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勇者ご一行のご指導ご鞭撻よろしくお願いします!  作者: おみくじ


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20/23

勇者達の住むお城へ(14)勇者の脅威

「辞めるって、力づくでも言わせてやる‼‼」

 辺り一帯に強い風が舞う。

「くっ⁉」

 強い風に思わず目をしかめるも必死に正面を見る。

 ライムグリーンの長い髪を乱れさせ、殺気立ったシャルル。

 10代前半に見える女の子には不釣り合いな迫力に息を飲む。

 ふと脳裏に浮かぶ、先ほどシャルルに滅茶苦茶攻撃された場面。上空に吹き飛ばされるは、地面に叩きつけられるは、果てはぶっ飛ばされるは……。やべえ、またあの恐怖を味わうのかよ⁉ 

 唯一救いなのは全然痛みを感じないこと。ほんと異世界保険の力があってよかった……。

 

 身体ダメージの3割を数値化し、付与された大量のヒットポイント(HP)から差し引かれ、ダメージを肩代わりしてくれるもの。


 頭の中でHPの数値を呼びかけると、視界の端に数字が表示された。


 HP:14万1429/14万5000


 とりあえずこのHPが無くならない間になんとか策を考えないと―、ん? ちょっと待てよ。 

 俺はふとあることに気付く。そう、今の俺にはRPGでいう反則的過ぎるほどの、膨大なHPがあるじゃないか‼ 

 確か……、今まで食らったダメージの最高階級が、Aランク。

 えっとダメージ数値は、


 身体ダメージのランクと数値変換の内訳。

 ※アルファベットはランク、()内の数字は、通常ダメージ・3割負担ダメージ・MP変換で得る各数値。小数点以下四捨五入。


G (3)(1)(0)


F (9)(3)(1)


E (27)(8)(2)


D (81)(24)(7)


C (243)(73)(22)


B (729)(219)(66)


A (2187)(656)(197)


AA (6561)(1968)(590)


AAA(1万9683)(5905)(1772)


S (5万9049)(1万7715)(5315)


SS (17万7147)(5万3144)(1万5943)


SSS(53万1441)(15万9432)(2万4030)


 ダメージ表が視界に展開される。

 負担ダメージは、3割の、656。

 俺のHPはまだ14万以上。


 俺は一つの名案を思いついた。

 ずばり‼‼


 攻撃をひたすら耐えて耐えて、シャルルが戦闘に疲れて放棄するのを待つ‼ だっ‼‼


『それは名案と言わないと思いますが』


 マリーさんの冷静な声を俺は全力でスルーする。

 だってこれしか思いつかないんだもの……。


 ヒュイイイイイイ!!!


 突如、鼓膜を震わす甲高い風きり音が耳に届く。

 音の発生源はシャルルの、右手。

 彼女の右手が風きり音と共にライムグリーンに光出した。彼女の掌が手刀の型を取る。

 ライムグリーンの光が鋭く尖った槍のような形になっていく。 

 シャルルが腰を低く落とし、右腕を後ろに引いた。

 

 突進の構え。


 これは、やばい⁉⁉⁉、


 もうやるしかない‼ 精神的な負担は大きいがそこは我慢‼ Aクラスのダメージをひたすら耐え―。

 

 シャルルが足を踏み込んだ。


 疾きこと風の如く。


 シャルルが風と共に急接近、俺の目と鼻の先にいた。

「いっ⁉」

 っと思わず声をあげたと同時に、後ろに吹っ飛ぶ俺の体。痛みはないものの、腹に感じる、突き刺されたかのような感覚。

「ぐっ⁉」

 今度は俺の左わき腹に同じ感覚。体の進行方向が真後ろから急に右へと変わる。真横にぶっ飛ぶ俺にピタッとついてくるシャルル。


 フッ。


 っとシャルルの右手が動いたかと思うと、突き刺すように放たれるボディーブロー。

 俺は上空に突き上げられる。


 シャルルは俺の真下に―、


 ヒュン‼‼


 ライムグリーンの髪をなびかせ俺を追い越し、

 ヒュイイイイイイ!!!

 甲高い風切り音が後ろで聞こえた。

 風に弄ばれるように、俺の体がくるっと音の方へ反転する。


 シャルルの突き手が、俺の腹にまた直撃すした。

 真下に急降下。地面に仰向けで思いっきり叩きつけられた。耳をつんざく衝撃音。


 真上から猛スピードで迫り来るシャルル。

「うおおおおおいっ⁉⁉」

 咄嗟に体をひねり転がる。

 さっきまで俺がいた場所にシャルルが着弾。猛烈な強風が発生し、

「うおっ⁉ わっぷ⁉」

 俺は地面を転げ回る。

 体が止まってなんとか身を起こすも、両足に力が入らず立てない。がくがくと震えていた。視界の端にはダメージ判定。


ダメージ階級:AAA×4

負担ダメージ:2万3620

MP付与:7088


HP:11万7809/14万5000

蓄積マナポイント(MP)9930


「なっ⁉ 嘘だろ⁉ さっきHP14万以上あったのに⁉」

 ダメージ量が2万超え⁉ た、高すぎだろ⁉ 今まで1万すら超えてなかったのに⁉ ぼっ、ぼったくりだ‼‼

 俺は錯乱して飲み屋での料金に抗議するサラリーマンみたいなことを頭で訴えていた。懐かしいな……、あれは確か友人と、とあるガールズバーに行ったとき―、ってそんな回想に浸ってる場合じゃねえええ‼‼

 

 ダメージ階級AAA。

 単発のダメージは―。

ダメージ表を確認する。

 5905。

 Aランクの656から、一気にAAAランクの5905。

 俺の顔が強ばる。

 10発食らえば、軽く5万以上のダメージに達する。

 攻撃をひたすら耐えて耐えて‼‼ シャルルが戦闘に疲れて放棄するのを待つ‼‼

 という名案はもはや役に立たない。こんなこと思いついた自分にがっかりだよ‼

「くっ‼‼ 無傷……。守りだけは固いのね」

 苛立った声に、一気に体がざわつく。正面を向くと、シャルルが少し離れた所に立っていた。

 俺の脅えている顔をみて、シャルルが少しにやける。

「あなたの、その顔。追い詰められてはいるのね」

「くっ⁉」

 しまった⁉ はったりでもいいから、ポーカーフェイスでいるべきだった‼ だが、こんな常人離れした攻撃されたら、余裕なんて生まれるはずがない。

 するとシャルルが急に、とても穏やかな優しい声で、俺に語りかけてきた。

「ねえ? 教師を辞めるなら、もう攻撃はしない。どう?」

「…………」

 そんなの、飲めるわけねえだろ。

 俺は震える両足で立ち上がり、目元に力をこめシャルルを見つめる。

「そう……」

 シャルルが小さく低い声で呟いた後、彼女の右腕全体がライムグリーンの光に強く包まれていく。

 彼女が右腕を俺に真っ直ぐ向け、拳を握りしめた。

 右拳両側からライムグリーンの大きなアーチが出現する。右腕の上には鋭く尖った大きな矢。

 風が唸り声を上げる。

 シャルルの右手は、中世で見るような武器、バリスタの形に変わっていた。

 風の力を凝縮した、ライムグリーンに輝くバリスタ。

 俺の額から汗が止まらない。頬を伝い、地面に落ちていく。

 ダメージ階級は、AAAより上だろこれは。

 

 頭によぎるダメージS級。


 ダメージ表は、

S (5万9049)(1万7715)(5315)


SS (17万7147)(5万3144)(1万5943)


SSS(53万1441)(15万9432)(2万4030)


 単発でも1万超え。連続でくらう余裕なんてさらにない。

 シャルルが腰を落とし身構え、狙いを俺に定める。

「ねえ、死んじゃってもいいの」

「くっ⁉」

 その重苦しいシャルルの声に、ひるむ。

 どうすればいい⁉ 一体どうすれば―、


【シャルル‼‼ 攻撃をやめなさい‼‼】

「うおおいっ⁉」

 いきなりの怒声に思わずビックリした。


 この声は‼‼


 上空に大きな魔法陣が浮かんだ城の中央、中庭にあたるような広い場所で、ユリネさんの怒った声が響き渡っていた。

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