正直変な男も関わりたくない
いつの間にかユーイリアの隣にたっている金髪の男性。
翔真より少し年上だろうか?
キレイめな服装に、サラサラヘアー。
瞳は透き通ったグリーンだ。
突然の登場に思わず凝視してしまう。
「こらっ、ユーイリア。
なんで本当のことを言わない。
翔真殿に失礼ではないか。」
ユーイリアに向かって、注意をしている。
「はぁー・・・
頼んでもないのに勝手に出てこないでください。」
プイッと、金髪の男性から顔を背ける。
「翔真殿、本当にすまない。
ユーイリアは、見たくて記憶を見た訳ではないのだ。」
きれいな顔を、申し訳なさそうに歪ませながらこちらを見てくる。
「君の右手に出ているアザは、君の無意識を現している。
この国は、ウォンリン石の力が満ちている。
そのため、君の無意識が、具現化しやすいのだ。」
「それが、俺の記憶を見ることにどう繋がるだよ。
勝手に呼んで、勝手に記憶を見て・・・」
〈・・・イライラする〉
日頃、笑顔の仮面をつけている為、本音はもちろん自分の過去を他人に晒すことは無い。
初めて出会った女に勝手に暴かれたとあったら、許せない。
翔真があまりにも睨みつける為、しばらく沈黙が続いた。
「・・・はぁー・・・
翔真様、あなたは溜め込み過ぎなのです。」
ユーイリアは、観念したかのにゆっくり語り始めた。
「あなたは、人生で何度も人をぶっ殺してやりたいと破壊衝動に駆られることがあったのでしょう。
それでも、それを抑え込むことも同じくらい普通にしてきた。
だから、思っている以上に無意識のエネルギー量も、蓄積されている情報量も桁違いに多いのです。
しかも、恐ろしいほど攻撃的なエネルギーの種類なんです。」
チラリと翔真の右腕を見てくる。
「ウォンリン石の力で、そういったエネルギーが具現化されると、翔真様はもちろん民にも被害が出ます。
少しでも馬車の中でケアしたかったのですが、情報が勝手に溢れ出てこちらも処理が追いつかずエネルギー切れを起こしてしまいました。」
馬車の中で、ぐったりしていたユーイリアを思い出す。
あれは、召喚で疲れていたわけでは無かったのだ。
本気で殴ってでも、部屋から出ようとしていた為、エネルギーが攻撃的と言われても、まぁ、そうだなとしか感想が浮かばない。
「あそこまで勝手に溢れ出るということは、自分の記憶や負の感情を、誰にも言う習慣がないのでしょう?」
ユーイリアの優しい口調に、翔真は思い当たる節があるため、内心戸惑ってしまった。
「・・・とまぁ、色々言いましたが、正直なところそこは、大切ではないです。
あまり私の話を真剣に聞いていなさそうだったので、少しばかりイラッとしまして。
負の感情を表に出すケアの一環で、翔真様を怒らせてみました♪
翔真様も興味のない国の歴史聞くより、ケアできて有意義でしたでしょう?」
テヘッとウィンクしながら人差し指を立ててくる。
〈こいつ本当は、人をおちょくるのが、元々好きなんじゃ・・・〉
ユーイリアの説明の軽さのせいで、素直にありがたいと思えない。
「丈夫な神殿とはいえ、流石に翔真殿のエネルギーが、暴発して建物が消し飛ぶのではないかと焦ったではないか。
ユーイリア、煽りすぎだ!!
悪気はなかったとはいえ、ちゃんと謝れ。」
金髪の男が、グイグイとユーイリアの頭を押さえて謝らせようとしている。
綺麗な顔は笑っているが、少し笑みが怖い。
その手をユーイリアは、虫を払うかのようにペチンと払った。
それでも謝らすために頭を抑えこもうと手を伸ばすが、ユーイリアはその手からさっと逃げた。
ユーイリアに謝る気はなさそうだ。
〈いや、ユーイリアは、悪気があったから頑なに謝らないのでは・・・
しかも、26歳にもなって、精神的な心配されるとか、はずいんですけど。〉
二人を眺めていた翔真は、ふと大切なことに気づく。
「カッとして聞き忘れてた。
あなたはユーイリアの同僚もしくは、上司なんですか?」
「この男は、この国の王です」
「ふーん、この男は王なのか・・・
え?!王?
王って、王様?」
ユーイリアが、サラッと言うから、自分まで流しそうになった。
「それ以外に何が、あるんですか。」
まだ、王と格闘しているユーイリアが、サラッと答えてくた。
伸びてきた手をユーイリアがつねっている。
「おうは、やさしいんだよ。
ひなだいすき!!」
今まで黙っていたひなが、さり気なく主張してくる。
「あっ、うん・・・」
翔真は、状況についていけない為、返事がそれしか出てこない。
〈王様つねられてるんだけど・・・
この国、大丈夫なのか?〉
さっきまで、全ったく興味が無かったのに、ちょっとこの国の未来を危惧してしまったのは、内緒だ。
特にユーイリアの思う壺になりそうでバレたくない。
「翔真殿!!
この臣下、余の扱いが酷いと思わないか?!」
王様が、翔真に泣きつくのはあと10分ほど、ユーイリアと格闘してからだ。