腕試し
2024/06/20 改稿しました。これで改稿分は一旦終了です。
「では今回ですが、我々は本当に護衛だけで良いと?」
「はい。そうじゃないと俺を測れないんで」
ダンジョン九層道中。
ここまでは俺だけでも問題ないので比較的緩い雰囲気がチーム内にある。
もちろん油断はしていない。ただモンスター程度ならもうどうにもならない程の実力があるからだ。日坂さん以外。
一応桜木さんと佐々木さんがどう戦うのかはオーク相手に見せてもらっている。
桜木さんは大型のコンバットナイフの様な物を二つ持って相手を撹乱、またはスキルで隠れて不意を打つタイプ。忍者みたいだな。
俺が初めて三層に行ったときにゴブリンが俺だけを見ていたのはそのスキルの効果らしい。
「そう言えば私も色々調べたのですが」
「うん?俺の事ですか?」
「はい。よく佐々木の事を覚えてましたね」
「はい?」
桜木さん曰く、俺のアークでの戦闘回数は異常だと。
一日数十戦は当たり前。
時間があるなら百を超える数を戦う。それも何日も繰り返す。
その精神力と忍耐力。
何よりその間一切パフォーマンスを落とさない集中力。
「けどそんな数戦って、よく覚えていたなと」
「ああそういう」
けどそこまで不思議な事でもない。
確かに俺は何度も何度も戦っている。
だが同時に、強い相手はちゃんと覚えているのだ。
だから佐々木さんも覚えていた。
直接戦ったことは無いんだけど。
「今からでも喧嘩売りたいくらいには、面白そうだなって」
「と、戸村君顔。顔!」
「おっと」
「・・・ああうん。本当に噂通りなんですね。戦闘慣れの件も納得しました・・・」
「だから言っただろう」
「普通信じられないでしょう。突拍子も無さすぎですよ」
・・・そんなに変な事した記憶ないんだがなぁ。
ただ戦ってただけだし?
「そのうち日坂さんもゲームやりましょうか」
「ゲーム?」
「はい。普通に良い訓練になりますし」
あとデートとかも出来るしな。
アークオリンピアって、何でか知らんけど無駄に色々あるから。
観光スポットとか、喫茶店とか、色々。
どうせなら日坂さんの弟妹分も買うか。
うんうんそうしよう。
「何を一人で頷いてるんですか戸村さん」
「多分先の事考えて一人で納得してるだけだと思いますよ」
「よく分かりますね。あまり表情動いてないですが」
「い、一応チームなので・・・あと」
「あと?」
「何か、この間から戸村君の事がよく分かるようになって・・・」
「・・・??」
「二人とも、もう降りるぞ」
「あら。もうですか」
その後、順調に九層十層を抜ける。
ボスは周回していたチームがいたので倒すことなく進めた。
次の十一層。本来なら戦いたいところではあるが今回はスルー。
そのまま十二、十三も同じくあまり戦わないで通り過ぎる。
問題はここから。十四層。ここで一度様子を見る。
俺が本当に十七層で戦えるか見るためだ。
本来の攻略階層である十一層を六個も飛ばしているため、手前で戦って様子を見ることしてしていたのだ。
何故十四層からかというと、調べたところそれより前は厄介ではあるが強いタイプではないから。
ただ純粋に強いと言われる十七層モンスターと戦えるかを調べるには不適格と判断された。
「見つけました。あれです」
桜木さんが先行してモンスターを見つけてくれた。
十四層モンスター、レッサーキメラを。
「こ、こわ・・・」
「安心してもいい。あの程度なら我々は問題ない」
「そうですね。正直どうにでもなりますし」
「・・・改めてすごい人と知り合いですね戸村君」
「行ってきまーす」
「聞いてない・・・」
後ろで日坂さんが頭抱えてる気がするが気にせず行きましょう。
レッサーキメラの特徴・・・ていうか奴は見た目だけならほとんどライオンだ。
普通のライオンとの違いはしっぽが蛇になっていることだけ。
だがその強さは決して舐めてはいけない。
軽く腕を振るうだけで並の人間に致命傷を与え、しっぽの蛇は猛毒を吐き出す。
本来なら、盾か何かで攻撃を受け止めながら隙を見て遠くから弓か魔法で攻撃するのが良いとされている。
そして当然の事ながら、そんなセオリーは無視するのが俺だ。
こちらに気が付いたレッサーキメラが先制とばかりに尻尾から毒を吐き出す。
それをスライディングすることで前に出て回避。
そのまま距離を詰めて斧を振り下ろす。
だが尻尾の蛇と本体の獅子は別の考えて動いているようで。
俺の攻撃は後ろに下がられることであっさりと回避された。
「おおー。こりゃオーガとかとは比べ物にならんか」
反応が早い。それに飛び退く時の速度から見て単純な速度でも上か。
じゃあ頭の出来はどうかな?
再度近づく為に動くと、今度はあちらも前に出てきた。
俺より早く間合いを詰めて腕を振るってくる。
だが前に進んでいる俺に受け止めはるのは無理、回避も無理。
じゃあ止まろう。
斧を地面に突き刺しブレーキをかけて無理やり止まる。
すると俺がいるはずだった場所を爪が通り過ぎる。
今なら空振りした奴は隙だらけだ。そこに斧の一撃を・・・は間に合わないか。
「えぇ・・・」
「うそぉ」
「おお!」
後日、その時の動きを日坂さんはこう言っていた。
「普通躊躇いなくそんなことします?」・・・と
「ギャァァァァ!!??」
「うるせぇよ」
佐々木さんからもらった赫爪から生やした爪を用いて、レッサーキメラの目を貫く。
そのままさらに力を込めて脳まで腕を伸ばす。
叫んでから一瞬暴れようとしていたレッサーキメラだが、どうもちゃんと脳まで届いたらしい。
少しの間痙攣すると、そのまま体を倒した。
腕を引っこ抜くと、レッサーキメラの目を握っていた。
「・・・ふぅ」
そのまま目を握りつぶすと、レッサーキメラの体がちょうど消えた。
「終わりましたよー」
「「・・・」」
「お疲れ様です!!」
佐々木さんは普通に出迎えてくれたけど、桜木さんと日坂さんはなぜか無言でこちらを見ている。
なんと言うか、うわっ何あの人みたいな目で見られているような?
「素晴らしい。まさかここまでとは」
「大丈夫そうですかね」
「はい。レベル的な心配はありますが、逆に言えば他の点については問題ないかと」
「そうです?」
「ええ。特に奴の攻撃をかわす際の動きは素晴らしかった。しかしあの動きは・・・」
「ああ。実は佐々木さんとアーサーの戦いを思い出したんで、どっかでやろうかなって」
「なんとっ!」
実際やってみて思ったが、あれ結構負担大きいかもな。
あんまり連続でやるものではないな。
だけど間違いなく使える。不意を打つという点においては結構有用だ。
実際レッサーキメラもあんな方法で避けられると思っていなかったのだろう。
明らかに攻撃後の隙が大きすぎた。
「いやそこではないと思うのですけど」
「うわぁ・・・うわぁ・・・・」
「二回も言われるなんて」
ここでようやく二人が近づいてきてくれた。日坂さんはまだドン引きしてるけど。
「一応聞いておきますが、なぜ斧ではなく爪で?」
「間に合わないと思ったからですよ。ちょうどよくすぐに攻撃出来て、威力の出せるこれがあったので」
ブレーキに使った斧を引き抜いて、攻撃をする。
流石にこれだけの動作の間があれば、レッサーキメラの隙は無くなっていただろう。
だからそれ以外での攻撃を行う必要があった。
いつもなら剣鉈を使っていた。だけどあれは前に折れてしまった。
そういう意味でも、佐々木さんからもらった赫爪は非常に助かった。
「攻撃の躊躇いが無かったのは、慣れですか」
「もともと、似たようなもの使ってるので」
「なるほど・・・はぁ。これは報告書がまた面倒なことに・・・」
後半は何を言っているか分からなかったが、とりあえず納得してくれたようだ。
そして日坂さんの声が聞こえないので、どこにいるかと思っていると。
「回収終わりましたよー」
「あざまーす。何かありました?」
「毛皮と魔石だったよ。でも戸村君やっぱり強いね」
「さっき引いてたのに褒められた」
「いやあれは普通は引くよ」
笑顔で褒められたと思ったら真顔で注意された・・・。
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