第38話 化け物の宴
「あ゛あ゛あ゛ぁぁぅあ゛」
アーサーが変な声を出してやばそうだ。
「あら? ビックリした? 私悪魔だったの!」
伝承レベルでしか存在していない話だ、魔族でもない、悪魔族。
「隣の男もか?」
「ふふふ、嫉妬した? アルもアーサーも本命じゃなかったってだけよ?」
何のためにこんなことしたか分からないが、俺を騙していたことは確かだ。
「でも、楽しかったわ! 私のために、パーティーがギクシャクしていくんですもの!」
「ギクシャク?」
「あら、気づかなかったの? アーサーはあなたに嫉妬してたのよ?」
「だから、俺を恨んだのか?」
「人の気持ちは複雑みたいね、それがきっかけかもしれないけど、最終的にはあなたの全てが嫌いだったみたい」
「お前、はぁ、もういい」
最低の奴だとわかっただけだ。
やることは変わりない。
「もういいか?」
レティシアの本当の恋人らしい悪魔が聞いてきた。
「いいわよ! 楽しかった!」
「そうか、ではそこの手が黒いの!」
俺の事だろう。
「そこの勇者と戦え!」
まるで拒否権が無いような言い方だ、ただ。
「お前に言われなくても、やってやるさ」
「そうか、それは僥倖」
「があ゛ぁあ゛」
アーサーも待ちきれないらしい。
「しかし、何をしたんだ?」
俺の呟きに悪魔が答える。
「恐劇草というものがあってな、それを煎じて飲ませたのよ」
「恐劇草?」
「ああ、自分の限界を超えて強くなれるそうだよ」
「限界超えすぎだろ」
アーサーの様子を見る限り相当ヤバい物のようだ。
アーサーが飛びかかってきた。
「我慢できなくなったか?」
素手だが、一発一発が人間のそれではない。
「ガア!」
「獣だな、そうなってまで俺を殺したいか?」
「グワァ!」
会話にならない、完全に理性を失っている。
「沈静化!」
エンチャントのスキルで相手の戦闘意欲を奪う。
「ガぁ! はぁはぁはぁ」
「戻ったか?」
「力が、力が湧いてくるぞ! クハハハハハ!」
アーサーの意識が戻ったようだ。
「な、なんだと! 理性が戻ったのか! 凄い! 凄いぞ!」
悪魔の男が興奮したような声を出す。
「意識のないお前に復讐してもつまらんだけだからな」
「フハハハハ! 今の俺を倒せると思ってるのか?」
アーサーは自分の力に酔いしれているようだ。
「分からせてやろう! 掛かって来い!」
挑発するように指で誘う。
「ムカつくなぁ! 本当ムカつく!」
「なら、やってみろよ?」
挑発についにキレた。
「死ね!」
先ほどは、真っすぐ獣のような攻撃だったが、今は俺を倒そうとする理性が乗っている。
「いいぞ、やっと叩き潰せる!」
突っ込んできた所にカウンターを入れる。
アーサーはあり得ない挙動で避けた。
「お前も化け物か」
そこには対峙する二つの化け物がいた。
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