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NSSO《国家特別秘密組織》  作者: まっふん
腹喰い事件1章
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腹喰い事件14


「…で、証言者に連れられて母親と思われる人物の所に行ったけども、見つからなかったということか…。」


3日目の夜、北エリアで母親の探索を続けていた10人と南エリアにいた3人はNSSOの館に戻り、今日の成果を報告していた。


「うん…住んでいるエリアを10人がかりでギリギリまで探していたんだけど、見つからなかった…。幸い、母親と思われる人物が住んでいるエリアの住民は直ぐに引っ越さないタイプだから、明日も探し回るしかなさそうね。」


「あと2日。良い所までは進んでいるね。母親さえ見つかれば、聴取で答えてくれなくてもヒントや矛盾を見つけることが出来るかもしれない。明日は一日中、そっちに時間が割けるから問題ない。」


ローレンスの言葉にジュリーは少し安心したような声でそう言った。


「あと新たに問題が。」


ステラの真剣な顔に他のメンバーは顔を曇らせた。


「凶悪事件対策部長がイザベラが市外調査を行ったことに対して、刑事局長に文句を訴えたらしいの。イザベラは国家特別組織部長にあたるから、勝手に捜査を行うことに問題は無いらしいんだけど、まぁNSSOを快く思っていない2人が結託した訳だから…」


「だから?」


ステラがため息をついたのに対して、フラーが続きを促した。


「刑事局長が警務局長にイザベラが職務怠慢をしたとして、教育部長であるチャーリーに指導したそうよ。警務局長はチャーリーが責任をとって、イザベラにそれ相応の処罰を与えるように命令したそうなの。その処罰が明日、発表されるらしい。」


「え?それってマズいんじゃ…チャーリーというより、警務局長からの命令になるんでしょう?」


ユリエが目を見開いて言った。


「うん。もしかしたら、自宅謹慎かもしれない…そうなったら、私達はこの数日のように暫くイザベラ無しで捜査を進めなければならない。警察署内の部との関係はイザベラがいたからこそ、上手くやってきたわけだから、明後日からはNSSO全体で問題が生じるかもしれない。」


「そんな…でもまだ事前に知れて良かったよ。少しは対策を練ることが出来るものね。」


「うん、私達は今日の昼過ぎにその話を聞いたから、4人の今後の役割分担についてはもう話し終えてる。」


リリーの言葉にエマが返した。


「混乱が続くかもしれないけど…イザベラがいなくてもNSSOは負けないということを証明できるチャンスだと思って頑張ろう。」


ステラの言葉にメンバーは大きく頷いた。



3日目の夜、スティリンジット市内のホテルにて。


「私達が訪れた住所地7軒のうち、4軒がスティリンジット市以外からの住民で2軒は不在。残りの一軒はあまり参考にならなかった。」


「いや、あの家族は何かを隠していた。どう考えても全員の職業と家賃や生活費の割合が合わない。毎月100サンスぐらいのズレが生じている。6人家族で3人が工場で働いている。このあたりの工場の賃金と比較すれば、それぐらいの誤差はある。」


住民票で怪しいと思った家庭を順番に訪問し終えた三人は、ホテルに戻って話していた。


「え?3人分の賃金で家賃とある程度の生活費は払える計算だったけど…」


ジュディの呟きにイザベラは首を横に振った。


「いや、それは雇い主の機嫌が良くて、売り上げも良い場合の話だ。工場長は従業員より良い給料を貰いたいと考えるのが普通だから、毎月の賃金に誤差が生じる。だから、貯金をある程度しておかないと生活に苦しくなるのが普通よ。でも…」


「でも彼らの服は最近買ったような綺麗さだった。機嫌が良かったとしても一気に全員分の上下の服を変えられるのは難しい。」


イザベラの言葉に続けてジェシカが呟いた。


「確かに…もしあの家族がトーマスさんが言っていた人たちなら、スラムから出てきたばかりには見えないね。私達の質問に対してあまり矛盾なく返していたけど、あれはほとんど嘘だったってことかな…」


ジュディは最後に三人が訪れた家の人が収入や引っ越してきた理由、生活費について聞かれても当たり障りなく答えてくれたのを思い出した。


「スラムに住んでいる人が一気に金を手に入れられる理由…窃盗、違反物の売買、殺し屋、運び屋…いくら考えても犯罪になることしか思いつかない。そもそも危険なことが出来るような体格でも性格でも無かった。」


イザベラがそう言って頭を抱えた。


「御婆さんと会った時に話した臓器と大金の関係性…もし、あの家族が越した辺りにチェストラと同じような事件が起きていたら、あの家族の誰かが容疑者になってくる。カマをかけて臓器に関する事件が無いか聞いてみたけど、誰も怪しげな反応を見せてはくれなかった…となると、大金と臓器は無関係か…」


ジェシカも出会った家族との会話を思い出して、そう言った。


「3日頑張ってみても、何も無しか。チェストラで大金を手に入れた人がいない限り、チェストラ全体での事件という予測は外れかな…アラン刑事部長や局長に何か言われるのは間違いない…」


「でも犯人を捕まえるための手掛かりは見つけることが出来た。新たな被害者が現れる前に犯罪を食い止めることが出来るかもしれない。大変かもしれないし、無駄足かもしれないけど、チェストラに戻ってからも大金と臓器の関係性を調べ続けよう。」


ジュディが励ましの言葉に、イザベラとジェシカは顔を上げて微かに微笑んだ。


「そうね、被害者が出た周辺だけを探すような捜査は被害者を増やすだけになるかもしれないし、不規則に遺体が現れた時に対応できないからね。」


「スラム街では一人が噂を流せば、一気に数十人、数百人が噂を耳にすることになる。スラムに住む人にとって、大金を手に入れた時の喜びは隠しきれない。そういう意味ではボロが出るのは時間の問題かもね。」


イザベラはジェシカとジュディの言葉を噛みしめながら、この小さな市外調査には意味があるんだと自分に言い聞かせた。



4日目。チェストラ。


ジリリリリリン!ジリリリリリン!


「っ、んっ、ゲホッ、はい、オーウェンです。」


朝早くの電話の音に慌てて部屋から飛び出してきたジョーは、寝起きの声を咳払いで誤魔化して電話に出た。


「おはようございます、凶悪事件対策部部長秘書のティモシー・ブルームです。朝早くに申し訳ないのですが、問題が起こりまして…」


そう言われてジョーがちらりと時計に目をやると、まだ朝の6時だった。いつもより1時間早い目覚めだ。


「…問題?」



「はぁっ!?まだ公式に発表していないのに、新聞社が臓器の無い少年の遺体がスラムで見つかったって報道した!?」


ティモシーからの電話を切ってから、全員を叩き起こして居間に集めたジョーの言葉にレイが声を荒げた。


「しかも発表したのは警察や政府とよく揉め合うイーグル社よね。一体どうやってその情報を…」


「民衆の考えに近いイーグル社が発表したとなれば、スラム街は今混乱に陥っているはずよ。潜入調査は難解を極めるわね。」


「警察署内の中にイーグル社と繋がっている人がいるのかな?」


「とりあえず!刑事部長かナルシッサさんからの連絡が入り次第、私達の流れが変わることになる。イザベラにも帰ってきてもらわないと。騒ぎが大きくなった今、NSSOと警察署の仲介人的存在でもあるイザベラがいないと連携が取れない。」


口々に話すメンバーを黙らせるかのように、クレアが大声を放った。


「ブルームさんが朝一番にメグさんの所に電報を送ってくれたみたい。早ければ、今日の午後にも帰ってくるはずよ。


「流石ね。私は警察署に行って、緊急会議に参加してくる。」


ステラはそう言うと、コートを取りに行った。


「新聞にはどんな状態で見つかったのか、臓器が無いことまで記されていた。スラム街だけではなく、チェストラ市内に住んでいる人全員が恐怖に怯えて混乱している筈よ。警察署周辺は記者や野次馬が大勢いるはず。署内に用事がある時は、あまり警察関係の人だってバレないように行くべきね。」


毎朝、チェストラに存在する全ての新聞社の記事を読むキーラが言った。


「とりあえずステラの帰りを待とう。今まで通り潜入かもしれないし、治安維持に回らなければならないかもしれない。各自準備はしておこう。」


ジュリーの言葉にメンバーは返事をした。



4日目。スティリンジット。


コンコンコン。


「おはようございます。イザベラ・チャンさんはいらっしゃいますか?」


「はい、私です。」


目覚めて数分も経たないうちに3人が泊っている部屋のドアがノックされ、イザベラは慌てて部屋の扉を開けた。


「メグ・ヴァイオレットさんから電報をお預かりしました。」


ホテルの従業員はそういうとイザベラに紙切れを渡した。


「ありがとうございます。」


イザベラは電報を一目見て、従業員に慌てて礼を言い、ドアを閉めた。


「どうしたの?」


イザベラが二人に見せた紙には『タミシルスグカエレ』と書かれていた。


「民知る。直ぐ帰れ。まだ未発表なのに新聞社に事件のことを書かれたんだ。何とか対応しないと警察と住民でトラブルが起きるかもしれない。急いで帰らないと。」


そう言うとイザベラは出しっぱなしの服をトランクに放り投げて、片づけ始めた。


「どうやって事件のことを…」


「ジェシカ、私達が考えても仕方ないよ。従業員にチップを渡して、汽車の切符を買ってきて貰わないと。」


考えるそぶりを見せたジェシカをジュディは止めて、従業員に頼むために部屋を出た。


「流石は従業員の扱い方を分かっているね。まだ朝だから、運が良ければ今日の昼過ぎには帰れる。」


「そうなのね、急ぐわ。」


ジェシカはそう言うと、自身の荷物を片付け始めた。





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