腹喰い事件11
「「「ありがとうございました。」」」
アンダーソンが見せてくれたフォニーチャイズの医師会の報告書を読み終わり、少し話した3人は時間が来たので、礼を言って部屋を出た。
「…アンダーソンさんのおかげで、少し事件が見えてきたね。」
「確かに。まぁ、アンダーソンさんの考えが当たっていたらの話なんだけどね…」
「明日はどうする?」
ジェシカが落ち始めた夕日を見て言った。
「本当にスティリンジットでチェストラと同じ事件が無かったか知りたいから、図書館で過去の事件を上りたい。」
「確かに。チェストラで起きているなら、スティリンジットでも起きている可能性はあるし、予防策もできるかもしれないしね!あと個人的にいくら稼げばスラム街を出れるのかも知りたいな…」
「今回の事件と関係は無いかもしれないけど、不可解な話だものね。」
ジュディの言葉にジェシカは賛同した。
「じゃあ、明日は二手に分かれて違う角度から事件を考えよう。チェストラの皆はどうだったんだろう…」
「二日顔を見ないだけで変な感じね。何か見つかっていたらいいけど…」
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「はぁぁ…やっぱり情報無しよね…流石に事件を知らない人にスラムの住民っぽく聞くのは難しすぎる…」
居間でステラ、エマ、クレアと共に報告書を書いていたジュリーはため息をついた。
「事件当日が雨だったから尚更よね…少年の身元が分からないのは仕方ないけど、全エリアで子供に目をつけている怪しい人は見たことも聞いたことも無いって言われたらね…北エリアは逆に子供一人でいるのは危険すぎるから、常に大人がそばにいるって言っていたけど…」
エマは北エリアを捜索していた3人から渡されたメモを見返していた。
「事件をまだ公にしていないから、余計に探しづらいのよね…」
「遺体を開けてみたら、内臓の一部がありませんでしたっていう事件なんて初めて聞いたもんね…サイコ小説でしか見たことが無い。そりゃあ、上手いこと言わないと混乱するわよ…」
ステラはため息をつき、椅子の背に頭を預けて天井を見つめた。
「まだ一日目だから大丈夫だよ。イザベラもスティリンジットで何か違った観点から、事件を調べてくれているだろうし…」
「本気で国外捜査しようとしているのかな。」
クレアがポツリと呟いた。
「5日でしょう?そんなの足りないわよ。チャーリーが許可証を発行したって言ってたけど、意味ある?ってすごく思った。」
エマがばっさりと言い切った。
「一時とはいえ、出国許可証ってそんなに直ぐに発行できるものなの?」
「それは…チャーリーの権限じゃないかな?」
ジュリーの問いにステラが答えた。
「通常は出国許可証が発行できるまでに1カ月はかかる。それをたった数時間で発行させたってことは知り合いが国境局にいるってことでしょ。」
「そう考えると…いつもチャーリーのマネして馬鹿にしていたけど、なかなかやる人なんだね。」
ステラはそう言って肩をすくめた。
「何故チャーリーがわざわざ出国許可証を発行したのかはともかく…私たちはこれを書き終えて明日には何かしら進展させないと。NSSOは役に立たないって言われるからね。」
エマはそう言うと、書きかけの報告書を取り上げた。
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3日目。 チェストラ。
「まあ予想通りだね。」
警察署でステラから報告書を受け取ったナルシッサはあっさりと言った。
「誰もが協力的じゃないのにすぐに何か出てきたら、どんな事件でもすぐに解決されてしまう。3日目の今日は捜査範囲が昨日よりも広がるから、何かしら見つかるかもしれない。我々殺人事件課も捜査範囲を広げるつもりだ。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
「ところでステラ。まだ数日だけど、イザベラがいなくてもNSSOはまとまっている?」
「え?まぁ、まだイザベラがいなくなって3日目ですし、やることも明確なので普段通りですけど…何か?」
「凶悪事件対策部部長のアランが5日間チェストラ外に行ったイザベラに対してカンカンでね…肩書では同じだが、イザベラよりもずっと優位にあるアランよりも早いスピードで出国許可が下りたことに対しても憤りを感じているらしい。確かに急ではあるが、アラン部長が普段イザベラに任せていることはそれほど緊急性の高いものでは無い。それなのに教育部長が甘やかしすぎているとか、職務放棄だとか言っていると聞いた。」
「そういうことはよく聞きます…」
イザベラがアラン部長に対する愚痴を聞いたことがあるステラは、ハハハとから笑いした。
「私が言いたいのはアラン部長は大人げないということではなく…NSSOを敵対視している他の部長や上がどうしてくるかが問題だ。もしかしたら帰って来たイザベラに対して、何かしらの制裁を加えるかもしれない。」
「つまり…?」
「最悪の場合、ステラが捜査の権限を握る可能性もある。」
「それは…困りますね…私では上に歯向かえないかも。」
「警察署の中でもチャーリーは強い方だから、大丈夫だ。問題は均衡の取れなくなったNSSOを総攻撃してくる可能性があるってことだね。君たちの結束力は高いから心配していないけど、権力というものを行使されると難しいのがNSSOの弱みだ。万が一のことが起こっても、ステラにはNSSOに進むべき方向を示してほしい。」
「…努力します。」
「期待しているよ。報告ありがとう、任務に戻るといい。」
「はい、失礼します。」
ステラはそう言うと、ナルシッサに一礼し、部屋を出た。
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3日目。 スティリンジット。
「じゃあ、私とジュディは図書館で過去のスティリンジットの事件を探って、ジェシカは不動産屋とかを巡って、ここ辺りの地価と住めるエリア別の収入額を調べてもらうってことで…」
「捜査に関係ないって怒られる結末しか見えない…」
「私も同じく…」
ジェシカとジュディがそう言い、三人はため息をついた。
「…イザベラ、どう?何か関連性のあるものは見つかった?」
イザベラとジュディはスティリンジットにある図書館にいた。ここの図書館は吹き抜けがあって開放感のあるチェストラの図書館と違って、厳かな雰囲気があった。
「うーん、過去の殺人事件に関する新聞記事を漁っているけど、怨恨とか動機付けや身辺関係が明らかなものが多いんだよね…ジュディは?」
「臓器に関する参考書とか探しているけど、やっぱり全然ないね。何かズレているよね…」
「ズレているよね…でもなぜか間違ったことはしていないように感じる。」
「ただの殺人事件じゃないってこと?」
「そう、アンダーソン先生が言っていた医療関係者による犯行なら、素通りされる死体を使って練習していたってことが公にされたら、医療界への批判はとんでもないことになる。もし、狂気的殺人犯による犯行なのだとすれば、猟奇的だと新聞に大きく見出しが出る。でも狂った殺人犯が綺麗に腎臓だけを取り出すってするかな?本当に狂っているなら、そんなことしない。きっと色んな臓器を引き摺り出して…」
「ストップストップ。普通にグロイいから…」
イザベラの想像力が膨れ上がってきたところでジュディは制した。
「ごめん…」
「でも確かにそう。ただの殺人なら、そんな手のこんだことしない。そう考えるとやっぱり医療関係者に目が行くよね…今働いている人だけじゃなくて、過去に働いていた人も視野に入れた方が良いかも。でもゴミ箱に遺体を入れるだなんて、何でわざわざバレるようなことをしたんだろうね。医療界に怨みでもあるのかな。」
「いや、そもそも今回見つかった遺体が一人目の被害者とは限らない。チェストラの身元不明の遺体を全て司法解剖したら、同様な遺体がもしかしたら見つかるかもしれない…話を戻すけど、私がこの事件がただの殺人事件じゃないって思うのは話題性があるってこと。」
「話題性?」
「そう。メグさんに見せてもらったフォニーチャイズでのあの事件、一日分の新聞記事しか見ていないと思うけど、軽く一週間近くはそれに関する話題で街は大騒ぎだったと思う。犯人は捕まっていないから動機とか知らないけど、あの事件に関わっている人と連絡が取れたら、声明とかが明らかになって、犯人の目的の推測が出来るかもしれない。」
「じゃあ、今回の犯人も皆の噂の的になりたいっていうこと?でもヴァンパイア事件のように酷い状態では無かったんでしょ?」
「ヴァンパイア事件並みのことは出来なかったけど、臓器を摘出する自体、チェストラにとっては前代未聞で町中の噂になることは間違いない。でも今回の犯人の目的は、残忍さを誇示するのではなく、また別の話題性がある。」
「でもその話題性が分からないってことね。」
「あっはは、そういうこと…あ、待って。一回整理して単純に考えてみよう。チェストラで見つかった少年の身元を判明させるために、今私達は捜査を進めているんだよね?」
「うん。」
「もし少年が一人目の被害者じゃなかったら、他にも同様の手口で殺されたかもしれない子供がいたってことよね。」
「でもスラムに住む人の殆どが住民登録されていない…警察がわざわざ出向かない限り、遺体は放置されたまま。」
「そうだよ、警察が調べない限り新聞に載ることだなんて無い。犯人が選んでいるのは書類上では存在していない人たち。これからも殺人を続けるなら、あんなところに死体を遺棄するわけがない。」
「暗い路地裏に放置している方が自然ね、チェストラじゃ。」
「つまり…少年の遺体は犯人が入れたのではなく、」
ジュディとイザベラは顔を見合わせた。
「「自分から入った?」」
久しぶりの投稿となりました!
話がなかなか進まないところに自分の文章力の下手さを感じます…疲れて急に時間が飛ぶこともあるかもしれません笑




