説明してほしい
シャッ・・・シャッ・・・・
翔真の耳元で布が擦れる音がする。
眠たさのあまり翔真は、目が開けれない。
〈・・・・ん?
俺は、あのままソファで寝てしまっていたのか・・・・?
でも、まだ寝ていたい、今日は休みなんだ。
こんなに暖かくて気持ちいい日なのだから・・・〉
体がポカポカと春の陽気に守られているように気持ちがいい。
もう一度、二度寝をしようとするが近くで人が動いていてつい聞き耳をたててしまう。
シャッ・・・シャッ・・・サラッ・・・・
翔真の首もとを指先で触られた気がした。
フワッと昨日の甘い花の匂いがした。
〈結か・・・・
昨日そう言えば中途半端にさわって最後までしてないなぁー〉
眠たいのに、一瞬ムラっとしてしまった。
目を閉じたまま隣にいるだろう結の方へ腕をぐいっと伸ばすと、すっぽり翔真の腕に治まった。
この時が、至福なのだ。幸せな気持ちに包まれる。
いつものように、翔真は、結のお尻を撫でる。
〈・・・・ん?
元々華奢だけど、今日は、一段と細く感じる・・・・
出張が、忙しくて痩せたのか?・・・〉
さらに服のすき間から手を入れ胸を優しく揉んだ・・・
揉んだのだが・・・・
「・・・・ん?んん!!?
結、おい、胸が全く無いぞ!!!?」
いつもあるはずの膨らみが全くない。
異常事態に、カバっと翔真は、目を明け体を起こした。
だか、目をあけた方が更に驚愕だった。
何故なら、目の前に見知らぬ女の子が、気まずそうにいるからだ。
結ではない、全くの別人だ。
そっと視線を胸の辺りに下ろすと、しっかり自分の右手が彼女の服の中にある。
胸の部分に置かれているのだ・・・・
さぁーっと自分の顔から、血の気が引くのが分かった。
女の子がわなわなと震えながら呟く。
「・・・・胸が、全く無くて大変申し訳なかったですわ。」
パンッーー
唖然としてる翔真の頬に、痛みが走った。
「いっつー・・・」
思わず翔真の口から言葉がもれる。
だけど、翔真の右手は、ちゃっかり女の子の胸の上に置いたままだ。
女の子の怒りは治まらない。
「そして、いつまでも触ってるんですが、この変態っ」
パンッーー
「いったー!!」
流石の翔真も、二回目の平手打ちにビビって意識がはっきりしたようだ。
さっと自分の手を女の子の服から引き抜いた。
頬をさすりながら、さっと女の子を観察をする。
15~16歳ぐらいだろうか?
腰まであるだろう長い色素の薄い髪の毛。
服装もちょっと変わっている。
白いノースリーブに、白いスカート。
胸元には緑の刺繍が入っている。
最近の若者には、こういった服装が流行っているのだろうか。
耳には水色の石のピアスが揺れている。
白い服を来た女の子が、切れ長の大きい目で、こちらを睨んでいる。
どちらかというと美人って感じだな・・・・
しかも、翔真と女の子回りには、蝶や、鳥が飛んでいる。
明らかに外だ。
部屋のなかではない。
〈えっ、俺は、昨日家に帰って寝てなかったのか?
結の出迎えが夢で、俺は、パーティ帰り公園かどこかで寝てしまってたのか?〉
翔真は、動揺する頭で、すぐ謝罪をした。
「本当にすまない。
寝ぼけていたみたいなんだ。
こんな若くて、かわいい子に絡むなんて・・・・
本当に申し訳ない。」
切れ長の大きい目の、にらみが少し和らいだ。
「・・・・寝ぼけていたのなら、仕方ないですわ。」
まだ、怒ってそうだが、女の子は気まずそうに喋り続ける。
「それに、私たちが、あなたに用事があって呼んだんですもの・・・・」
翔真もポカンとしてしまった。
「呼んだってどういう意味・・・
「おーい、ユーイリアー!!だいじょーぶー?」
翔真の質問を遮って、後ろの遠くの方から女の子の元気な声が飛んできた。
翔真は、声のする方を振り向くと思わず声が漏れた。
「でっかー!!!なんじゃこりゃー!!!」
なんと直径5、6メートルはあるだろう大きな大きな大樹があるのだ。
枝が大きく伸び、緑のつやつやとした葉っぱが生い茂っている。
その枝には小鳥が止まり、仲良さそうに鳴いている。
そして、大樹の生えている地面には、色とりどりの花が咲き乱れているのだ。
よく見たら翔真の足元にも咲いている。
風がそよそよと吹く度、甘い匂いが、優しく香る。
〈この花が、さっき匂っていたのか・・・・〉
翔真は、ポカンと空いた口がしまらないままだ。
大樹の奥のほうに目線をやると、囲むように奥の方にも森が広がっている。
「だいじょーぶみたいだね、げんきみたいだね!!」
さっきと同じ声で話しかけられた。
いつのまにか3~4歳の女の子が、側でにこにことしている。
景色に唖然としてる間に近くまで歩いてきたみたいだ。
ふわふわのウェーブがかかった髪の毛に、くりくりしたたれ目の女の子。
「ひなはね、ひなって言うんだよ!
おにいちゃんのおなまえは?」
くりっとした目が、興味津々に翔真の方を見てくる。
〈うっ、可愛いな・・・・
ガキ嫌いなんだけど・・・〉
思わず翔真も、名乗ってしまう。
「お兄ちゃんは、翔真って言うよ。
いつき しょうまだよ!」
なるべく優しいトーンで語りかける。
「しょーま・・・・
しょーまよろしくね!!」
ちょっと舌足らずなひなが、害がなさそうで可愛らしい。
翔真とひなの会話で、春の陽気が更にましたような雰囲気になった。
そんな、二人の会話に先程の女の子が、割って入ってきた。
「ヒナ会話に入ってごめんね。
翔真さま、先程は大変失礼しました。
ついかっとなってしまい、頬を叩いてしまったことを御許しください。
私の名前は、ユーイリア。
大樹を守るものです。
そして、あなたを異世界から、呼び寄せたものです。」
凛とした声で、綺麗な目をそらさず伝えてきた。
「・・・はっ?・・・・異世界?」
思わずもう一度、周りの美しい景色を見渡す。
確かに翔真の家の近所では、見たことがない景色だ。
「・・・・・異世界だとーーーーー!!?」
翔真の叫びが、森中に響いた。