第41話 ちょっと王城行ってきた
「どうぞ」
ドサッと国王を地面に捨てる。
「ア、アル君まさか……」
「はい、王城まで行ったのでお土産の国王です」
「おお……」
スミスさんが凄く困ったような顔をしている。
「取り合えず捕まえておくか」
スミスさんが、クランのメンバーを呼んで、気絶している国王に足枷をつけて連れていくように伝える。
「聞かなくても、君が帰ってきたということは大体察しはつくけど、話して貰えるかな?」
「わかりました」
王城であったことを話す。
「なるほど、王城には君の脅しが効いている状態なんだね」
「ええ、あれだけの戦力差を見せつければ、あの宰相ならビビッて反抗できないでしょう」
「最悪逃げるかもね」
「スミスさんにはそっちの方が都合がいいのでは?」
「それが、そうでもないんだよ」
意外な答えが返ってきた。
「え? 革命のチャンスでは?」
「そうだね、国王から国を奪い返すまではいいんだ。しかしその後の準備がまだできていないんだよ」
「なるほど」
国王を引きずり下ろすということは、王政を廃止するか、誰かがまた王にならなければならない。
スミスさんは、王政に疑問を持っているらしいので、王政廃止の方向で進めていたみたいだ。
「ダンジョン産業が活発な国だ大きなクランもたくさんある、そういったクランを集めて政治を行う、議会を作ろうと思っていたんだけどね」
「クランが政治を?」
「ああ、クラン全体が政治をしないといけないわけじゃないよ? クランの代表者を決めて政治を行うのさ」
「それだと、ダンジョン産業優先の国造りになりませんか?」
「そうだね、国のバランスには気をつけるつもりだよ? ただ、ダンジョンが優先される国になるのは避けられない」
「どうしたら」
「準備期間があれば、政治に詳しい人たちを集めてたんだけど」
「それって」
「ああ、議会を偏らせないために、国の運営に重きを置いたクランってところかな」
「なるほど、それでバランスをとるわけですね」
「そうさ、あくまで国民のための政治をしたいからね」
政治家なのか、探索者なのかスミスさんは茨の道を行くようだ。
「とりあえず、国王の許していた闇の部分を浄化できるのは喜ばしい」
「いいんですか? 一応国王を脅した状態で暫く政治をさせるという手段も……」
「いや、あんなことをやっていた国王だ、大人しく弾劾されるのを待つとは思えない」
「そうですか」
スミスさんは覚悟を決めた顔で言う。
「これから頑張ってみるよ」
「なんかすみません」
「いや、いいんだ、革命のときに障害になるであろう戦闘を避けられたんだ」
「あ、それですが、騎士団を壊滅させたわけではないので抵抗はあるかもしれませんので、スミスさん達が制圧できるまで協力します」
「おお! ありがたい、現状トップの首輪を握っているアル君がいれば、無血で行けそうだ」
「はい、この地を離れる前にやっておかないと」
「この地を離れる? アル君はこの国を出るのかい?」
俺は、スミスさんに今後の予定を話すことにした。




