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NSSO《国家特別秘密組織》  作者: まっふん
腹喰い事件1章
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腹喰い事件12


「「自分から入った?」」


「…いや、それって可能なの?だって臓器の一部が無いんだよ?いくら腹を縫った跡があるからといって、体内で大量出血している状態なのに歩けるわけ無いでしょう。」


ジュディが顔の前で手を振ってそう言った。


「…分からない。でも臓器を摘出した後に動くことが出来るのならば、相当な腕を持っていないと。そう考えると、研修医ではなく医師の可能性が高くなったし、そもそもチェストラに籍を置いている医師じゃないのかもしれない。」


「それにアンダーソン先生の予想が外れて、本当に少年が自分から入ったとなると、犯人は生きている少年の腹を裂いたってことになる…」


「どちらにせよ、許せない行為だ。フォニーチャイズの医師会に連絡をとって、臓器に関する医療がどこまで進んでいるのか知りたい…」


イザベラはそう言ってため息をついた。


「でも事件のことを話せば、教えるわけないわね。自分たちに疑惑の目がかかるし、外交問題になる。」


「こっちが上に頼む時点で、却下される未来が見えるね。」


「どうする?まだ過去の事件を探す?」


「事件は起こっていても、ここに載ってはいないだろうね。」


そう言って、イザベラはパタンと過去の新聞記事が載ったノートを閉じた。


「…冷静に考えたら他の可能性が出てきたのに、何で無駄足を踏んでしまうんだろう…」


「それは私達が犯人じゃないからよ。犯人と近い思考で事件を読み解けば、より真相に近い予想が出来る。でも私たちは犯人のような残酷な思考回路を持っていないし、持ってはいけない。無意識に悪を退けようとしているから、犯人の心理が読めないんだよ。」


「犯人と同じ思考になる…か…」


イザベラはジュディの回答を噛みしめるように呟いた。


「…今回は生きている少年だったけど、過去では既に亡くなった遺体を使っていたっていう可能性はある。チェストラにある遺棄された遺体を片っ端から司法解剖していけば、新たに臓器の無い遺体が見つかるかもしれない。その遺体が遺棄されていた場所から犯人像や住んでいる場所の範囲を絞ることも可能かも…」


「確かに。犯人は警察に遺体を発見されたこと気付いているのかな?まだマスメディアには情報は行っていないし、少年が自らゴミ箱に入ったのならば、犯人は少年の足取りを掴めないまま終わったかも。」


ジュディが顎に手を当てながらそう言った。


「犯人の次の犯行を警察をちらつかせることで止めるか、密かに動くことで次の犠牲者を出して尻尾を掴むかってことだね。犯人は過去に何度も殺人を犯していると考えると、警察にバレた時の打開策も考えてそうだけどね。」


「そう考えると、後者の方が逮捕できる可能性が高まるけど、倫理的な問題が発生するね。」


「問題は指示を出す上の人間がスラムをどう…あ、ジェシカだ。こっちだよ。」


イザベラは入り口付近に現れたジェシカに向かって小声で呼びかけ、小さく手を振った。


「何か発見はあった?」


「新聞からは何も得られなかった分、犯人がスラム街の住民しか狙っていないことと、被害者の少年が自らゴミ箱に入ったこと、事件が発覚したのは犯人のミスかもってことが分かった。」


「臓器移植以外のスティリンジットに来たからこその発見は出来ていないのか…私も人に事を言えないんだけどね。」


「とりあえずもうこの新聞達には用は無いし、一旦宿に戻ろうか。」


イザベラの提案に二人はそうねと返事をすると、3人は後片付けをして図書館を出た。



「…で、不動産屋で話を聞いてきたけど、登記された家を買うのも賃貸するのもスラムの人にはかなり厳しいということよ。」


ジェシカはそう言うと、椅子に座って鞄の中から地図と数字が書かれた紙を取り出した。


「そもそも家を借りたり、建てたりするには身分を証明する書類が必要だから、住民票が無いスラム街の住民は役所に行って、そういう手続きを踏まないとならないの。それに住民票が発行された瞬間からスティリンジットに存在する人となるから、未納の過去数年分の税金も払わないといけない。それに加えて、土地や家を買うにはローンを組む必要があるし、それより手軽な賃貸でさえも家賃以外の出費が重なってくる。つまり、一般市民が生まれた時から当たり前にやっていたことをスラム街の人たちは初めて自分達で行うことになるから、初期費用が高いの。それに知識も乏しいから、騙されることが多いだろうって…。」


「私たちは色んな公共サービスを無料で使えるけど、スラムの人たちが使えないのは税を納めているか否かなんだったね。当たり前すぎて忘れていたよ…」


ジュディが呟いた。


「そうよね…で、これがスティリンジットの各エリアの家賃が書かれている地図。やっぱり中心に向かえば向かうほど値段は高くなっているし、スラム街に近ければ近いほど価格は落ちている。スラムに近いエリアだと500サンスまでで、オペラ座の近くになってくると、最低でも2000サンスは超えてくるね。」


「そのスラム街から出て行った家族がオペラ座周辺に住むことは無いでしょう?」


イザベラがジェシカに尋ねた。


「ええ、あり得ないわ。だってあのエリアは大物や昔から裕福な家庭の者しか住めないからね。それにスラムの住民は一日の生活で精一杯だから、恐らくスラム街に一番近い安い賃貸に移動すると思うわ。だから、ここら辺ね。」


ジェシカはそう言うと、鉛筆でスラム街周辺数キロメートルにぐるりと円を書き込んだ。


「ここ辺りを粗さがしすれば、何故大量の金を手に入れることが出来たのか分かるかもね。」


「うん、事件と関わりがあるのかは分からないけど、探してみる価値はある。」


3人は顔を見合わせて頷くと、捜索をするために立ち上がった。



3日目。チェストラ。


「はぁ…まだ手掛かりなしか。」


ステラはため息をついた。捜査を初めて2日目だが、まだ少年の身元は不明のままだった。


「刑事課とスラム対策部の捜査員が雨水の流れを辿って少年の遺留品を探しているんだよね?」


「そう。だけど、事件発生からもう5日経っているから、絶望よ。それに何の変哲もない靴の片方をどうやって探すのか…」


ジュディの問いかけにステラはそう答えると、こめかみを押さえた。


「「「ただいま!」」」


勢いよく玄関を開ける音がして、ブロッサム、ヴィクトリア、ローレンスが帰って来た。


「おかえり、どうしたのそんな勢いよく。」


「北エリアで自分の子供を探している母親がいるって噂を聞いたんだ。」


ブロッサムがコートを脱ぎながら、エマに向かって答えた。


「本当に!?何か他に詳しいことは?」


「母親が探しているのは7歳くらいの男の子で、1週間くらい前からいないらしいの。」


「でもその噂のおかしい所が1週間前から母親が探し始めたのに、周りの人は少年と母親が一緒にいるのを1か月くらい見ていないって言っていたのよ…」


ローレンスとヴィクトリアが順番に言った。


「え、何そのブランク?探すってことはそれなりに愛情とかがあるんでしょう?それなのに3週間ぐらい放置するだなんて…」


クレアが眉をひそめた。


「まぁ、少年がずっと家に引きこもっていて、母親しか外に出ていなかったって可能性もあるけど、北エリアだから親としては子供の傍にずっといたいはずなのよね…」


「その母親と接触できそう?」


「分からない、噂を教えてくれた人が母親の親戚の友達とかだから、親戚から探さないといけない。」


「でもかなり近づいたね。他のメンバーからも良い報告が無ければ、北エリアの人員を増やそう。」


ステラがそう言うと、6人は大きく頷いた。



「…という訳で、残りの数日は事件があったエリアの警戒をしつつも、北エリアで少年の母親かもしれない人物を探し出すことになった。」


午前の捜索を終えたNSSOは作戦会議のために館に集まっていた。


「今後は良い情報を得られなかった東南と南西エリアの6人を北エリアの捜索に追加しようと思う。北エリアは4人がずっと言っているように危険度が高いから、気を付けてね。」


「「「「「「了解/はい」」」」」」


ジュリーの助言に移動が決まった6人は元気よく返事をした。


「まだその女性が本当に被害者の母親かどうかの確信も無いから、北エリアにいるという観念に囚われないでね。あとさっき入ってきた情報なんだけど、遺体が発見された場所から2キロ離れたところに少年が履いていた靴と同じものが見つかったらしい。まあ、誰でも履いているような古い靴だから、サイズが同じだっただけかもしれないけどね。」


エマはさきほど警察署から届いた手紙を見ながらそう言った。靴の発見はあまり捜査の進展に役に立っていないと思っているのが、何となく見えた。


「北エリアの4人が母親の親戚の友達が話している時に声をかけてくれたおかげで、住んでいるおおよその場所は教えてくれた。だから、その人にもう一度接触して詳しい話を聞いてから、母親を探す流れを考えている所よ。今日の午後の間に出来たら母親の居場所までは突き止めたい所ね、あと2日でスラム街に警察が強制に入ってくる。あの人たちはスラムの人への思いやりより

、私達が活躍することの方が嫌のようだから…頑張ろう。」


「「「「「「はい!」」」」」」


ステラの力強い言葉にメンバーは返事をし、それぞれの役割へと戻っていった。




チェストラの金の単位は「サンス」です。1サンス=100円の計算で考えています。

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