8話
ここまでありがとう。
今日は終業式だというのに遅刻しそうになっていた。
それはとても長い夢を見ていた気がしてベッドでしばらく惚けているといつも家を出る時間を過ぎてしまっていた。
「そっか…行かなきゃ」
玄関を出るとジリジリと照りつける日差しが眩しく目を伏せ1人通学路を歩き始めた。
通学路には登校を急ぐ生徒すら見受けられないので少々早歩きで行くことにした。
案の定、学校に着いた時には朝のチャイムが鳴っていたのでそこから教室まで走ることになってしまった。
教室に入るとすでにクラスメイト達はみんな揃っており、丁度先生が出欠確認をしているところだった。
「えぇ〜最後に来たのは…青葉か 早く席に座れよ」
「はい」とだけ応え席に着くと先生はなにやら重苦しい雰囲気で話し始めた。
「式の前にみんなに1つ言っておかねばならないことがある。今朝、隣のクラスの堺悠斗という生徒が自室で亡くなっていると担任宛に親御さんから電話で報告を受けたみたいだ。まだ遺書などは見つかってないらしい。変に噂になる前にみんなに伝えておく。くれぐれも内密に頼むな」
先生がそう言い終わると有無を言わさず終業式のため廊下に整列しろと先生が言うので、驚きはしたが皆口々に「可哀想に」「明日から楽しいことが待っているのにねぇ」「暑さでやられちゃったのかな」などと他人事のように話しながら廊下に歩いていった。
実際、まだ1年の夏休みの時期なので隣のクラスの人のことなどみんなほとんど知らないと思うので仕方がないと思う。
「青葉、今言っていた隣のクラスのやつのこと知っているか?」
廊下に並ぶというのに廊下の方の席からわざわざ窓際の私の席まで歩いてきて後ろからそう話かけてきたので私は振り返り、
「そうだねぇ。例えるならセミの一生と同じぐらいかしら。それぐらいの付き合いはあったよ」
と答えると、
「よくわかんないけどそんなに関わりはなかったってことか?」
確かにセミというのは地上で鳴いている期間は短く、ほとんどを土の中で過ごすので表面的には一瞬の命にも見えるだろう。
でも、実際には他の昆虫よりも途方もなく長生きなのである。
ただ、土の中にいる間はみんなには見ないから知らないだけで。
「杜野くんはそう思ったのね。私はむしろ長すぎるくらいに思うよ」
私はそう答えると不思議そうな顔をしている彼から目をはずし窓の外を見た。
燦々とグランド照りつける太陽の光と、木から木へと飛んでいくセミが目に入る。
地上へと出てきたセミは殻を破り空へと羽ばたいていく。
残された空蝉もこれまで生きてきた証であり、そこから新たに生まれた証でもある。
こうして夏空の下鳴いている多くの声もまたそれを示し続ける。
この声を聴くとあの人へ向けた沢山の想いが呼び起こされる。
「ありがとう…本当にごめんなさい」
そう呟いて、ないてしまいそうなのを何とか堪えた私は廊下へと向かった。
まずは感謝を。
処女作であるこの話を読んで頂いたあなたにここよろより感謝をします。ありがとうございます。
少し中身に触れると
主人公の思いをヒロインが受け継ぐ〜 的な話好きなんですよね。ギ〇ティクラ〇ンとか好き嫌い分かれると思うんですけど私は好きです。(あれは2期部分の前半が問題あるけど) あとは主人公が死んだらちょっといい感じの話になりません?なりませんか。そうですよね、実際この話がそうじゃない気もしますし。
ひとまずこの話はこれで終わりなので、気が向いたら新しい話を何か書こうと思いますのでお見知り置きを。
それでは、またね。