第13話 国王との謁見
「顔を上げよ」
俺達は国王と謁見をしている。
「探索者クランダウンクロウ、貴殿らのボス討伐大義であった、国王の名のもとに褒賞を授けよう何か望みのものはあるか?」
「ハッ! 国王様の褒賞を頂けるのであれば光栄にございます!」
「うむ、嬉しい心がけじゃでは余から金銭の授与と、勲章を授けよう」
欲しい物を言わないのは礼儀らしい。
というか、ここまでの流れはしっかり打ち合わせで決まっている、俺には後ろめたいのか、先ほどから露骨に視線を向けないようにしているように見える。
俺達は褒賞をしっかり貰い、王城を後にした。
実は、国王が言ってはいないがボス討伐の権利として、国家探索者になることもできる。
国としても、ボス討伐をできるパーティーは非常に貴重なのだ。
しかし、この国を変えたいと思っているスミスさんが国家探索者になるわけもなく、今回はお金と勲章だけにとどまった。
「いやー、でも俺達が歴史に名を残すとは思ってもみなかったな!」
ダビさんが帰り道を歩きながら話す。
「そうだな、これで俺達も注目度が増してクランメンバーが増えるだろう」
スミスさんはこれをきっかけに組織を大きくするようだ。
「そうだな、そういえばゴーレム戦の時アル君はスキル操作をしてたよね?
ケインさんが質問をしてくる。
「ええ、バインドを操作できれば大分戦況を変えられると思って練習したんですよ」
「凄いな、練習を怠っていたつもりはないが、アル君を見ていると自分も頑張らないといけないと思ってしまうよ」
ケインさんのべた褒めに照れていると、前方に人影が見えた。
「アル君あれは・・・・・・」
スミスさんが気づいて声をかけてくれる。
「ええ、俺の客人みたいです、先にギルドに行っててもらえますか」
「わかった、手続きとかは全部やっておくからアル君はそのまま帰るといい」
「ありがとうございます」
スミスさんが気を使って面倒なことを全部引き受けてくれた。
「それじゃあ、今回は助かったよありがとね」
スミスさんと別れの挨拶をして俺は人影の方に向かった。
そこに立っていたのはレティシアだった。
「なんか用?」
好きだったという感情が、つい先日まであったのが嘘のように、レティシアの姿を確認してからは俺の心が冷え切っていくのを感じる。
「うん、用ってほどのことでもないんだけどね、ダンジョンボス討伐おめでとう」
「ああ、ありがとう」
最低限の言葉のやり取りをする。
「それでね、この前はその、なんていうか・・・・・・」
言い訳をする前の子供みたいだなと冷ややかに俺はレティシアの言葉を待った。
「言い過ぎたと思ったの! ごめんなさい!」
なんと、レティシアが謝ってきていた。
俺はあんな酷いことをされたにも関わらず、もしかしたらこの子はあの時アーサーにかどかわされていただけなんじゃないかと思った。
「ああ、そのことか、もういいよ恋愛の感情が移り変わってしまうなんてどうしようもないからね」
謝ってもらったし、なによりこの間まで好きだった相手だ、できるだけ恨みたくはない。
「そう! 分かってくれる? それでね、アルにしか話せないんだけど、私もしかしたら国家探索者やめるかもしれないの?」
「え?」
「あのね、アーサーは恰好よくて強いの」
いきなり惚気られても、俺の心にダメージが残るだけなのだが。
「でも、アルみたいなね男の人の安心感とか、頼りになる感じとかがね私やっぱり・・・・・・」
「それって?」
それってよりを戻したいってことか? と聞こうとしたらレティシアが踵を返した。
「それじゃあ! 人待たせてるから行くね! このことは絶対秘密だからね!」
まるで俺に何も言わせたくないかのような去り方だった。
「なんだったんだ?」
先日のことの謝罪、ということであれば聞こえはいいがレティシアの言いたいことがそれだけではなかった。
まるで『国家探索者をやめる、アーサーよりあなたがいい』ということを伝えるために来たとしか思えない。
「それってつまり」
国家探索者を辞めた後よりを戻したい。
「そういうことだよな?」
俺は、レティシアの本当の心が分からず混乱したのだった。
--------------レティシアside☆☆--------------
「ふふっ! 上手く勘違いしてくれるといいけど」
そう、レティシアはただ保険をかけているだけだった。
「国家探索者をいつ辞めるとも言ってないし、アーサーと別れるなんて言ってないし、これならいつ乗り換えても言い訳できるよね!」
レティシアはただ勝ち馬に乗りたいだけだった。
実は、別れを告げた時アーサーに言われていたのだ、アルが解雇されることを。
だから、レティシアは勇者で安定して国家探索者でいれるアーサーに鞍替えした。
しかし、アーサーが指揮をとるようになってからあまり上手くいっていない。
そんな時に、元彼が偉業を成し遂げたのだ。
前までは、経験豊富な探索者というイメージだけだったが、今まで大した活躍もないクランが、アルが入っただけで一躍歴史に名を残したのだ。
「ふふふ、私の王子様になるのはどっちかな?」
黒い笑みを浮かべながら歩く少女の心を推し量れる者はいなかった。




