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盗賊物語  作者: 平一
第一章 旅立ち編
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第8話 クムラン洞窟の戦い

ここはクムラン洞窟内。ジメジメとした薄暗い空間に松明の炎が明るく広い空間を灯している。そんな洞窟内で任務を遂行するため、アトラと月花は別々に行動していた。そして、松明の灯りを頼りに月花が辺りを気にしながら詮索する。

「アトラのお陰で敵が居ないわね。それに道が複雑じゃなくて助かったわ。これなら早く檻を見つけられそうね」

そう、この洞窟は少し枝分かれしているだけで比較的、単純な構造になっていたのだ。そんな洞窟内を月花は細かく詮索していた。すると最後の枝分かれした道を進もうとした時、暗闇から足音が聞こえ始めた。

「ビタン、ビタン」

その足音を聞き、慌てて暗闇に身を潜めた月下は、目を細めて足音が聞こえる方を凝視し、その姿を見て驚いた。これまで見てきたゴブリンとは明らかに違う大きな身体。それでいて立派な鎧を身に付け、片手には金棒、そして腰には、奇妙な笛をぶら下げていた。

「ダァー!!眠いのに何の騒ぎだ。うるさくて眠れやしねー」

あくびをしながらこちらに歩いてくるゴブリンの姿を見て確信する月花。

「きっとあれがゴブリン達が言ってたボスね……ん?何か腰にぶら下げてるわ……笛?」

するとボスゴブリンが立ち止まり上を向き鼻をクンクンさせ辺りの臭い嗅いだ。

「クンクン、……ん?人間の臭いがするな」

ゴブリンの視線が月花の身を潜めてる方へと向けられた。

「ヤバい、気付かれた……」

臭覚が素晴らしいゴブリンが月花の方に向かって歩き出した。そして覚悟を決める月花。

「ボスだとしたらきっと檻の鍵を持っているわね……ここで倒しとくか」

倒すことを選択した月下は奇襲をするため、闇に身を潜め続け、ギリギリの距離までボスゴブリンを引き付ける。

「……ここだ」

十分に引き付けた月花は、クナイを手に握りそのままボスゴブリンの首めがけ突き刺した。

「ガチィィ~~ン!!!」

「クッッ………しまった!」

「ガシッッ!!!」

見誤って鎧に攻撃してしまった月花の腕を掴んだボスゴブリン。そしてその姿をまじまじと見る。

「子供?……檻の鍵は閉めたのにどうしてここに?」

「ふん!子供で悪かったわね」

腕を捕まれた月花。今度は両足でボスゴブリンの顔に蹴りを入れた。

「ダダダダァーン!!」

「グッ……バッ…」

顔を蹴られたボスゴブリンが怯んだと同時に掴んでいた腕も離した。そしてその隙に、後方に飛んだ月花。ここで両者が間合いを取り睨み合う。

「おい、入り口で騒いでるのは檻から一緒に逃げたお前の仲間か?」

「仲間?違うわ。只の協力者よ。それに私は檻から逃げてないわ。子供達の調査、助けに来たのよ」

クナイを握り、腰を低く構えた月花。しかしその言葉を聞いたボスゴブリンが大声で笑い始めた。

「ガハハハ、子供のお前に何が出来る?お前も捕まえて檻に入れてやる!ガハハハ!!」

片手に持った大きな金棒を高々と上げるボスゴブリン。しかし先に動いたのは月花。

「ビュューーッッ!」

風の如きスピードで、ボスゴブリンとの間合いを詰めると今度は鎧の隙間をクナイで狙った。が、懐に入った月花に向け、高々と上げた金棒を思い切り振り下ろした。

「くらえぇーー!!」

「ブォォォーーーン!」

しかしボスゴブリンの大降りな攻撃は月花にはハッキリと見えていた。

「フッ、遅いわね」

ヒラヒラと攻撃を避ける月花。しかし尚もまだ大振りな攻撃を続けるボスゴブリン。

「フンガァァ~~~!!」

「ここよ!!」

月花はこの一瞬の攻撃を見逃さなかった。紙一重で攻撃を避けると、正面から鎧の隙間を狙い腹にクナイを刺した。

「ズブブッッ!!」

「グゥッ……ハッ…!」

クナイが刺さった鈍い音が聞こえると、ボスゴブリンがよろめいた。確かな手応えを感じる月花。がしかし、ボスゴブリンは倒れなかった。必死の形相で痛みを堪えると、今度は大きな拳を握り締め、物凄い威力のパンチを浴びせる。

「フンガァァーー!!」

「ヤバッ、クナイが抜けない!?」

奥まで刺したクナイが抜けない……避けるタイミングが無くなったしまった月花は慌ててクナイを離し両手でそのパンチをガードする。

「バチィィーーン!!!!」

「メキメキッッ………グッッ……キャァーー!!」

月花の腕の骨がメキメキと悲鳴を上げ、後方まで吹っ飛ばされた。スピードでは負けるが力ならボスゴブリンが勝るのだ。

「クッッ……大丈夫……折れてない……」

吹っ飛ばされた月花は、手の平を握り、腕が折れてないか確認した。そして今度は、両手にクナイを沢山持ち構えた。

「……忍法、影暗殺……」

その言葉を聞いたボスゴブリンは、刺されたクナイを抜き、その傷を押さえながら警戒する。そして警戒されながらも両手に持っているクナイを顔に目掛けて全部投げた。

「シュッシュッシュッ!!!」

「フンガァァーー!!」

「ヴォォーーン!!」

なんと凄い形相のボスゴブリンが大きな金棒でクナイを一振りで全てを叩き落としたのだ。

「カラン、カラン、カラン……」

虚しく地面に落ちるクナイ。そして、視線を月花に向ける……がいない。回りを見渡しても何処にもいない。

「どこ行った?……まさか逃げたわけじゃねーよな」

困惑するボスゴブリン。するとその瞬間、背後から行きなり出てきた月花。そう、投げたクナイに意識させた瞬間、その視界から消え背後に回り、ボスゴブリンの影に身を潜めていたのだ。そして今度は背中を一刺しする。

「ズブッッ……グッハッ!」

口から血を吐くボスゴブリンが遂に膝待つく。そして、手応えを感じた月花が腕の激痛をこらえ、更にクナイを奥に刺しこんだ。

「グググ……」

「クッッ……いい加減倒れなさいよ!!」

流石のボスゴブリンも腹と背中をクナイで深く刺され今にも倒れそうになる。そして、その姿を見て月花がボスゴブリンに問い詰める。

「さぁ~、鍵は?檻はどこ?子供達は何処いるの?」

「クッ…刺されてたんじゃ、痛くて喋れねーよ」

もう勝負が付いたと悟った月花。クナイを背中から抜いた。いや、抜いてしまった。

「これで話しやすくなったでしょ?質問に答えなさいよ」

その言葉を聞いたボスゴブリンは、最後の力を振り絞り金棒を月花に振るった。

「ブォン…」

だが瀕死で、力がまるで入らない。さっきまでの威力、スピードには到底敵わない。なので意図も容易く金棒を避け、後方へと飛んだ月花。しかしボスゴブリンはそれが狙いだったのだ。息を切らしながら険しい表情で立ち上がり月花の方を睨み付ける。

「ハァーハァー、くそッ。子供、しかも娘で侮っていたわい。最初からこれを使えばよかった…ハァー、ハァー……」

そう言うと腰にぶら下げてる笛を手にし口に加えた。

「今さらそんな笛で何が出来……あッッ!?」

その瞬間、村の目撃者の言葉が脳裏に浮ぶ。

「………村の子供達が、笛を吹く、ゴブリンと一緒に森の中に消えていったのじゃ……」

そして、月花の第六感が感じる。これはヤバイと、あの笛には何かあると……そう感じた月花は慌ててボスゴブリンに迫る……が、時既に遅し…

「ピュロォォ~ピロォォ~~」

「やば……い……」

奇妙な音を奏でるボスゴブリン。そして、それを聴いてしまった月花は、まるで力が抜けるかのようにその場で立ち止まってしまった。なんと、笛の音に魅了されてしまったのだった。

「ガハハハ!次いでだ!入口で騒いでいる協力者もそのまま檻に叩き込んでやる。ガハハハ!」

「ピュロォォ~ピュロォォ~」

こうして二人の決着がつき、笛を吹きながら前を月花に歩かせ、ボスゴブリンは入口に向かうのであった。

………場所が変わりアトラ………

ゴブリン達に回りを取り囲まれたアトラは不適な笑みを浮かべていた。

「……皆殺しだ……」

刀を構えながらボソッと小さく呟く。

「一斉に飛びかかれぇぇーー!!」

一匹のゴブリンの合図で複数のゴブリンがアトラに飛び掛かった。

「ケッケッケ!くたばれぇぇ~~!!」

しかしその瞬間……刀を横にして物凄い速さで身体を回転させたアトラ。

「必殺……竜盗巻!!」

「クルクル……ブゥゥゥ~~~ン!!!」

するとアトラを軸にし、刃で出来た竜巻が物凄い勢いで吹き上がった。

「ブゥォォォーーーーン!!!」

飛び掛かったっている途中の出来事で回避が出来ないゴブリン達……無防備のままその凄まじい威力の竜巻の餌食になる。

「ギャャャーーーー!!………」

刃の竜巻に切り刻まれバラバラになるゴブリン達。あっという間に、残るは命令を下していたゴブリンただ一匹になった。そして、仲間が一瞬でバラバラになり、恐怖で怯えるゴブリンが声を震わせる。

「な……何なんだ……お前は?」

「………」

「無視するな!!くそがァァーー!!」

その恐怖、怯えを怒りに変えたゴブリンがこん棒を握り締め、アトラの方に走り出した。…が、走り出した瞬間アトラが魔法クロノスで時を止め、ゆっくりゴブリンに歩き近づく。

「はぁ~、もういいや……魔法を使わなくても勝てるって分かったから……」

そして、目の前に立ち草薙を高々と上げ、振り下ろし、時を動かした。

「ズバァァーー!!」

「ドサッッ!」

真っ二つになるゴブリン。そして周りの死体を見渡し、上を向くアトラ。その表情は先程までの薄気味悪い笑顔ではなかった……すると背後から気配を感じたアトラが後ろを振り向いた。

「ん?あっ月花!?おーい!!……ん??」

月花を呼ぶと同時に、いつもとは様子が違う事に気づいたアトラ。そして、月花の後ろから笛を吹きながら歩いてくる大きなゴブリンの姿を確認した。

「ピュュロォォーーロン」

笛を吹き続けるボスゴブリン。そして、刀を構えるアトラ。

「ピュュロォォーーロン……ん??」

「………ん??」

お互いが?になる。ボスゴブリンは何故、構えを解かないのか?一方のアトラはこいつは何をしているのか?と……

「小僧……何故笛が効かない?」

「………」

そう、アトラは先程の戦いでゴブリン達のうるさい罵声を聞き、嫌になって耳に破いた布を入れていた。なので全然笛の音が聴こえていなかったのだ。そんな事を知るはずもないボスゴブリンは月花に命令する。

「効かないなら……やれ!小娘!!」

命令され無表情の月花はクナイを手にし、物凄いスピードでアトラに襲いかかった。

「えッッ!!?」

何故自分に攻撃をして来るのか分からないアトラは、驚きながらも月花の攻撃を受け止めた。

「キィィィーーーーン!!!」

草薙とクナイが激しくぶつかり合い甲高い音をたてた。

「月花!?どうしたの?何故??」

「………」

アトラの言葉が届かない月花が、更に素早い猛攻を仕掛ける……がアトラもその猛攻を凌ぎ続ける。

「キィィーーン、キィィーーン!!」

そして、月花を傷付ける訳にはいかないアトラは防戦一方になる。するとここで、アトラも月花の言葉を思い出した。

「ゴブリンが笛を吹きながら子供達と一緒に森の中……」

「笛!?……まさか……あれか!?」

アトラは気付いたのだ。直ぐ様魔法クロノスを発動させる。

「クロノス……止まれ!!」

アトラの周りの全てが静止する。そして、ボスゴブリンに近づき草薙を振り下ろした。

「……こんなものォォ~~~!!」

「ズバァァーーー!パリィィーーーーン!!」

ボスゴブリンと笛が真っ二つになり時を動かすアトラ。

「クロノス……動き出せ……」

「ドサッッ!!」

時を動かした瞬間、後方から月花の倒れる音が聞こえたので慌てて駆け寄るアトラ。そこにはまるで寝ているかのような顔で仰向けで倒れている月花がいた。

「ね~起きて!!月花ッッ!!ね~!!!」

するとアトラの必死な呼び掛けに月花の意識が戻った。

「んッん~~……アトラ……ん??あれッッ?どうして私は倒れているの?」

しかしアトラは、この問いに答えられなかった。何故ならまだ布が耳に詰まっていたからだ。口をパクパクさせ月花の言葉が全く聞こえないアトラ。

「ん??どうしたの?……あっ!?」

ここでようやく、布の存在に気付きいたアトラが慌てて布を取る。

「ご、ごめん……全然聞こえなかった。で?何を言ったの??」

「はぁ~…全く…私は何故…倒れているの??」

月花の問いに安堵したアトラは詳細を詳しく説明した。

「…そう……笛に操られてたんだ……ありがとう…助かったわ、アトラ」

まだ辿々しく喋る月花……すると……

「ズサッッ。ズサッッ」

後方から何者かが近付いてくる足音が聞こえ、二人でその方向を振り向き凝視する。

「ケッケッケ!!」

なんとそこには鎧を着たゴブリンの姿があった。

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