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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 冒険者になる
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初戦闘

「ここからは注意してください。一層は敵も弱いですが、それでもダンジョン内では油断してはいけませんよ」


奥へ進むごとに空気に慣れてくる。

数分もすればいつも通りに動けるような気もしてくる。


一層から三層までは洞窟の様な場所が続いており、

敵はそれぞれネズミ、ジャイアントバット、ゴブリンだ。


ゴブリンからは一気に死亡率が上がるらしく、何度注意しても犠牲者が出るんだとか。

初めての負傷というのもこの三層が一番多い。

その為渡されたレンタル装備の中にはいくつか回復のための道具が入っている。


桜木さんを先頭に、離れない様に進んでいく。

曲がり角があればその都度角の先を確認し、罠が無いかもちゃんと見ていく。


「結構ゆっくり行くんですね」

「慣れれば浅い層はもっと簡単に進めると思いますよ?

 今回は研修で、この空気に慣れるのが目的ですから」

「そういうものですか」

「そうですね。戸村さんは随分と落ち着いてますね。本当ならもっと彼らみたいになると思うんですが」

「心持ちの問題じゃないですかね」

「心持ち?」

「いや。俺あんまりここ来る気ないんで。今日をどうにかすれば来ないんじゃないかと」

「ああ。確かにそれなら納得ですね」


どうでもいい事に大して何も思わないなんて当たり前の事だ。

だからこそここの空気にも慣れる事が出来た。というか受け流す事が出来る様になった。

他の三人がこの先どうするのかは知らないが、まだ体が強張っている。

そこまでなる理由も分からんがな。


何となく腰にぶら下げた剣を眺めてみる。

相変らず違和感がすごい。俺がこれを使ってることに対しての違和感だ。

普段はもっとこう・・・雑に使う感じの武器を使うしなぁ。

いやゲームの話なんだけどな。


また暫く歩く。

どうも一層は俺達みたいな初心者が多いのでモンスターの数も少ないんだとか。


でも桜木さんは何かしらスキルを持っているらしく、

確実にモンスターに近づいているらしい。


「おや。いましたね」

「あれが・・・醜悪っすね」

「か、かおこわっ」

「あははは。まぁ最初はそう思いますよね」


道の先に三体ネズミがいる。小型犬くらいの大きさで驚きだ。

歯も大きいし、あれに咬まれたら痛いだろうな。


「ネズミはダンジョン内でも最弱ですが、十分に人を殺せる事を忘れないでください」

「数が多い時にはどうすれば?」

「そうですね。まぁ敵が自分よりはるかに弱いなら力押しでも良いとは思いますが」


良いのかと口にはしないが思った。

研修なんだからそう言う時は戦わないようにしましょうとかあるんじゃないのかと。


だがちゃんと理由はあるらしい。


「ダンジョンではモンスターの位置を掴むスキルでも無い限り、退路が分からないってことが殆どですから」

「別の場所に行っても、またモンスターに出会ってしまう可能性があるってことですか?」

「そうなりますね。ふむ。いい感じに三人も緊張がほぐれたみたいですね」


見てみると確かに先ほどよりはマシになったようだ。

いや一人だけまだダメっぽいけど。まぁ明らかにこういう所に来る感じじゃ無いしな。

教室で本でも読んでそうなタイプ。


しかしどうせモンスターがいるのなら戦ってみたい。

ゲームと違うのは分かっているが、それでもやはり興味はある。

それなりに鍛えてはいるし、他の人よりは自信もある。


それが伝わったのか、桜木さんは俺を指名してこういった。


「ではまず、戸村さんと私が戦ってみましょうか」

「良いんですか?」

「構いませんよ。戸村君が一番動けそうですし。何か武道とかやってました?」

「してませんよ。ゲームだけですね」

「あ~。VRのですかね。そういうのでも意外と活かせるんですよ」

「へぇ~」


それは確かに意外だな。

ゲームと現実がまぜこぜになって認識がずれると大変そうだと思っていたが。


残りの三人も俺がやることに異議は無いらしい。

なので桜木さんと俺は前に出る。

ネズミも俺達に気が付いて威嚇してきた。


「二体は私がやりますので、しっかりと、気を付けて戦ってください」

「了解」


剣を構えて近づく。

桜木さんは俺を追い越して一気にネズミに近づいて二体をその勢いのまま倒してしまった。


「さぁどうぞ」

「えぇ」


思わず頬が引き攣る。やりますってそういうレベルの話か。


だが非常に良い状態なのは間違いない。

文句をいう筋合いも無いので目の前にネズミに集中する。

ネズミは周りにいた仲間が死んだことを気にしていないのか、俺の方をずっと見ている。

そしてついに、牙をむき出しにして飛びかかって来た。


「ふんっ!」


しかしそんな丸わかりの攻撃でどうにかなるわけでもなく。

そもそもゲーム内の攻撃はもっと速い。

目で見える範囲の攻撃ならまず当たることは無い。それが例えゲーム程俺の体が動かなくとも。


飛びかかって来たネズミに剣を叩きつける。

そのまま地面に衝突するがまだ死んでいない。

なのでトドメとして剣を突き立てる。


すると倒しきったらしく、死体が消えて魔石とネズミの尻尾が残された。

何か・・・想像していたよりはるかにあっさりというか。手ごたえが無いんだな。


「お!おめでとうございます。初討伐ですね」

「あざまーす。この尻尾なんです?」

「それもおめでたいですね。それはネズミの尻尾という特殊な装備ですね」

「特殊な装備?」

「はい。詳しくは後で説明しますが、冒険者カードにそれを近づけてみてください」


言われた通りにカードに尻尾を近づける。

すると尻尾が光り、何とカードに吸い込まれてしまった。


「なっ!?」

「フフフ。その手の装備は本当にレアですから。その分効果も期待出来ますよ」

「・・・じゃあ売った方が良かったんじゃないですかね」

「おや?・・・あ、そういえば戸村君はこれからバリバリ冒険者になるーって感じじゃ無いんでしたね」

「まぁそうですね」

「なら確かに売った方が良かったかもしれませんけど・・・まぁ損は無いので」

「はぁ」


何でもダンジョンとは関係なしに効果があるらしい。

一体どんな効果なのやら。


残りの三人も無事にネズミを倒した。

尻尾は落とさなかったが、それでも怪我無く倒せて魔石を得られたことは嬉しいようだ。


これでとりあえず研修内容は終わった。

後は帰るだけだ。


「え?もうですか?」

「はい。本格的な探索は明日以降ということになりますね」


研修の目的はあくまでもダンジョンに慣れさせることなので、あまり長い時間は潜らせないらしい。

慣れない場所ってのはそれだけで体力使うからな。仕方ないことなのだろう。


だが俺じゃない方の男子はそれに不満そうだ。

顔に感情が出ているが隠そうともしない。

桜木さんはそういうのにも慣れているようで


「ダンジョンでは、まだ行けるはもう帰れと言われていますからね」

「本当の意味で理解出来る日は遠そうですね」

「ははは。本当に戸村さんは素人らしくないですね」

「褒められてますそれ?」

「褒めてますよ一応」


釈然としないが受け取っておこう。


その間に男子の方も周りの女子の一人に何か言われたのか上機嫌になっている。

あれか?良い所見せたかったとかそういう系か?

うーん理解出来ない()こんなところでやるな。


それを見て桜木さんも苦笑いしている。


「いるんですああいうの?」

「えーっとまぁそうですね。そこそこといった感じでしょうかね」


この感じだと間違いなくいるな。

いまいち居づらいのか、メカクレ系女子の方が俺達の方に近寄ってきていた。


「遠島さんは、今回はどうしてダンジョンへ?」

「え?えーっとその。皆が行くって言うから・・・」

「あー。俺と同じ」

「その。私あんまり友達とかいないから、こういう時くらいはって」

「微妙に悲しい事実が発覚した」

「遠島さん、大丈夫です青春はこれからですよ」

「は、はい」


何か共感する部分があったのか、桜木さんが遠島(初めて知った)の手を取り力強く伝える。

急に悲しい事実の発覚が増えるじゃんどうなってんだ。


「えぇえぇ。学生時代に恋人が出来なくたって人生幸せになれますから。私が保証します」

「な、なるほど・・・?」

「何故そんな話に」

「そもそもその程度の事で人生が・・・ッ!?」

「桜木さん?」


話の途中で桜木さんが急に焦ったような表情になった。

その表情には見覚えがあった。


ゲーム内でのコンテンツで、集団戦がある。

その中で突然俺などのランカーに出会ってしまったプレイヤーの顔だ。

それと同じならそれは


「今すぐ脱出します。走ってください!」

「え?」

「いいから早く!!」

「は、はい!!」


明らかに鬼気迫った感じの桜木さんの声に驚きながらも走り出す。

何度も後ろを確認しながら桜木さんは最後方に位置取る。


道中で、俺も何かおかしな状況にある事に気が付く。


「誰もいない・・・?」


冒険者どころか、モンスターすら一匹も見かけない。

まるでそれら全てが消えてしまったみたいだ。


「な、何か空気が冷たくなってきた様な・・・?」

「不味い。どこの馬鹿だ」


桜木さんが取り繕う事も出来無いレベルで不味い状況らしい。

本当に何が起きているのか。


それを知りたいが、今は話しかけて良い感じじゃない。

知りたければとりあえずここを無事に出るしかなさそうだ。

だがまだ出口までそこそこ距離がある所で、桜木さんが足を止めてこういった。


「すいません。皆さんはこのまま出口まで走ってください」

「ハァ・・・さ、桜木さん?」

「簡単に説明しますと、どこかのチームが罠にかかったようです。

 そのせいで本来この階層にいないはずの強力なモンスターが近くにいるようです」

「なっ!?」

「・・・だからこの空気なのか」


レベルと言う概念は、冒険者だけではなくモンスターにも存在している。

もしモンスターの方がレベルが高かった場合、空気の冷たさだったり、プレッシャーとして冒険者の動きを阻害してくる。


そして桜木さんがここに残るという事は、その強力なモンスターは俺達に追いつく可能性が高いようだ。


「だ、大丈夫なんですか・・・?」

「分かりません。何が来るかに依りますので」

「分かりました。とりあえず、出たら助けを求める形で?」

「お願いします」

「と、戸村君!」

「ここで喋ってると死ぬぞこれ」

「理解が早くて助かります。さぁ、行きなさい!」

「「「は、はい!!」」」


振り返らずに走り出す。出口はまだ先だ。

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