第42話 旅立ち
スミスさんが体制ををある程度整えるまで手伝った俺は、エルドア王国から旅立つことにした。
「スミスさん今までありがとうございました!」
深く頭を下げる。
「おいおい、今生の別れみたいに言わないでくれよ」
「ははっ! そうですね、家もありますし、いつかは帰ってきたいと思います」
「本当に行ってしまうのだな」
アルメスさんが話しかけてくる。
「はい! 悪魔たちが何をしようとしていたのか分からないですし、なによりレティシアを許してはおけません」
「そう、だな……達者でな」
「はい、ありがとうございます」
騎士団は解体されず、アルメスさんは国王のやっていたことを知り、スミスさんに協力することになっている。
涙を堪えるようにアルメスさんは後ろに下がった。
俺にこれ以上できることもないので、寂しく思うが別れる。
「アル! 私たちの代わりに頼んだぞ!」
ガルフさんとヴィオラさんと挨拶をする。
「はい、ガルフさん達も、俺がめちゃめちゃにした後始末で悪いですが、お願いします」
「ははっ! 単独でクーデターを成功させる奴なんて聞いたことないぞ!」
「いやぁ、気づいたらやってました! 反省はしてますけど、後悔はしてません」
「そうか、お前の決めた道なら、それがお前にとっての正しい道なのだろう」
「はい! ありがとうございます!」
探索者仲間など、たくさんの人が見送り来てくれていた。
「それでは、みなさんお世話になりました!」
俺は最後に頭を下げ、振り返り馬車に歩いていく。
「ネマ、チェルシー! 行くぞ」
同じように頭を下げていたネマとチェルシーに声をかける。
「はい!」
3人旅になるが、不安はない。
あるとすれば、レティシアを見つけられるかどうかだ。
「ま、そこは旅を楽しみながら頑張りますかね!」
復讐の旅のはずだが、探索者心という名のだろうか、ワクワクしている自分がいた。
「私が御者をしますね」
チェルシーが馬のたずなを握りこちらを向く。
「ああ、頼む」
ネマと俺は馬車に乗り込み、発車する。
「それではみなさんありがとうございました!」
最後に見送りに来てくれたみんなに挨拶をする。
各々最後の挨拶を返してくれる。
アルメスさんの泣き顔が目に入ったが、俺は笑顔で手を振る。
☆
「チェルシー、次の町までどのくらいだ?」
行者の席に一緒に座り、地図を広げる。
「そうですね、先ほどこの森の所を抜けたばかりなので、あと半日と言ったところです」
エルドアを出て、暫く進んだが魔物に会うこともなく順調に進んでいる。
「初日から野宿しなくて済みそうだな」
「そうですね、あれ?」
「ん? あれは」
集団の人たちが魔物に襲われていた。
「ちょっと助けてくる」
「え? 盗賊だったらどうするんですか?」
「あの服装、ありえなくはないが、女の子もいるみたいだ」
盗賊に、女性はほとんどいない。
いなくはないが、確率が低いので、取り合えず助けることにした。




