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NSSO《国家特別秘密組織》  作者: まっふん
腹喰い事件1章
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腹喰い事件6


「久々のドレスアップはテンション上がるね」


二時間の短い観光を終えた3人はホテルに戻って、夜のオペラ公演のために準備をしている所だった。ジュディはラベンダー色の膝丈のフラッパードレスに同じ色のヒールを履き、ブロンドの髪をハーフアップに仕上げていた。ジェシカは黒色で前後で丈の長さが違うストレートのドレスにシルバーのヒールを合わせて、黒い長髪のウィッグを被ってショートカットを隠していた。イザベラはタキシードに黒蝶ネクタイを合わせて、身長を盛るために厚底の革靴を履いた。潜入調査をするにあたって、素顔を見せていると身の危険があることもある。だから、NSSOでは男装やメイク、歩き方や言葉遣いなど、様々な人物になるための訓練を行っている。今日はオペラの鑑賞なので別人になる必要は無いが、女性3人では変な輩に声を掛けられる可能性や、男性がいないのを不審がる人もいるのでイザベラだけいつも通り男装することになったのだ。


「久々にパンツスタイルじゃないから、違和感を感じるよ…」


いつもより華やかな化粧を施したジェシカが鏡を見つめながらつぶやいた。


「確かにジェシカのロングヘアは久しぶりに見たな。どちらも似合っているよ。」


「えっと…私はどこから一人になるのかな?」


「一等席の近くからでいいんじゃない?私たちはあまり礼儀作法とかに詳しくないから、お手本を見せて欲しいし…」


「分かった…上手く人と話せるかな…」


「大丈夫だよ。可愛い女の子が一人でいるのに、話しかけない男性なんていないよ。それに今日の公演は若者にも人気なんでしょう?尚更よ。」


「そうだけど…」


「危険な任務じゃないんだから、楽しむべきだよ。そろそろ行かなきゃいけないんじゃない?」


ジェシカの言葉でイザベラは腕時計で時刻を確認し、頷いた。


「あと1時間も無い。馬車を予約しているから行こう。」



「結構、混雑してきたね。」


オペラ座は馬車で15分ぐらいのところにあり、10分過ぎたあたりで道路が着飾った人たちで混み合っていた。


「確かに。いくらホールが広くてもはぐれてしまうかもしれないね。」


ジェシカがそう言ったと同時に馬車が止まり、外から御者が扉を開けてくれた。三人が乗っていた馬車はオペラ座の前にある大きな噴水がある広場に停まっているため、降りた目と鼻の先にクリーム色の柱で支えられたオペラ座が目の前にそびえたっていた。


「うわあぁぁ!すごい!チェストラのオペラ座も凄いけど、こっちの方が重厚感がある!天井が高い分、建物の高さもあるのかぁ~」


ジュディがテンション高く、1人で騒いでいた。イザベラはなかなか動き出さないジュディの腕をぐいぐいと引っ張って、ホールの方に連れて行った。


「これは…」


ホールに入った瞬間、3人とも口をあんぐりさせた状態で立ち止まった。入り口は1階から6階ぐらいまでのアーチ型の吹き抜けになっており、美しい天井画が描かれていた。ホールの両端には舞台に繋がる大理石で作られたカーブを描く階段があり、2階席を取っている観客が出入りしている。階段を上らずに真っすぐに進む人たちは平土間席に座る人たちだろう。平土間席に進む通路の床にもスティリンジットのシンボルを中心に何やら描かれている。そして蝋燭を持った天使たちが壁一周にグルリと設置されている。光を入れる窓が少ないからか、外を歩く人の声も月明りも射してこない。


「チェストラのオペラ座はもっとシンプルよね。ここのような厳かな雰囲気は無い…」


「ここはチェストラよりも歴史が長いし、貴族の人専用のラウンジとかが残っているのよ。今は閉鎖されて行けないけど…」


ジュディが残念そうにつぶやいた。


「メグさんからのチケットには3階席のDボックスって書かれているんだけど、分かる?」


イザベラはそういってポケットから、座席が書かれたチケットをジュディに渡した。


「もちろん。メグさんは余った席を渡したみたいね。私と2人のボックスはちょっと離れているわ。」


そう言うとジュディはもう理解したのか、2人を階段の方へと引っ張っていき、様々な装飾品をゆっくりと鑑賞しながら人の流れに沿って3階まで上がった。


「私の席はここだわ。二人の席があるボックスはHだから、左に進んで上に書かれているアルファベットを見ればすぐ分かるわ。」


「分かった。終わった後の待ち合わせは?終演直後は混雑してて、すぐに合流出来ないかも。」


人が増えてきて密集してきたからか、ジェシカが声を張って尋ねた。


「じゃあ、外の噴水の前で待ち合わせにしよう!あそこまで出たらきっと分かる。」


「そうね、きっと馬車が多く停まっているはずだから、オペラ座を出て右側の方で待っているわ。」


ジュディの言葉にイザベラとジェシカは頷くと、自分たちの席へと移動を始めた。


「ここね。うわぁ、結構ホール全体が見えるのね。」


「本当だ。2って書いているから、2列目ってことかな…あぁ、ここか。」


イザベラはそう言って、2つの座席が4列並んでいる中の2つ目を指さし、誘導した。


「ボックス席にいる人たちって、皆裕福そうね。舞台に近ければ近いほど、お金を持ってそうだった。」


席に座ったジェシカが小声で囁いた。


「ボックス席は全体が見えるからね。平土間席の前の方からでも良く見えるけど、見下ろすように見るならこっちの方がいいね。」


「それって皮肉?」


ジェシカがふふっと笑って言った。


「お金に目をくらませている人はね、好きじゃない。」


そう言った数分後、公演が始まる鐘の音が鳴った。オーケストラピッチにいる楽団がチューニングを始めると、段々と照明が落とされていき、人々の囁き声もすぼんでいった。



「なんて君は麗しい人なんだ!この檻さえなければ、すぐさま君の手を取って共に語り合いたいのに!」


「あぁ、なんて勇敢な人!自分の地位を考えずに心のままに従って、誰かを愛そうとするだなんて!でも私の心は変わらない。私はこの街の人々と共にあるもの。私は貴方の同族が家族にしたことを忘れない!」


舞台の上では警察官である男と下町を愛する女盗賊が自らの心の内を感情的に歌っていた。まだ中盤にも差し掛かっていはいないが、あらすじがイザベラには見えていた。国に守り、国の意思に従う警官と人々に寄り添い、自らの意思を貫く盗賊が牢屋の中で出会い、恋に落ちる。女の自由奔放さと街の人々を愛する姿に心を打たれた警官は、自らの行動を改め国のやり方に疑問を持ち、最後は女と共に戦って命を落とすのだろう。そこまでの予想を付けたイザベラは突然、眠気を感じ、段々と瞼が下がっていくのを感じた。事件が起きないかと普段は気を張っているからか、音楽を聴きながら優雅に過ごすのは久しぶりな気持ちがし、あっという間に眠りについていた。





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