カードゲームなら任せな!
舌打ちを一つし、そいつは手を差し伸べ返した。
その手の平に、ぼんやりとした光と共にカードが浮かぶ。
デッキ以外も収納しているようで、思ったより枚数が多い。
それを受け取り確認すると、必要なカードは足りていた。
自分ではわからなかったが、きっと笑いが漏れてたんだろうな。
だからこう言われたんだろう。
「気持ち悪い笑い方だな」
カチンときた。
もう、こんな奴助ける必要ないんじゃねえか? と思ったね。
けど、ここで何もせず帰ったらこいつに見下されて終わる。
ああ、やっぱり役立たずだったのか、と。
無能に無能と思われて堪るか!
ここは絶対引き下がれない。
だが、オレのこの気持ちのやり場も必要だ。
この書き捨てをご覧のどこぞの通りすがりの方々は、何下らねえことに固執してんだ! とお思いだろう。
断じて言おう。オレには怒りのぶつけ先が必要だ、と。
お忘れだろうか? オレは短気だ。
沸点は零度だ。知らんけど。
なので誰が何と言おうと、怒りのぶん投げ先が必要なわけだ。
もう一度言おう。
オレにとっては重大なことだ!
よって、オレは手始めにこう言い返した。
「不敵な笑みと言え。強者の風格がわからないのかよ? だからお前は落ちこぼれなんだ!」
「偉そうなことは結果出してから言うべきだな」
「はい出た! 何も言い返せなくなった奴が最後に絶対言うセリフ! それ言っとけば自分はわかってますオーラ出せて勝った気分になれるやつ! 残念だけど、それ誰でも言えまーす!」
「何だと!?」
詰め寄ろうとするそいつを、オレは右手で制した。
で、言ってやった。
「結果なら出してやるよ。まあ、見てなって」
そしたらこう返ってきた。
「お前の世界では、それをドヤ顔と呼ぶそうだな。腹立たしいからやめろ」
オレはすかさず親指を立て、歯を見せてニッと笑ってやった。
余程イラっときたのだろう。
そいつは右手を握り締めた。
プチ復讐が済んだところで、オレはデッキ作りを開始した。
慣れてることもあり、数分で完成したと思う。
なのにそいつはデッキを渡されるなりこう言った。
「遅い」
「どこがだよ! お前、普段もっと時間かかってんだろ? どうせ」
「私はカードゲームの知識がないからな。お前は自分で得意だと言った割には大したことないな」
「何だと!?」
反射的に伸ばしたオレの手は、残念ながら軽々と受け止められてしまった。
そしてそのまま引っ張られ、体勢が崩れたところを思いっきり突き飛ばされた。
痛みと悔しさの中、立ち上がったオレの目に映ったのは嫌味な笑顔。
この世で一番ムカつくその顔で、そいつはこう言ったんだ。
「まあ、信用して使ってやるよ、このデッキ。ここからは私の役目だから帰っていいぞ。ご苦労だったな」
何と表現したらいいのだろう?
このまっすぐな思いを。
オレは純粋な思いに満ちていた。
邪念って言葉、よく聞くだろう?
その時のオレは、そんなもの一切入り込む余地がなかったという自信があるね。
無垢な心って呼べばいいのかな?
とにかく、清々しい気持ちでいっぱいだった。
その思いを乗せて、オレは叫んだ。
今一番、その思いを伝えたい相手に向かって……。
「デッキ返せよ! このバカヤロウ! お前なんて神様の足引っ張ってるだけの無能だバーカ! バーカバーカ!」
そいつは振り返り、オレを睨んだ。
オレは負けじと舌を出してやった。
が、そいつは鼻で笑い、オレに背を向けた。
思い出すだけで暴言を吐き散らしそうになったので、清らかな心と共にキレイな言葉遣いを選びます。
ドラゴンではなくこいつをぶっ倒したいと思いました。