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勇者達の住むお城へ(3) 勇者 ミディア

 キュッキュッ。

 シャワーのハンドルを締める小気味いい音がバスルームに響く。シャワーの水音が止んだ。

 バスルームのドアが開く。

 白い湯気が脱衣所に入り込むとともに、細い腕がスッと出てきた。脱衣所に置いてあるかごから、バスタオルを掴むと、そろそろと引っ込んでいった。

 しばらくして、バスタオルを上半身に巻いたミディアが脱衣所に出てきた。

 ここは城にある4つの塔のうちの1つで、ミディアの部屋である。部屋に備え付けてあるバスルームでシャワーを浴び、ちょうど出てきた所であった。

 ミディアの体全体からは、ほんのり白い蒸気が立ち上っている。

 しっとりと湿った艶やかな赤髪が、張りのあるキレイな白い肌によく栄える。赤い瞳に、凛とした顔立ち。大人っぽさを感じるが、子犬のような大きく丸い瞳が彼女に幼い印象を与える。それをさらに強く印象づける小柄な体躯に、バスタオルに包まれた胸元はつつましい稜線を描いている。タオルに覆われた膝下からは細身の白い両足がのぞく。

 ミディアは脱衣所にある鏡台と向かい合う。片手を軽く上げると、彼女の周りを温風が包む。湿った紅蓮の髪が宙に舞う。しだいに羽毛のようにふわふわと軽みを帯びていく。

 ミディアは片手を下げる。温風は止み、紅蓮の髪はゆっくりと宙から舞い降りる。

 髪からシャンプーの柑橘系の甘い香り漂う。

「ふうー」 

 心地良い香りについ声を漏らす。

 キングオーガとの闘いでかすかに染みついた焦げる嫌な臭いは、すっかり落ちていた。

 だが。

『キングオーガを城内に転送するから、それまで待機』

 ふとユリネの命令を思い出してしまった。

『キングオーガが街に到着するまで、まだ時間に余裕がある』

 悠長とも思えるユリネの命令に、ミディアはまたも苛立ちを覚える。

 城内に魔物を転送する特別部隊の準備が遅れていたんだよ。ユリネさんの指示に反対して、キングオーガ討伐に向かったのは間違いではない、間違いではないんだ。

『全力はこの城でしか出せないのよ!』

 1人で現地に飛び立つ間際、ユリネが張り上げた言葉が脳裏をよぎる。

 キングオーガを一瞬にして葬り去るために放った豪炎の柱。闘いが終わった後、辺りに広がっていた焼け焦げた漆黒の大地。

 キングオーガは強大な力を持っていた。だから加減が難しかった。それでも力は抑えたつもりだったのに。

 ミディアは右手をぎゅっと力強く握る。

 もし、キングオーガが街のそばにいたら……。街や、そこに住んでいる人達を傷つけていたかもしれない。

 ミディアは俯く。

 私は、勇者として、皆と笑って仲良く暮らせる世界を作るんだ。そのためにも、魔物をこれからも必ず討伐する。

 ミディアはグッと顔をあげる。鏡に映る強ばった頬を両手で軽く、パンッ! とはたく。

「よし!」

 ミディアは体に巻いたバスタオルをとり、かごからいそいそと下着を取り、身に着ける。そしてバスタオルを首にかけ、部屋へと続く脱衣所のドアを勢いよく開けた。

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