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勇者達の住むお城へ(1) ちょいと突撃しますね。

 俺こと村上は、光の球体の中にいながら、空を高速で絶賛移動中だ。女神ことアリーチェさんに、この異世界に急ピッチで転生させられ、何か力もついでに授けられ、そんでもって、どこにいくかもわからないまま転送魔法みたいなのをかけられ、今に至っている。

 別に転生は自分で望んだ事だし良いのだが……。

「それでもこれひどくない⁉ ほんとあの女神なにやってんじゃあああ‼」

 アリーチェさんが、親切丁寧に異世界や、後輩の秦野の様子ついて色々と教えてくれたのはありがたかったけど、制限時間のせいで、肝心の転生作業が超巻きで進められてしまうという暴挙。

「俺、任せて下さい! って言っちゃったけど……、ほんとに勇者達の教師としてうまくやれるのか⁉ いやそもそもですよ、俺は一体どこに飛ばされてんだ⁉ 誰か教えてー⁉」

『かしこまりました』

「はい⁉ 誰⁉」

 突如、冷静沈着な女性の声が聞こえる。初めて聞く声。おかしい、今この光の球体の中には俺しかいないのに。だが確かに声が聞こえたのだ。まるで頭のなかに直接話しかけてくるみたいに。

『チュートリアルです』

「えっ……、お笑い芸人の?」

『……チュートリアルを終了しま―』 

「待ってごめんなさい‼ すごく分かったから! チュートリアルさんね! あの……あれね! ゲームとかで説明してくれるようなやつ‼」

『はい』

 端的に答えるチュートリアルさん。なんだろう、俺の知っているチューとリアルとだいぶ違う……。いやだって会話めっちゃしてるし。

『今日からムラカミ様のチュートリアルを受け持つ事になりました、天使のマリーと言います。よろしくお願いします。面倒ですが』

「最後余計な事言ってますけど⁉」

 面倒て⁉ そして受け持つってそんな仕事的な……。天界はその会社みたいな感じなの? そして天使のマリーさんは余計な仕事が増えて不機嫌ってとこなのか……。

『ムラカミ様、これから先、色々とお聞きしたい事がございましたら、私が今みたいに取り次ぎますので。または私の名前を呼んで頂いても構いません』

 面倒と言いながらも淡々と説明してくれる天使ことマリーさん。

 まあひとまずは大丈夫そうかな。

「えっとマリーさん、こちらこそよろしくお願いします」

『はい。ではさっそくムラカミ様。お聞きしたい事はございますか』

「えっと、そうだな……。いきなりそう言われると……、あっ、じゃあ、今俺はどこにむかってるんですか」

『勇者達がいる所に向かっています。前方にお城が見えるかと思います。そこに勇者達は住んでいますので』

 俺は前方に視線を集中させる。すると確かに中世風のお城が小さく見える。

 あそこに、4人の勇者、彼女達がいるのか

 そして徐々に城が大きく見えてくる。高速で移動する俺を乗せた光の球体は速度を落とさず、ぐんぐん城に近づいていく。

 あれ? いやちょっと?

「あの質問」

『何でしょうか』

「どうやって城に入るんですか? まさか突っ込むとか? はははっ! まさかそんな」

『はい』 

「マジかよ⁉」

『安心してください。ちゃんとお城で止まります。どこかにぶつかって』

「そういう問題じゃねえ⁉ 何でそんな方法しかないの⁉」

『アリーチェ様がムラカミ様にかけた魔法が転送魔法ではなく、ぶっ飛ばし追跡魔法ですから』

「なっ⁉」

 だ、騙された! アリーチェさん転送魔法とか言ってたくせに⁉ おかしいとは思ってたんだ‼ バシルーラとか言ってたしなあの人‼ なぜ転送魔法じゃなかったの⁉

『制限時間のせいで転送魔法が間に合わなかったからです。ちなみにちゃんと転送魔法が発動していれば、ムラカミ様は今頃、勇者達のいるお城にスムーズに入れているはずでした。……ふっ気の毒に』

「マリーさん全然気の毒に思ってないでしょ⁉ 今鼻で笑っただろゴラァ‼」

『勇者の住むお城、到着まであと10秒です』

「うそ⁉」

 マリーさんの会話に向いていた意識を、さっき見てた城に向ける。

 あっ、めっちゃ城でかいね。というかもう目の前やん⁉

『カウントに入ります』 

「いやああああああ‼‼」

 マリーさんの冷静な声に、俺の絶叫が光の球体の中でこだましていた。


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