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出会いは最悪

 今日またアイツはオレに言った。

 元の世界に帰れ、と。

 聞き飽きたお決まりのセリフ。

 いつも上から物を言う。

 そのくせ未熟で助けが必要なんだとさ。

 なのに礼の一言も言われたことがない。

 それどころか責任転嫁しだす始末。

 助けを頼んだ覚えはない。神が使いとしてオレを寄越しただけだ、と。


 いい加減腹が立ったので、ほんの仕返しにこれまでの不満を書き連ねることにした。

 誰かの目にまってくれれば嬉しい。

 が、そうじゃなくても吐き出せればそれでいい。


 ――思えばあれが始まりだった。

 オレが元いた世界には、魔法なんてものはなかった。

 いや、空想の産物としてなら存在した。

 つまりは夢物語だ。

 あるのは科学技術だけ。


 そこでオレはプロゲーマーをしていたのだが、正直どのゲームにも飽き飽きしていた。

 当然それは見抜かれる。

 ファンやらスポンサーやらチームメイトやらアンチやらに……。

 で、やめときゃよかったものを……大会が終わって疲れている時にわざわざメールを開いたんだ。

 まあ、言うまでもなく批判が殺到していた。

 その内のいくつかを読んで気が滅入めいってベッドへと倒れ込んだ。

 この時、すぐに携帯を閉じて寝なかったのがきっと敗因だろう。


 ぼんやりとながめていた画面に、ふと一通のメールが届いた。

 アドレスを見ると、登録した覚えもないのに神様と表示されている。

 怪しいと思って削除するのが正解だったのだろう。

 オレは興味本位でそのメールを開いてしまったんだ……。

 そこには、オレの本名と共にこう書いてあった。


「異世界に来てみませんか? あなたの助けが必要です。もしご了承いただける場合、そのむねを声に出してください。返信は不要です」


 いかにも怪しい。

 しかも非公開にしている本名をさらっと当てている。

 恥ずかしいので伏せさせてもらうが、オレの本名はとても奇妙でふざけたものだ。

 名付けた親をうらむ程の。

 こんな珍妙な名前を、適当に書いて偶然当てられるはずがない。

 その事実はオレに、このメールの差出人が本物の神様だと信じさせるに足りた。


 冷静な諸君は思うだろう。

 だからと言って、その話に乗るバカがどこにいるのかと。

 全くその通りだ。

 その通りなのだが……あの時のオレは口にしてしまった。

 結果、どんな奴と組まされるのかも知らずに、どうせ飽き飽きしていたからという短絡的な思いで……。


是非ぜひお願いします」


 次の瞬間、オレは見知らぬ土地に来ていた。

 遠くに飛ぶ竜やペガサス。

 遠くにそびえる城。

 その時の興奮は今でも覚えている。

 いい気分だけでいられたのは、まさしくこの瞬間まで。

 濃紺のローブを着たギザギザ髪の男が不意に目の前に現れこう言った。


「お前が神の使いか。……にしては魔力を感じない。そうか、神は私を不要と判断なされたのか……」


 初対面でこの物言い。

 今思い返してみても、やっぱりこいつが全面的に悪い。

 いきなりお前呼ばわり。

 しかも勝手にがっかりしやがって。

 その時の奴の動作は今でもしっかり覚えている。

 ぽかんと口を開けて嘆き、ひざから崩れ落ちたかと思うと苦虫を嚙み潰したような顔で地面を殴りつけた。

 これが相棒(などと呼びたくはないが)との出会いだった。

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