2話
起きてからしばらくしても理解が追いつかなった。しかし実際には、朝に見た流星群のニュースも朝ご飯のメニューもこの前と同じだった。
1度体験した7月18日と全く同じことを繰り返しているとしか思えなかった。
信じられないが現実であるとそう認識せざるを得ない状況に立たされていた。
そこで1つ確認したいことを思いついたので急いで学校へ行く準備をして家を飛び出した。
いつも歩いている通学路も特に変わった様子はなくその道を僕は走っていた。
朝でも日差しは強く照りつけ汗でYシャツが張り付いて気持ち悪いがそんなことは気にしていられなかった。
(お願い 全てこの前と同じなら…)
心の中でそんなことを思いながら最近は、結衣の家に寄って2人で登校しているのだが前回の7月18日もやはり2人で登校したのだ。
今日は家を出るのも早かったし、走って結衣の家まで来たのでいつもより明らかに来る時間が早いのだがそんなことは頭になかった。
家に着くなりいつもの様にインターホンを鳴らした。
しかし、しばらく経っても返事がなかった。いつもはすぐに結衣のお母さんがインターホンに出てくれるのだが今日はそれがなかった。
「まだ早かったか」と思いつつも僕は今にもその場で待とうか先に学校へ向かっていようか迷っていると背中の方でドアが開いた。
「あ、ごめんね! 今日お母さん仕事が早かったみたいなの。でも悠くんも今日早くない?女の子は準備とかあるから連絡してよね〜」
そんな風にまくし立てるように文句を言いながら結衣が飛び出してきた。確かにそこには1度死んでしまったはずの結衣がいた。
「どうしたの?そんな泣きそうな顔して 」
昨日聞かなかっただけなのにとても懐かしくなるような声。
「ねぇ~どうしたの?そんなに私に会えて嬉しい?」
もう聞かなくなると思っていた声に僕は玄関先にも関わらず抱きつきに行ってしまった。
「もう会えないかと思っていたからさ…」
「ちょっと…もう何バカなこと言っているの? 急にいなくなったりしないよ」
彼女の温もりとその言葉にいまは縋っていたい気持ちであった。
登校中も隣に居てくれている結衣のことを考えると泣きそうになるので期末テストの話や昨日のテレビのことなどを話して平静を装おうとしていた。
学校に着いてからも周りのクラスメイトも今日が2回目の7月18日だということに気づいている人は居ない様子であった。
学校に着いたら結衣は女子の友達の方に行ってしまい、僕の方も学校では遼太郎といることが多いのだが昼休みはいつも通り2人で昼ごはんを食べることにした。
そんな最近の当たり前も結衣がいないと満ち足りないものになってしまう未来なんて僕には耐えられないと1度失った今だからそう思えた。
帰りの会も終わり下校の時間になるとその日は結衣に、「私、先生のとこ行かなきゃ行けないから先に帰っていいよ」と言われたが今は少しでも長く一緒にいたい気持ちだったので、
「いや、待っているよ。放課後どっか寄り道して行かない?」と勇気をだしたその言葉には様々な感情が綯い交ぜとなっていた。突然のことに結衣も目を丸くしつつも、
「え、それは…で、デートってこと?杜野君は大丈夫なの?」
「…その練習みたいな?遼太郎は今日部活あるからってもう行ったよ」
「なにそれ~ いいけど本番はいつあるのよ」
「夏休み…夏休みになったら必ず」
「そうだね、そろそろ夏休みになるしね」
勇気を出したかいもありなんとか放課後遊べることになったが、何をしようか考えていなかったので結衣を教室で待っている間計画を練ることにした。
それからはとりあえず2人で街の方まで行って普通のカップルがやるようなことを真似しようと思い、欲しいものはないけど色んなお店に入ったり、行きなれていないような喫茶店に入ってみたりしてみたがぎこちない気もしてしまった。
かといって、結衣を家まで送り届けるのに2人で歩いている時も自然体で話せてはいるのであと少しな気もしていた。
こうして2人で歩いているだけで安心出来る関係性は嬉しいものである。
そんなことを考えて隣を見ると丁度目があってしまい、少し気恥しい空気になってしまうと結衣が気を使ってなのか、
「はぁ…つかれた~ 結構遊んだね。もう夕方だねぇ。ヒグラシも鳴いているもん」と、話をふってくれた。
「うん…練習でこれじゃダメだね」
「ごめんね、私も初めてだったから。でもすごいデートっぽかったからこれが初デートだよ」
2人とも何を話していいかわからなくなりと緊張し続けていた状態であったが、今はまだそれでもいいと思った。
恋人とは急になれるものではなく時間をかけてなれるのだと思うから焦る必要はないはずだ。
夕方ともなれば辺りが暗くなってちらほらとサラリーマンの人もいるのでしっかり結衣を家まで送り届け、1人での帰り道に僕は今日のデートの反省をしながら帰った。