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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 冒険者になる
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12/907

冒険者歴約二週間 プロになる

「どうよ。似合ってる?」

「「おおー」」


家で装備のお披露目会。

七瀬スポーツ、そしてその提携企業の製品で纏めた姿はなかなか様になっていると思う。


結論から言うと、俺は七瀬スポーツのスカウトを受けた。

その場でサインはせず、一度は契約書などを親に見せるために持ち帰ってはいるが。


契約後数日で装備が届き、今はそれを実際に身に着けて妹たちに見せているところだ。


「でもすごいねー。まさかあの七瀬スポーツなんて」

「このダンベルは・・・?」

「もらった」

「え、そんなの貰えるんだ。いいなー。私も冒険者なりたいー」

「まだダメ」

「むぅ~」


リアに窘められている千尋。

あの様子だと、スポンサーになってほしい企業なんかもそこそこ思いついてるんだろう。

でもあいつがよく使ってる製品ってあんまりダンジョン関係ないような。

あ、でも化粧品関係は結構関係あるか。

ダンジョン内の植物や水に今までなかった成分が発見されて、それが美容に関係あるとか見た気がする。

製品化はまだされていないけど・・・あれか、試作品狙いか。

俺も靴貰ってるからあんまり人の事言えないけど。


リアの場合はどこにスポンサーになってほしいんだろう。

人形のことはよくわからないからなぁ。糸は欲しいとか言ってたけど。


「リアはどっか無いのか?スポンサーになってほしい会社」

「・・・装飾品関係」

「ほう」

「着飾るのに欲しい。宝石は単体でも欲しい」


なるほど納得の理由だ。

化粧品関係の会社より、よっぽどダンジョンに関係している分野だ。

金銀財宝・・・とまではいかないが、確か宝石の類はいくつか見つかっているはずだ。

中でも鉱山のダンジョンではよく見つかるんだとか。

難易度が高すぎて現状だとほとんど誰もいけないらしいが。

行けても少数で、準備をかなりの期間とってようやく数時間だけ探索出来るレベル。

だから品薄を通り越してまず世に出ない。


「いけたら取ってきて」

「無茶をいいよる」


そのダンジョンの難易度の高さはモンスター関係ないから多分行く機会無いと思う。


「それで?今日はそれ着て行くの?」

「いや流石に無いわ」


ダンジョンの建物の近くには協会所有の施設がある。

そこに更衣室もあるのでちゃんとそこで着替えるのだ。

武器だって協会に預かってもらってる。

冒険者の中には武器を自分で持ち運びしている人もいるそうだが。


「何で着替えたの?」

「千尋が見てぇっていうから」

「満足!あ、写真撮っていい?パパ達に送るから」

「あいよ」


写真撮影だけして家を出る。何で最後は全員で写ったんだ・・・?


着替えなどの荷物を運ぶ際のリュックも提供されている。

当然だが、スポンサー企業のロゴがデカデカと書かれている。

冒険者用の製品は普通の製品とデザインが異なっているので、割と見ただけで判断できる。

そのためそのリュックを背負っている俺は当然目立つわけで。


「・・・これはこれでやりにくいな」


道中でちらちらと視線を感じるようになった。

別に嫌な感情を向けられているわけじゃないから、そういう意味では問題ない。

何ならアークでも似たような目で見られることは多い。

でも現実で同じ視線を向けられると結構変な気分になるんだなと。

ロゴを隠すわけにもいかないし、今度から自転車で移動した方がいいのだろうか。


そんなことを考えていると駅前に到着。

そこまで来ると俺と同じような冒険者たちの姿が見えてくる。

流石に俺みたいなスポンサー持ちの冒険者はいないが。


ちなみにだが、七瀬スポーツの冒険者向け製品は基本的に青か緑色をしている。

その中で俺の持つリュックの様に黒いものはスポンサーから直接提供された物限定の色。

なので冒険者の中にいても目立つことには変わりない。そのことを知ったのはだいぶ後になってのことだったが。


協会の建物に入り、更衣室で着替える。

その後は預けた武器を取りに行く。


「すいません。武器を取りに来たんですけど」

「それではお名前と冒険者カードをの提示をお願いいたします」

「はい」

「・・・はい。確認いたしました。戸村様ですね。

 七瀬スポーツ様から預かっております物もございますが」

「それもお願いします」


預けている武器は一つだけ。例の斧だ。

前回使っていた剣は協会からレンタルしているものなので預けるとかじゃない。


でも今回はこちらも提供品がある。

恐ろしき提供企業の多さだ。まさか武器までカバーできるとは。

とはいっても、ちょっと珍しいものを選んだ自覚はあるが。


「それでは中身をご確認ください」


カウンターの奥から二つのケースがやってくる。

大きい方が斧で、小さい方が提供されたもの。


まず斧の方から。

ケースを開けて中身を確認する。この時それぞれ番号が書かれた札が付いているのでそれは受付に返しておく。

そして次は小さい方を開ける。中に入っている武器は剣鉈だ。刃渡りは50cm。


正直最初見たときは誰が使うんだこんなものと思った。

何せ鉈として使うには長すぎる。

色々調べたところ、鉈の刃渡りは20cmほどあれば長いと言われるレベルで

それ以上は腰にぶら下げた時、地面に擦れることは無いが邪魔になる。

俺は斧を背中に背負うのでそこもダメ。

そもそもそれだけ長いと普通に剣を持った方が良い。


じゃあ何でこれを選んだのか。

単純に昔、アーク内でこれに似たような武器を使っていたからだ。

あの時は剣鉈ってカテゴリの武器じゃなかったけど。


それはそれとして、これを作った奴は馬鹿だと思う。


ちゃんと番号があっているのを確認したので札を返す。

それが終わると準備完了。あとはダンジョンに行くだけだ。


ダンジョンの入り口は受付の隣の建物内。

そこは本当に入り口しかない。


入るために行列が出来るってこともないのですぐに中に入れた。


「相変わらずの空気だな」


冷たいようで、その実何もない。

まぁ一層にいても意味ないのでさっさと下に行くとしよう。


道中は可能な限り敵とは戦わないで進む。

ここの敵はもっと弱い冒険者。初心者の人間が倒すべき存在。

人の経験値を横取りする趣味は無い。うまみもない。


二層三層と手早く進んでいく。

そしてついに四層へ足を踏み入れる。俺も初めての階層だ。


「ここの敵は確かコボルトだったか」


ゴブリンより素早く、力も強い。

一度に出会う数はゴブリンが勝るが脅威度は断然コボルトが上。

ネズミからコウモリに変わった一層二層に比べると強さの上がり方が段違い。

冒険者として活動する上で、三層以降は特に気を付けるべきだと言われている理由はそれが原因だろう。


「早速お出ましだ」

「「グルルルル」」


ちょっと歩けばエンカウント。コボルトがこちらを睨みつけながら唸っている。

その眼にあるのは敵意だけだ。うんうん良い敵だな。


「でも時間をかける気はないから・・・とっととくたばれ」


俺がコボルトを潰すまで、時間はあまり掛からなかった。




















冒険者協会内部



「それでは。彼は七瀬スポーツの?」

「はい。スカウトを受けて、本日から活動を開始したようです」

「ふむ。結果だけ見れば、どこも損することなく終えられたか」

「全くです。しかしまさか七瀬が動くとは」

「それもどうも彼の事情を知っていたらしい。どこから漏れたと思う」

「あちらは協会のスポンサーです。どこから漏れても不思議ではないかと」


協会の一室で、戸村についての報告書を眺めながら会話している二人の男性。

前に桜木から事故についての報告を受けていた人物と同じだ。


彼らは戸村がスカウトを受けたと聞いて表には出さないがほっとしていた。

七瀬スポーツという企業が冒険者に対して良い企業であるということ、

そして自分たち協会が彼と契約を結ばなかったことを喜んだのだ。


本来ならば自分たちのところの戦力が増えるのは歓迎すべきことだろう。

だがこれには訳がある。


まず協会が冒険者を雇うという行動自体があまり世間に対して受けが良くないのだ。

協会はあくまでも国の機関の一部。

そのためその国が有望な冒険者を独占すると国民からやっかみを買う。

だがそれを考慮して戸村が冒険者にならないというのは本末転倒だ。数はいつだって足りない。

桜木が戸村に話していた手段は、本当にお互いにとって妥協の末に選ぶ最後の選択だったというわけだ。


しかし実際は七瀬スポーツという協会の中でも屈指のスポンサーが彼のスカウトに名乗りを上げてくれた。

おかげで最悪は逃れたという形で収まり、むしろ最高に近かった。


そもそも国の機関であるはずの冒険者協会に、一般企業のスポンサーがいるのはどういうことなのだろうか。

この話は、ダンジョンが出現して一年ほど経過したあたりまで時が遡る。


ダンジョン内に様々な資源があることが判明し、特に魔石が人間に与える影響の大きさによって人々は徐々にダンジョンへの興味を強めていた。

これでは近いうちに何か大きな動きが起きてしまう。

それを察した政府は今までにないほど素早く対応を行った。

そして生まれたのが冒険者協会の雛形であるダンジョン探索を専門に行う自衛隊の特殊部隊の設立であった。

しかしその研究会には問題があった。

まず予算が足りないこと、そして内部で仕事を行う人間も足りなかったことだ。

それでよく設立まで持って行けたと思うだろう。この際に必要だったのは、あくまでも形だけで良かったからそうなっていた。


そしてまた少し時が流れたとき、アメリカでダンジョン内からあるものが発見されたことで状況が一変した。

回復薬・・・ポーションの発見だ。

あらゆる外傷に効き、種類によっては病も癒せる。まさに夢の薬。

その発見により世界は大きく変化することを強いられた。

家族を怪我や病で亡くした者、進行形でそれらに苦しめられている者、そしてその家族が一斉に立ち上がった。

その活動を応援する人々も現れ、世は一斉にダンジョン探索を大規模で行うべきという論調へとたどり着く。

活動に対し、日本政府は自衛隊の特殊部隊について発表を行う。

それと同時にある衝撃発表を行った。


徐々にダンジョン管理を民間企業へと移行していくことだ。


そのための環境づくり、あるいは制度作りのためのスポンサーの募集を開始した。

そういったものが時を経て再編成。最終的に冒険者協会へとなったのだ。

だからこそ、今の協会は国の力はそこまで強くない。むしろ弱い。

今日本にある大型のダンジョンの管理を手放してしまえば、完全に影響力が無くなるだろう。


それはそれで別の問題が発生する。

各企業同士の足の引っ張り合いだ。

その中には協会内部の情報漏洩も含まれる。


「まぁ今はいい。恐らく止められんだろうからな」

「でしょうね。手を加えるにはあまりにも組織が大きくなりすぎています」

「幸いなことに、参画した企業全てにダンジョンを与えても問題は無い程度には数がある。

 バカみたいな欲張りがいない限り、致命的なことにはならないだろう」

「目を付けておく必要はあると思われますが?」

「わかっている。だが現時点でそんな余裕は無い」


冒険者も足りなければ、協会の人間自体も足りていない。

だからこそ桜木などの第一線級の冒険者が新人研修の監督を行っているのだ。


これに対する対策として、冒険者となった者達に定期的に監督をやらせることが考えられているがまだ先の話になる。


「それにお前たちの成果で金はある。待遇を良くして求人を出し続けるしかないだろうな」

「思っていたより新卒が入りませんでしたね。何故でしょうか」

「それはお前、我々がまだ世間によく理解されていないからだろうな」

「どういうことでしょうか」


老齢の男性が、若い男性に講義を行うかの様な話し方で語りだす。


「いいか?協会が今の仕組みなってからまだ一年と少し。

 だから実際に何をしているのか分からんことが多いんだ」

「広報は打っておりますが」

「それは冒険者としての方だろう。というか恐らくそこと混合されている可能性もあるか」


協会に事務員として雇われたとしよう。

それは普通の社会人と同じで事務作業をこなすことで給金を得る、何ら変わらない普通の仕事だ。

だがそれとプラスして冒険者として活動をしないといけない。そう誤解されているのではないかと老齢の男性が言う。


それを聞くと若い男性は納得したかのように頷く。


「なるほど。それはありえる話ですね」

「まぁもちろんそれだけではない。ダンジョンに関することはあまりにも秘匿事項が多すぎて広報を打つのも一苦労だからな」


簡単に言えば、現在の協会には透明度が無い。

冒険者としての活動はダンジョンで成果を得ることだけなので単純。宣伝もしやすい。

だが協会内部の仕事はそうもいかない。

何をどんな風に、一体どんな流れで、どこまで冒険者のサポートをするのか。

外国が日本のダンジョンを狙っている関係も相まって、中々そのあたりを表に出しづらい状態がずっと続いている。

結果、有名だけど不透明な謎の組織といった扱いになってしまっている。

精々魔石の取り扱いを行っている企業というくらいの認識の国民は多いだろう。

一口に協会の仕事と言っても様々なものがあるにも関わらずにだ。


さらに言うと、協会に協力している企業についての情報もあまり公開されていない。

冒険者に貸し出されるレンタル品の数々。あれらがどこから来ているのか考えてみればわかるだろう。

あれらの品はすべて一般企業からの協力により用意が出来ている。

武器や防具の整備。ダンジョン内で活動するための道具。それらを冒険者の数だけ用意する。

協会だけではもはやカバー不可能な程の業務。その為の協力企業だ。

協力企業にはそれなりに見返りもあるため、比較的良い関係を築けているのは幸いか。


だがこれらの企業は情報として公開されていない。

これの理由も先ほどと同じだ。

仕方のないこととは言え、やはり不透明なことに変わりはない。


中には協会と協力しつつ、独自にダンジョンについて動いている企業もある。

その中の一つが七瀬スポーツだ。

そしてそういった企業は自分たちの活動を隠すことは無い。

冒険者にはなりたくないが、ダンジョンには関わりたいといった人たちはそういった企業に集まる。


「聞けば聞くほど嫌になるのですが」

「安心しろ。私も同じ気分だ」


自分が所属している場所が思っていたより世間の受けが悪いと知ると微妙な気持ちになるのは仕方のないことだ。

しかもそれが変え辛いものであれば猶更だろう。


「完全に投げ出してしまえば解決する手段ではあるがな」

「それは・・・無理では?」

「無理だな。そんなこと今したら何が起こるか分からん」

「「・・・ハァ」」


とても重いため息が出ると、二人の男性はどちらともなく本来の業務に戻っていった。


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