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何その不便な縛り?

 自慢じゃないが、オレは短気だ。

 最初の時点でオレはキレてた。

 けどまあ、言ってもわかんねえ奴特有のオーラを読み取るのは得意だ。

 確信したね、こいつはドの付く程のバカだって。

 だから、バカにもわかるように丁寧に聞いてやったんだ。


「あのさ、勝手にがっかりしてるところ悪いんだけど、オレこの世界に来たばかりで何もわかんないんだよね。軽く説明してくれないか?」


 敬語を使う気にはなれなかった。

 許してほしい。だってキレてたんだもの。

 これでも感情を抑えた方だ。

 オレは充分に努力した。

 なのに、何て返ってきたと思う?


「神から説明を受けてないのか? それなら、その必要はないと判断なされたのであろう。ゆえに、お前に説明する義務など私には存在しない」

「いやいや、オレはその神様からお前を助けてやってほしいって言われたんだけど」

「なら、勝手に助ければいい。迷惑だけはかけるなよ」

「何だその態度!」

「嫌なら帰れ」


 嫌なら帰れときたもんだ。

 先にも書いた通り、オレは短気だ。

 当然、次にどうするか賢明な方々ならおわかりだと思う。

 気付いたら手が出てて、見事に受け止められ、そして引き倒されてマウントを取られたわけだ。

 で、こう言いやがった。


「貴様! わかっているのか!? 私に危害を加えようと目論もくろむことは、神にあだなすのと同義だぞ!?」

「ああん? お前なんて、本当に神の役に立ってんのかよ? オレは神じゃなくお前にキレてんだよ! ちょっと頭冷やしてやった方が神も助かるぜ、きっと。お前みたいな無能抱えて、さぞかし神も大変だろうな!」

「んぐっ!?」

「……?」


 余程痛いところを突かれたらしく、そいつはオレから離れ地面とにらめっこを始めた。

 この数分でこいつがどれ程までに面倒な奴なのか、よーく理解できた。

 たぶん、オレは溜息ためいきいたと思う。おぼえてないけど。

 で、らちが明かないから再び問いかけた。


「あのさ、話が進まねえんだわ。オレの言うことを聞きたくねえのはよくわかったから、神の命令だと思って聞いてくれや」

「お前は神ではない」

「だからそういう意味じゃねえっつの。神が説明しなかったのは、きっとお前から説明しろってことじゃねーの? お前、そこまで言われねえと神の気持ちわかんねえの?」

「……お前に何がわかる」

「わかるわ。つーか大体の人間わかるわ。暗黙の了解ってやつ。助けてやってほしいってことは、そいつの話を聞いてやれってことだろ? 話せよ」


 ここまでして頼んで、ようやくそいつは腰を上げた。

 溜息ためいきと共に、いかにも渋々(しぶしぶ)って感じでな。

 そして、その辺にいた無害そうな小鳥に向かって、不意に手の平をかざすとこう言ったんだ。


「ターゲット、ロックオン。バトル開始!」


 宣言した直後、そいつは白い光をまとった。

 ドヤ顔で。

 その光は一瞬で手に集結し、カードになった。

 カードは手の平の数センチ先に浮いており、そのカードを小鳥に向け、そいつはドヤ顔でこう唱えた。


「ライト!」


 途端とたんにカードが消え去り、代わりにその位置からビームが放たれた。

 あわれ、ターゲットにされた何の罪もない小鳥に命中。

 倒れたその小鳥はカードとなって奴へと吸収された。

 一連の動作の後、振り向くそいつ。

 いい加減ドヤ顔やめろ。

 とまあ、こんな感じで最高のパフォーマンスを見せてもらったオレはこう言った。


「たかが小鳥に何やってんだよ。かわいそうに……」

「たかが小鳥ではない。今のは狩りの対象、魔法生物だ」

「さっきのが? 特に害とかなさそうだったけど、人を襲ったりするのか?」

「いいや。だが、魔法の存在は必ず人類に悪影響をもたらす。神はそうお考えだ」

「勝手なもんだな、自分で作ったんだろうに」

「何だと!? 神を愚弄ぐろうする気か!」

「待て待て! まだ事情がわかんねえからだ! 全部話せって!」


 再びつかみかかろうとするそいつを必死になだめた。

 数秒間だけにらまれたが、すぐに視線がれ、詰め寄ってくる気配もない。

 なんとか怒りがおさまったらしい。

 なので、オレは質問を再開した。


「さっき使ったのって魔法か?」

「……まあ、そんなところだ。通常の魔術師と違って、戦う際にターゲットを指定しなければならぬがな」

「指定しなかったら、どうなるんだ?」

「何一つとして能力を駆使くしできない」

「はあ? 何その不便な縛り? 何でそんな面倒な仕組みしてんの?」

「これは神が私たちに与えたかせだ。裏切者が出た際に、すぐに始末できるように。あえて力を制限しておく必要がある。そのためだ」

「信用されてないんだな、お前」


 そう言った途端とたん、またそいつはいじけだした。

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