくらいには訴えられてる。
よし、黙ろう
「お、俺も一回くらいやってみたいと思うけどな。お見合い」
『・・・そうなのか?』
「興味本位でだけど。流石にそれで結婚とか決めるのはなぁ。色々条件とかあるし」
『ほう・・・こちらも興味本位だが、どのような条件なのだ?』
「む。お前と恋バナすることになるとは」
しかしそうだな・・・
「まず髪は長い方が良い。おろしてれば尚いい」
『ふむ』
「あと身長は俺より低い方が良いな。この・・・抱きしめやすい感じのが良い」
『ふむふむ・・・胸は』
「デカい方が良いけど。まぁそこは人によるかな?でもぺったんこは・・・うん。無いな」
その人にあった胸のサイズがあると思うのだ。
日坂さんとか意外と着やせするタイプだけどあれくらいが一番良い。
「んで。料理は俺が出来ないからできた方がいいかな?」
『そこは確実ではないのか?』
「今のご時世デリバリーサービスとかもあるから別にな」
あと普通にコンビニとかスーパーとかでもOK派なのでそこは努力目標だな。
女性は家事が出来るものだーなんていう概念があるわけでも無し。
自分が出来ないのに相手に強制するのは間違いだろう。
でも出来る人がいるならそれはそれでいいなぁとは思ったりする。
「後は・・・後なんだ?」
『性格は?』
「性格ぅ?別に俺が受け入れがたいとか無ければ別になぁ」
明らかなサイコパスとかでもない限りそこも別になぁ。
というか俺自身があまり褒められた性格してないのに求めるのもどうなんだよ。
『理想なのだから良いのではないか?』
「こんな考えだから割とどうでも良くってな」
『ふむ・・・緩いな』
「え、これ緩いのか?結構言ったと思うけど」
『世の中にはもっと面倒なのが多い』
「そんなもんか」
うーん。個人的には理想高めと思ったが、そうでもないのか。
そこらへんは分からんなぁ。他の奴とこんな話したことなかったし・・・
「いや君達こんなところで何て会話してるのさ」
「あん?」
『む』
恋バナ中に横から話しかけてきた優男。アーサー君でした。
こいつ婚約者いるから話の邪魔ではあるな。
「今失礼な事考えたね」
「断定かよ」
「君達割と分かりやすいんだよね」
「マジか・・・え?君達?」
「ムサシ君は手元が挙動不審になる」
『なん・・・だと・・・?』
え、と思ってみてみると確かに指先が変な動きしてる。
ああ確かに分かりやすいかも。
見られているとわかったのかムサシは手を組んでしまった。ちょっと残念。
「それで?何でこんな所で変な話をしてるんだい?」
「いや。ムサシが昔お見合いしてたって話になって・・・」
とりあえず恋バナの話の流れを説明する。
すると思っていたよりアーサーが食いついた。
「へぇ。確かに蒼の話は興味あるね」
「何で俺限定・・・?」
「いや。うちの親戚とか会ってみない?」
「今何段階飛んだ!?」
『・・・その手があったか』
「ムサシさん!!??」
何でいきなり俺が見合いするって流れになるんだ???
「いや。君の冒険者としての活動調べたら父さんが興味持っちゃってね」
「何してくれ・・・って待って、調べられるのかそれって」
「君自分のやったことの価値を正しく認識しておくべきだね。ぶっ飛んでるから色々例外になってるよ」
要するに、アーサーの国に引き込むためにうちの人間とお見合いせん?てか婚約しない??ってことか。
優秀な冒険者の数は自国のダンジョン産業の発展に直結する。
なので他の国にいる知り合いが、冒険者として優秀なら勧誘するわな。
でも前にその手のあれこれって色々問題になるって話だったような・・・?
「あれはその気がないのに支援するとって場合だよ。友達だからって理由だと実力無いと困るのは君だし、それが理由で国と揉めるのはちょっとね」
「つまり」
「本気で呼ぶ気ならいくらでもやるよね」
「こっわ」
『・・・貴公』
「え、何?お前も何か勧誘??」
『明後日の十二時なら、予定がつくr』
「いいから見合いの話から離れろぉぉぉぉぉぉ!!!」
どうしてこうなった。




