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NSSO《国家特別秘密組織》  作者: まっふん
腹喰い事件2章
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腹喰い事件22

自宅謹慎が終わった水曜日、イザベラはNSSOとしてではなく、凶悪事件対策部の一員として事務作業に追われていた。ちらりと時計に目をやると、時刻は15時。そろそろ記者会見も終わって疲れ切ったアラン部長が帰ってくる時間だ。


「はぁ…何故、私が記者会見などしなければならなかったんだ…イーグル社の奴らは嫌いだ。ティモシー、すまないがコーヒーを持ってきてくれないか。アヘン捜査の撤収作業も今日中に進めなければ、新聞社の奴らが我々の捜査員に詰め寄ってくるかもしれない。」


イザベラの読み通り、疲れ切った顔のアランとティモシーが部屋に帰って来た。


「(アヘン調査をすぐ終わらせるとは…やっぱり捜査が進んでいると見せかけたかっただけなのか。)」


2人の会話を盗み聞きしたイザベラは立ち上がって、ティモシーの後を追いかけた。


「ブルームさん、お疲れ様です。さっき聞こえたんですけど、アヘン捜査をもう終わらせるのですか?」


「チャンさん。あまり大声で話していると、勤務部屋を変えられますよ。そうです、アヘン捜査は終わりです。近隣住民との争いもありますからね…明確な証拠が見つからなかったのですから、長居するだけ無駄です。」


「アラン部長は記者からの質問になんと答えたのでしょうか?」


「それは明日の新聞を見れば分かることです。」


イザベラの質問にティモシーは珍しく冷たく返した。


「そもそも腹喰い事件の犯人とアヘンを結び付けて、強制捜査に踏み切ったのは誰なんですか?」


「それは…アラン部長とシャンツ副部長でしょう?私はそう聞いていますが…」


アヘン捜査の責任者を問われる質問が来ると思っていなかったティモシーは驚いた顔でイザベラを見つめた。


「刑事局長の可能性は?」


「無きにしも非ず、です…あのエリアでのアヘン強制捜査命令書には部長のサインがありましたが、サインなど誰もが書けますからね…聞いてみます。」


ティモシーは小声でそう言うと、アランに怪しまれぬように足早に戻って行った。



「ただいま~」


「おかえり、イザベラ。」


「あれ、何だか静かだね。」


「ああ、今お客さんが来ているの。クレアのお父さん。」


違和感を感じていたイザベラに出迎えてくれたキーラが答えた。


「クレアのお父さんが!?何で…とりあえず挨拶するよ。」


イザベラが居間に入ると、目の前のソファには上品な微笑みを浮かべて話を聞くジュリーとステラとジェシカが座っていた。そしてその隣のソファにはタクトと同い年ぐらいの男性とクレアがいた。イザベラは彼の前に姿を現す前に姿勢を正した。


「こんばんは、フロントさん。ご無沙汰しております。」


「ああ、チャンさん。こんばんは、娘が世話になっています。」


クレアの父親であるジョン・フロントは、ソファから立ち上がってイザベラと握手を交わした。娘がNSSOに入る前にあったいざこざをイザベラは知っているので、彼はイザベラに会う度にいつも大手鉄鋼会社の社長とは思えない態度をとるのだ。


「いえ、こちらこそいつも助かっています。今日はどういったご用件で?」


「今、世間を騒がしている臓器を奪われた子供の事件についてです。新聞でニュースを知って、臓器に関することで気になる点があったので、参考にならないかと皆さんの様子を知るついでに寄りました。」


「新聞にはNSSOの関与については書かれてはいませんでしたが…」


「ああ、それはブラジエールさんから聞いたからですよ。教育委員会と私の会社で何か社会勉強を出来ないかという会議があった時にお会いしたんですよ。」


ブラジエールとはタクトのことだ。彼は教育庁の一員として働いているため、チェストラの学校事情に深く関わっている。


「なるほど、それでフロントさんが気になる点とは…?」


「人体投資というものが密かに流行っていると以前、知り合いに聞いたことがありまして。まだ未発表の実験を行っている機関に投資をしている実業家が増えているそうです。もし成功すれば、医療は大きく進歩しますから…。」


人体投資という言葉を聞いてイザベラを始め、NSSOのメンバーは動揺した表情を見せた。


「その実験については何もご存じないですか?」


「この投資の話はかなり秘密裏に行われていて、投資額もかなり大きい。つまり…」


「巨額の富を持っている者、権力を持つ者にしか話が回って来ないということですね?」


言い淀んだフロントにエマがすかさず続きを言った。


「ああ、そういうことだ。私に教えてきた知り合いもあまり深くは知らないようだし、深掘りしようとした私に対して、すぐにその話を打ち切った。都合の良い人間にしか投資には参加出来ないようだ。」


「スティリンジットに行った時に医師の1人から、フォニーチャイズという国で他人の臓器を患者の臓器に移すとことを目標とする実験が行われていると聞きました。フロントさんの知り合いはその医師会に投資をしているのでは無いでしょうか?」


「フォニーチャイズ…その国の医療機関に投資しているのか定かでは無いが、その国については私も聞いたことがある。どの国とも外交関係を結ばず、必要最低限の貿易を行い、自給自足の生活を行っている島国だそうだ。私を始め多くの会社がその国に事業投資をしようとしているのだが、必要無いの一点張りで謎が多い…市民でこの国について詳しい者はなかなかいないだろう。」


「初めて聞いた国です。NSSOとして活動する以上、他国の知識は必要のないものでしたから。市民でも詳しくないのは何故…?」


「外交関係のない国には誰も入れないのよ。だから、誰も詳しくない。」


リリーの問いにユリエが答えた。


「他人からの支援には答えないのに、自ら金をくれっておかしな話よね。」


「謎に包まれたフォニーチャイズだが、医療の発達具合だけは有名らしい。いつも最先端の手術方法を編み出し、学会でもよく斬新だと取り上げられている。」


「確かアンダーソン先生も似たようなことを言っていたわ。」


ジュディが小さく呟いた。


「もし今回の事件とフォニーチャイズの人体実験が繋がっていたら、ただの殺人事件では済まされなくなる。私が言うのもあれなんだが、慎重に調査をした方が良い。私ももう一度、人体投資の話を持ち掛けてきた知り合いと接触してみます。」


「フロントさん。以前と仰っていましたが、その話を聞いたのはいつですか?」


「半年近く前かな…その時はそんなもの上手くいかないと思って、何も深く考えていなかったからね。どうかしたかい?」


「もし、フォニーチャイズの実験にチェストラのこの事件が関係していたとすれば、臓器が無い遺体は半年前からあったことになります。何故、今この時にボロが出たのでしょうか…?」


ステラの疑問にメンバーは確かにというような表情をした。


「余程何か差し迫ったものでもあったのかな…?それか少年の動きが予想外だったのか…。」


「でも刑事局長が捜査の方向を変えない限り、下手には動かない。イザベラが何とかしてNSSOが捜査に参加できるようにしてくれたのに…」


ジョーとキーラの呟きを聞きながらイザベラは、一か八かであの謎の男を頼ってみるしかないと思い立った。






予定より大幅に遅れてしまいました…。

次話は3/20予定です。

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