違和感
「おはようございます。」
月曜日。2日の休みを仲間とのんびり過ごしたことで、気分がリフレッシュされたイザベラは軽い足取りで自分のデスクに向かった。今日もまた数多くの事件にNSSOが介入する必要があるのか分別し、一週間のNSSOの活動報告を提出し、午後からは武闘訓練がある。始業のチャイムが鳴り、アラン部長の号令で軽い朝礼が始まった。
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「…で今日は11時から昨日起きたスラム街での少年殺人事件の会議がある。この事件については詳細が不明なため、凶悪事件対策部各課から数名ずつとスラム街で起こったということから、生活安全局スラム街対策部との協同で事件解決に乗り出すことになった。私が捜査に参加する者を選出するので、選ばれたものは参加するように!以上だ。」
「「「「「はい!!」」」」」
凶悪事件対策部の職員が一斉に返事をし、アラン部長が席に着いたところでイザベラも腰を下ろした。
「チャンさん、おはようございます。」
「ブルームさん、おはようございます。どうしました?」
「11時からの会議、チャンさんも参加してください。ドックマックス課長とアラン部長からの要請です。」
「…っ、何かまずいことでもあったんですか…?」
いつになく真剣な表情のティモシーにイザベラは顔を強張らせた。
「私も詳細は分からないので会議で報告を聞いてください。NSSOが介入するべきか判断しろとのことです。では。」
そういうとティモシーはスタスタと歩き去った。課長部長からの要請ということは度肝を抜くようなことがあったのだろうか。イザベラは2時間後に迫る会議のことを考えて、手元にある事件の報告書の優先順位を付けてしまおうと、書類を持ち上げた。
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「それでは、一昨日発生した東スラムでの少年殺人事件に関する会議を始めます。」
アラン部長の一声で各警察職員は姿勢を正した。
「まず始めに殺人事件課課長のドックマックスから、事件の概要について話してもらいたい。」
「はい。おはようございます。殺人事件課課長のドックマックスです。一昨日起きた事件の概要について述べますので、各自メモを取ってください。私がまとめた資料は後程配布します。まず、遺体が発見された場所ですが、場所は第二区スラム街西側です。スラム街の入り口付近に建つアパートのゴミ箱で発見されました。遺体は、上半身を折り曲げた状態で尻からゴミ箱に入ったか、犯人の手によって入れられたものと考えられます。発見された時刻は、土曜日朝の7時ごろ。その近くのアパートに住む住民が第一発見者です。」
「第二区にまでスラム街が広がっているのか?」
「チェストラの治安もますます悪くなってきているな。第二区に住む友達が心配だ。」
ナルシッサの報告を聞いた警察職員は囁き声で話し始めた。
「少年の容姿や犯行時刻の詳細について教えてくれ。」
警察職員の囁き声を打ち消すかのようにアラン部長が声を張り上げた。
「はい。少年は9~11歳と思われ、身長は134㎝ほどでした。恐らくスラム出身の少年からか服は汚れており、体重も平均より数キロ下回っていました。犯行時刻は分かりませんが、前日の夜は雷を伴う激しい雨が降っていたため、周囲を捜索しましたが血痕や靴の跡は雨に流されていました。」
「遺体の損傷具合について教えてくれ。」
「…はい。少年の死因は腹部の傷による出血死だと考えられます。傷はへその上3㎝から下5㎝まで入っており、深さは臓器に到達するほどでした。その傷についてなのですが…」
そう言うとナルシッサは口をつぐんだ。表情が変わったナルシッサを見た警察職員の間に緊張が走り、これは複雑な事件だと端に座っていたイザベラは感じた。
「その傷なのですが…少年の傷跡に縫合している跡が残っていました。」
「縫合!?どういうことだ手術を施されていたということか?」
「普通、縫合して直ぐに動けるものじゃないだろ。」
再び警察職員が騒ぎ出した。術後に何かあったのか、そもそも何故スラム街の子供が手術を受けられるほどの金を持っているのか、イザベラは頭を捻らせた。
「あまりにも不審だったので司法解剖をすることになりました。結果は今日の午後にも分かると思われます。分かり次第、各部署の代表に報告します。以上です。」
そういうとナルシッサは椅子に座った。ナルシッサの報告を聞いた警察職員たちはザワザワと囁いていた。
「では、次にスラム街対策部から今後、その近辺を捜索するにあたって、現在の事件現場の周辺情報について報告してもらう。」
「はい。スラム街対策部副部長のシャンツです。先ほどの報告にありました第二区に進出しているスラム街の西側の治安情報を報告します。事件現場近辺はスラム街の入り口であるため、日光が良く入るまだ治安が良好な場所です。周辺住民の生活水準も平均より一回り下回っているぐらいで、夜は多少危険ですが、奥まったところほどではありません。」
「少年の容姿からして、彼はその近くの身元だと思うか?」
「いえ、そうは思いません。事件現場周辺の住民を私達の部署で偵察したのですが、殺害された少年と同じぐらいまでやせ細っていた子供は見当たりませんでした。また、彼が着用していた服や靴からも事件現場周辺に住む子供だとは考えにくいです。」
「彼の身元はまだ判明していないのか?何か届け出は?」
「ありません。スラム街に住む子供の住民票は無いことが多いですし、両親がいないこともよくあるので。」
「確かにな。あそこは人一人の顔と名前を合致させるのにも時間がかかる…シャンツ副部長、報告ありがとう。」
シャンツ副部長は返事をすると自席についた。
「報告は以上とする。少年の死因が腹部の出血死ということだが、縫合の跡があるため、殺人事件だとはまだ断定できない。しかし、今後は事件課で5人ほど、スラム対策部から10人ほどの捜査員を出し、少年の身元の判定と縫合の跡と殺人事件の関連性を優先事項として捜査してもらいたい。以上だ!」
アラン部長がそういうと、警察職員は一斉に礼をした。
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「…それでどこがNSSOが介入するべき事件なんですか?」
会議が終了した後、イザベラはナルシッサに声を掛けた。
「今回の事件、アラン部長は断定できないと言ったけど、遺体の損傷具合からみて100%殺人事件なの。確かにさっきの報告を聞いただけだとNSSOの出番は無しって感じよね。」
「まあ…NSSOは潜入捜査をメインとしているので、地道な捜査には向いていないというか。」
「私はNSSOの潜入の凄さ、今からでも活かせると思う。さっき、少年の身元を判明させるって言っていたでしょ?スラム街対策部は警察としてスラム街に乗り込むつもりよ。つまり、違法性がある事件なら簡単に住民たちは尻尾を出さない。」
「大体分かりました。スラム街の住民として、少年の身元を確認すればいいってことですよね。」
「そういうこと。NSSOは警察より自由がきくし、頭が柔らかいからね。警察が奥に入り込む前に見つけ出してほしい。スラム街は下水道に近づけば近づくほど、底なし沼だからね…」
「分かりました。でも少年の身元を確認しても何か見つかりますか?」
「もし家族がいるなら、そこに真実を教えてもらうしかないね。それに死んだスラム街の少年に手術痕が残っていただなんて、不自然すぎる。何か引っ張れば出てくるかもしれない。私は縫合に使われていた糸から、どこで入手したものか調べようと思っている。」
「分かりました。潜入捜査をしたいところですが、フォーウェルさんの許可が無いとこっちは動けないです。」
「それは何かもっとNSSOの必要性が求められる証拠が…」
「ドックマックスさん!!」
バンとドアが開き、警察の制服を着ていない職員が勢いよく入ってきた。
「スタンさん。何かあったのですか?」
「はい!あの子の遺体を調べたんですけども…そちらの方は?」
「国家特別秘密組織部長のイザベラ・チャンです。」
「彼女も捜査に参加してもらっているから、ここで言っても問題ないですよ。」
「は、はあ……一昨日の少年の遺体、先ほど司法解剖を行ったんですけど…」
そう言うとスタンは息を吐いた。
「…無かったんです。腎臓の片方が。」
「…っ!」
イザベラとナルシッサは衝撃で顔を歪ませた。
「…無かったってどういうことですか…まさか、」
「恐らく手術を施した者が取り除いたのだと思われます。一体何のためなのか…」
スタンは首を横に振った。
「臓器を摘出する実験をしているという話をこことは離れた国で聞いたことがあります。知り合いに他国によく行く人がいるので聞いてみます。」
「そんな…子供の臓器を取り出せるって…そんなのどこかの医者が犯人だって言っているようなものじゃないですか…」
「残念ながら切開が出来る医者は全員疑われますね…医者はチェストラには欠かせない存在なので、この報告が上に上がり次第、報道規制がかかると思われます。」
「そうですね…一番の報告ありがとうございます。スタンさんには遺体の身につけていたものから何か手がかりを探してもらいたいです。」
「もちろんです。色々ほったらかしてきたので、ここで失礼します。今後もよろしくお願いします。」
スタンはそう言うと、部屋を後にした。
「これでNSSOの潜入許可が下りることになるだろうね。最悪だけど。」
「本当に…最悪ですよ…」
イザベラは二人きりの会議室でぽつりとつぶやいた。
久しぶりの投稿でドックマックスのキャラ、忘れてしまった…




