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こういうの落ち着かない

「あなたのせいなんだから・・・・・」

暗闇のなかで女の人が、少し距離のあるところでゆらゆらゆれている。

下をうつむいているせいで表情が良く見えない。

自分は、仰向けでいつか寝ていたみたいだ。

「翔真・・・・

あなたが、勝手なことばかりするから・・・・」

女の人の肩が、震えている。

翔真は、ハッとした。

〈この光景・・・・

見たことがある。

なんだっけ?なんだったっけ?〉

自分の体が無意識にブルブルと震えてくる。

「あなたを産んで、私はこんなことばっかり。

もう嫌っ!!

あなたなんて産まれてこなければ良かったのよっ!!」

きっと眼光鋭く睨み付けられる。

〈・・・!!

母さん!!〉

懐かしい顔に翔真はビックリする。

女性の顔は、涙でぐしゃぐしゃで、目付きは般若のようだ。

「それだって、あなたが勝手に動いたせいなんだからっ。

私は、躾ようとしただけなのに!!

全て、あなたのせいでダメになるっ!」

女性は、来るっと背中を向けると向こうの方に走り出してしまった。

「えっ!!かあさっ・・・・

う"っ・・・・」

起き上がって呼ぼうとしたが、声にならなかった。

右腕に激痛が走ったのだ。

パッと見ると翔真の右腕が血まみれになっている

「ひっ・・・・」

痛いのと恐怖で、声にならない。

翔真の右腕は、肘から手首にかけてぱっくり裂けてしまっている。

血が、だらだらと垂れていく。

着ているTシャツも、自分の血で真っ赤になっていた。

周りを見ると床には、割れたガラスの花瓶が転がっていた。

破片が、傷口近くにもぱらぱらと付いていてゾッとする。

助けを呼びたくても、うまく口が回らない。

そのうち頭が、くらくらしてきた。

出血多量のせいだ。

意識が薄れて行くなか、使用人の悲鳴が聞こえる。

何度も遠くで翔真の名前を呼ぶ声が聞こえる。

〈そうだ、俺は母さんに割れた花瓶で殺されそうになったんだ・・・〉

まぶたが重くて、目が開けれない。

〈だから、言ったんだ。

家族なんて何も意味ない、価値もない。

俺にもなんの価値もない・・・・〉

目を閉じたまま、心の中で吐き捨てるように呟いた。

ーーーキーンっ

呟いた瞬間少し高い音が頭の中で響く。

「・・・・・そんなことないわ。」

突然、声が聞こえてきた。

「あなたは、愛に包まれている。

それだけは、忘れないで・・・・」

どこかで聞いたような声が気がする。

うっすら目を開くと誰かが、俺の右腕をさすってくれてる。

目が重たくて相手の顔が、しっかり見れない。

さすってもらっている右腕が、暖かく何故か涙が目から溢れた。

声にならない。



「・・ねぇ・・・ーま?」

「・・・しょーま!!」

「しょーまってば!!」

体がぐらぐらと揺らされる。

「翔真様、神殿に付きましたわよー?」

聞き慣れた声に、翔真はビクッとなった。

「へっ?!」

ガバッと目を覚ますと、先程の馬車の中だった。

さっきまで寝息をたてていたユーイリアは、起き上がってこっちを見ている。

「しょーま、ないててヒナびっくりした。」

心配そうにヒナも見ている。

「へっ?泣いてた?」

目をこすると、涙で指が濡れた。

思わず翔真の顔が赤くなる。

〈俺は、いい歳こいて夢につられて泣いていたのか?!

うわ、はっず・・・・〉

気まずい翔真にユーイリアが、にこりと笑顔を向けた。

「大樹の御加護で、守れましたか?」

ユーイリアの問いかけに翔真は、何とも言えない気持ちになった。

「・・・・まぁ、ラストぐらいは・・・・」

「ふふふ。」

意味深な笑いだか、その笑顔がとても眩しい。

あまりに綺麗に笑うので、翔真は何も言えなくなってしまった。

「さぁさぁ、お話は後で。

神殿に入ってから詳しく説明します。

まずは、馬車を降りましょう。」

ユーイリアの声に促されて、先ほど泣いていたことが気まずい翔真は、さっさと馬車を降りたのだった。

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