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NSSO《国家特別秘密組織》  作者: まっふん
腹喰い事件2章
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腹喰い事件25

「さっさと話しかけろよ…これじゃあ、俺たちが犯罪者扱いにされてしまうぞ…」


「あいつの頼みを聞いたって分かった時の顔が想像できて腹が立つんだよ!」


翌朝、トミーとケイトは勤務先に向かうイザベラの後をつけてながら、小声で言い争いをしていた。朝の通勤時間なので、大通りは人で混み合っており、気を抜いてしまえばイザベラを見失いそうになる。


「おい、いなくなったぞ。あそこらへんで曲がったか?」


ケイトが慌てて小走りでイザベラが消えたあたりの路地に向かって入って行き、トミーも慌てて後に続いた。


「はぁあ、お前、早く話しかけないから見失ったじゃねぇか!」


「朝から二人とも何のつもり?」


いつの間にかトミーとケイトの後ろに立っていたイザベラが苛立ちを含んだ口調で腕組みをして立っていた。


「うわっ!お前のことを探してたんだぞ!お前が求めていた死体が…っぐ⁉いたっ」


「大声で騒ぐなよ、どこで聞かれているかわからないんだぞ!ともかくトミーの言っている通りだ。東エリアの人影が無い路地に捨てられていた。腹の傷も確認した。」


「死後何日ぐらい?」


「分かるかよんなもん。まだ虫がそこまで湧いていなかったから、放棄されてから1、2日だろ。」


「二人ともよく見つけたね、ありがとう。その遺体は住民に見つかると思う?」


「微妙だな。そこを人を通ることはまず無いだろう。ちなみに俺たちが移動させるとかそんなことは言わないよな?」


「当たり前でしょう。少年の遺体と同じ状況のものが新たに見つかったと騒ぎになれば、警察への信頼度は更に落ちる。あえて住民に伝えることで警察の信用を落とす方法もあるけど…流石にそれはしないよ。」


トミーとケイトが凄い顔でイザベラを見るので、イザベラは慌てて付け足した。


「住民や警察が事件を知っているのに、犯人は同じ犯罪を繰り返した…警察は既になめられているってことね。二人に遺体を発見されたのは予想外だったのかもしれないし、わざとかもしれないし…」


「俺たちに不満があるのかよ。」


「無い…そろそろ冤罪が起きるかもしれない。警察が考えている犯罪者象と二人はかけ離れているから心配はないけど、犯罪に巻き込まれないようにね。」


「既に巻き込まれているけどな…ともかく東エリアでも何か事件に関係ありそうな話がないか探ってみるよ。」


「ありがとう、助かる。私も気になる点がいくつか出てきたから漁ってみる。また、何かあったら遠慮せずに話しかけていいから。」


イザベラはそう言って前々から二人がイザベラにどう話しかけるか争っていたのを知っているかのような表情をし、口の端を吊り上げた。


「チッ。その顔が腹立つんだよ…分かったよ、お前も気をつけろ。」


そう言ってケイトとトミーは手をひらひらと振って、イザベラに背を向けて路地の奥に向かって歩いて行った。


「…やるじゃん。」


イザベラは小声でつぶやくと、警察署の方に再び歩き始めた。



「アラン部長!!大変です!東エリアで第一被害者と同じ状態の子供が発見されました…!」


「なにっ!?」


突然、息を切らして飛び込んできた警察官の知らせを聞いて、アランを始め、ナルシッサとステラは椅子から飛び上がった。


「これはまずい…非常にまずいぞ…ともかく!周囲の住民に知られないように厳戒態勢で…」


「残念ですが…もう住民には知れ渡っています。もうすぐスラムの住民による暴動が起こる可能性もあります。」


「クソッ、忌々しい奴め…とにかく!犯行現場に行くぞ!ティモシー、ガルシア!付いてくるんだ!」


アランは荒々しく命令すると、コートを引っかけて飛び出していった。


「ステラ、今すぐレオナルド刑事局長の所に行って、NSSOの安全を保証させろ。暴動が起きたら、怪我人が出る。」


「分かりました!」


ステラはそういうと、部屋を飛び出していった。


凶悪事件対策部の部屋で事務作業をしていたイザベラは廊下を走り回る音が突然、大きくなったことに違和感を覚え、外の情報を手に入れようと少しドアを開けた。


「遺体が遺棄されていた場所はもう…」

「はぁ、また新聞社が押し寄せてくるぞ…」

「正面玄関は閉めておいた方が得策かもな。」


イザベラはすぐさま、ケイトとトミーが今朝伝えた遺体のことだと察した。二人が言うには遺体は人目に付かないところにあった…住民が気付いたということは誰かが遺体を目立つように移動させたのだろう。それは間違いなく犯人だ。


「(隠していた遺体を何故、わざわざ…まさかケイトとトミーが探しているのがバレた?それならあの二人になにか…。)」


イザベラは二人の身を案じたが、今の自分にはどうしようもないことを思い出し、アラン部長がいない間に資料室でローリー・アローに関する資料を探すことにした。



「すみません。アローで探してほしいのですが。」


「アロー?ちょっと待ちな……あー、何人かいるが、下の名前は?」


資料室に行ったイザベラは犯罪歴や職員の経歴がファイルに閉じられているコーナーの受付にいた。


「ローリー、又はローレンスで無いですか?」


「無いね。っていうか、俺、どこかで君を見たことがある気がするな。名前は?」


「……チャン。」


「ああ、チャンか!先週、あんたの資料を借りに来た人が二人もいたから印象に残っていたんだ。」


「私の資料を借りに?誰?」


「そんなの言えるわけないだろ。守秘義務だ、守秘義務。」


「じゃあ、何でわざわざ言うのさ…」


「変わった名前の上に、犯罪者でもないのに週に二回も貸し出されるからだよ。」


「じゃあ、私の資料見せて。」


「ちょっと待ってな、もう場所はバッチリだ。」


受付の警官はそういうと、迷うことなくイザベラの資料を持ってきた。イザベラはパラパラと自身の資料をめくると、何の変化もないことを確認し、返却した。


「もういいのか?」


「何も変わっていなかったからね。じゃあ、失礼するよ。」


イザベラは4階の資料室を出ると、もっと過去の警察の資料から探そうと考え、地下室に向かった。



「ああ、分かっている。君が心配しなくとも、住民の暴動はすぐに収まるだろう。たかがスラム街で死体が出ただけだ。なぜ、こんなにも大騒ぎする必要がある?」


「お言葉ですが、たかがと…」


「スラム街に住む者のほとんどは住民票を出していない。つまり、書類上ではチェストラ国民ではないということだ。長年、この国に住んでいる上に他の住民からの評価があるからこそ、我々警察は今回の事件の捜査を進めているが、新聞社の告発が無ければあの事件から我々も君たちNSSOも危険に晒されることはなかった。」


レオナルド刑事局長の淡々とした口調にステラは怒りを覚え、拳を固く握った。ステラはスラム出身ではないため、レオナルドの住民票がある市民と無い市民を同じように扱わなければならないという考えに頷ける部分はあった…昔までは。NSSOに入ってスラムへのイメージが180度変わり、チェストラのスラムがここまで拡大し、格差が広がってしまったのは各々の家を持てる人たちにも責任があるということをステラは理解していた。NSSOのメンバーとの絆が深くなったことで、スラム街の人々の誰しもが暴力的で危険ではないことを知っているからこそ、ステラは腹を立てているのだ。


「…それで私たちの安全は保証してくれると?」


「心配せずとも君たちは現場に行く必要はないように手筈を整えている。正当防衛であれ、誰も殺してはならないのがNSSOの信念なんだろう。その信念を守れるよう協力するのが私の役目だ。」


「分かりました。失礼します。」


レオナルドの言葉の裏に含まれたNSSOは役に立たないをくみ取ったステラは一刻も早く立ち去るために怒りを抑え、部屋を出た。緊張と怒りで息をすることも忘れていたステラは扉を閉めた瞬間、大きなため息をついた。


「(はぁ…上があんな状態なら有耶無耶にされるのも時間の問題だな…)」


沈んだ気持ちで階段を下りていたステラの目の前に資料室から出てきたイザベラが現れた。


「イザベラじゃん。」


「えっ、あぁ、ステラか。二つ目の遺体が見つかったって聞いた。また警察の信頼が失われたよ。」


「さっきレオナルド刑事局長と話をしていたの。信念を守るためならばNSSOは関与しなくていいって。遠回しに役に立たないなら何もするなって言っているのと同じよね。イザベラは何をしてたの?」


「ちょっと調べものをね。役に立たないなら関与しなくていい…か…。今回の事件にNSSOが必要かどうか100人中100人が無いとは答えないと思う。二つ目の遺体についてなんだけど、犯人が動かした説がある。」


イザベラは声を潜めると、ステラに近づいた。


「どういうこと?」


「私の古いツテに第一の被害者と同じような遺体を探すように頼んでいて、今朝遺体を見つけたと聞いたところなんだ。ツテは昨日見つけて、しかも人目のつかない所にあったらしい。だから、住民が偶然発見するのはおかしいでしょう?」


「衝動に駆られての殺害ではない…つまり薬による興奮作用というアランの考えは誤っているってことね。」


「そういうこと。これは勿論、二人だけの話よ。また家でね。」


イザベラはそういうと足早に階段を駆け下りていった。



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