表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者ご一行のご指導ご鞭撻よろしくお願いします!  作者: おみくじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/23

勇者達の住むお城へ(13)シャルルの動揺とムラカミの宣言

 俺は空中で殴られた勢いに乗り、真下に急降下し、

「ぐっ⁉」

 城の廊下に叩きつけられた音が、辺り一帯に、鼓膜が痛く震えるほど響き渡る。

 俺の周りは小さなクレーターのように凹みひび割れが無数に走っていた。

 まあでも、なんとか城には帰ってこれたな。

「なっ⁉ ちょっと‼‼」

 突然聞いたことのある声がした。声の方に慌てて振り向くと、少し先の方に紅蓮髪のミディアがいた。ちゃんと服を着ている状態で。バスタオル姿じゃなくてほっとする。ミディアの後ろには、白銀の髪を覗かせ、隠れるようにして俺を見つめるライラがいた。

 2人ともびっくりした表情で心配げに俺を凝視している。

 そういや廊下を駆けだす時、ミディアが俺を追いかけてきてたっけ。そんでライラも一緒になって今この場所に来たってわけか。

 するとミディアが、俺のところへ近づこうとする。


 ぶわっ


 と肌に感じる強風。


 俺は急いで上を見上げる。迫りくる暴風をまとった美少女。

 ミディアに振り返り声の限り叫んだ。

「来るなああああっ‼‼」

 ビクッと立ち止まるミディア、と、鮮やかなグリーン髪が視界に映る。横目で咄嗟に捉えたのは、殺意ある表情。


「シャルル⁉⁉」「シャルちゃん⁉⁉」

 

 ミディアとライラの同時に叫ぶ声と、瓦礫が盛大に崩れる音が響き渡る。俺は廊下を突き抜け、さらに下へ叩きつけられていた。

 瓦礫の土煙があたり一帯に舞う。

 だが、下から突き上げるかのような強風で土煙が一気に晴れる。

 俺の目の前に一人立ちふさがる美少女。


 シャルル。


 シャルルが俺に向け手をかざす。

「なっ⁉」

 一瞬にして俺は暴風に吹き飛ばされ、背後の壁に激突しそのまま貫く。

 勢いよく吹っ飛ばされ出た場所は外。平坦な地面に、斜面から滑り落ちたかのように転げまわる。

 やっと勢いが止まり、俺はバクバクと大きな鼓動を体に感じつつ、大の字で仰向けになる。

 たっ、たく⁉ 無茶苦茶しやがって⁉ んっ? あっ、あれは?

 荒い呼吸で上を見上げていると、そこには大きな白い魔法陣が浮かんでいた。何かドーム球場の屋根みたいな感じだ。

 さっき上空でみた魔法陣と瓜二つ、……まさかここって⁉

 俺はバッと体を起こし立ち上がる。大きなグラウンドみたいなところの中央。急いで周りを見渡と、4つの塔がひし形を描くような形で配置されていた。間違いない、上空で見た場所に俺はいるんだ。てか魔法陣って浮いてたのね。


 ビュオオオ。


 突如、全身に感じる風。ばっと正面を見ると、シャルルがゆっくりとこちらに歩んでくる。

近づくにつれ感じる風の強さ、全身の肌寒さが増していく。

 ん? 全身?

 俺は、改めて自分の体を見る。

 大きく露出した俺の肌に、

 パンツ1枚姿の俺。

「なっ⁉ なんじゃこりゃあああああ⁉⁉」

『落ち着いて下さい』

「マ、マリーさん⁉」

 冷静なマリーさんの声音に慌てる。

「そ、その‼ スーツが‼‼」

『さっきまで勇者である彼女の攻撃を受け続けていたわけですから。仕方ありません』

 その言葉に、俺は口を紡ぐ。

 ふと、ダメージ判定が視界の端に出ていることに気付いた。

 

ダメージ階級:A×4

負担ダメージ:2624

マナポイント(MP)付与:788


蓄積ダメージ:A×4

 ヒットポイント(HP):14万1429/14万5000

蓄積マナポイント(MP)1072


 ダメージ量は少ないものの、かなり上位のダメージランクを連発されてたんだな。そりゃあスーツも無事ですまないか。

 俺が落ち込んでいると、『ふっ』とマリーさんが小さく笑う。そして、俺を励ますかのように、穏やかに話しかける。

『私の判断ミスです。ムラカミ様が、勇者である彼女達に服をはぎとられたい、という歪んだ性癖をお持ちということを忘れておりましたので。申し訳ござ―』

「おおおいいい⁉ 俺はそんな性癖持ってねえからああああ⁉」

 励ましと思った自分がバカだった。

『それはさて置いてですね』

「まさかの放置⁉ ちょっと待っ―」

『彼女には、勇者指導が必要かと思います』

「へっ?」

 マリーさんの言葉に、思わず間抜けな声を漏らす。

 勇者指導……って一体なに?

 少しの間の後、マリーさんが、『こほん』と、なぜか小さく咳払いし、早口で俺に告げる。

『勇者指導とは私なりに解釈した言い方です。教師という者は、生徒が問題を起こした場合、正しく導くため生徒指導を行うものです。ムラカミ様は、勇者である彼女達の教師ですから、彼女達を立派な勇者に導くのが役目です。ですので、そういうことです』

 

 強引に言葉を切ったマリーさんに俺は、思わず口元を緩める。


 生徒指導ならぬ、勇者指導、か。


 なんだか嬉しかった。マリーさんは俺を、勇者の教師として、


 認めてくれていると感じたから。


 ビュオオオオオオオオオオオオオ‼

「くっ⁉」


 全身に感じる強風。

 正面に意識を向けると、そこに立ちはだかる美少女。


 シャルル。


 ライムグリーンの髪が逆立ったかのように強風で煽られ、獲物を狩るような鋭い眼光で俺を見捉えている。


 お前を教師として認めない。

 そんな強い意思が宿った瞳。


 俺が弱くて力が無いから。


 シャルルは確かにそう言った。でも……

「なあ……」

「……なに?」

 身構えるシャルル。

 俺はシャルルの瞳をしっかり見つめる。もう一度確かめるかのように、俺は、あの言葉を口にする。


「認めないのか」


 その言葉にまた一瞬、彼女の瞳が微かに揺れた気がした。だが、

「そう。あなたを、認めない」

 鋭い眼つきで俺に訴えかける。

 彼女自身が口にした時もまた一瞬、瞳が動揺したように見えた。


 俺は、シャルルの瞳が見せた、微かな動揺に思いをはせる。強くて力のあるシャルルに必要のない、脅えるかのような動揺。

 そのなかに、教師を辞めさせる本当の理由が隠されている気がした。

 それが何なのかは……、今の俺には解らない。

 

 でもそれは―、


 これから探していけばいい。

 

 俺はシャルルに向けて微笑む。

 シャルルの鋭い眼つきがたじろぐ。どこか不思議がっている? いや、これは困惑しているってとこだな。

 その様子に俺はどこかしたり顔で、そしてシャルルに、なんの根拠もない、でも、確かな自信を持って、堂々と宣言する。


「俺は絶対に教師を辞めない‼」


 俺は、いつのまにか120%の超笑顔だった。

 シャルルは俺のその言葉に、笑顔に、目を丸くしていた。頬は緩み、口をぽかーんと大きく開けたかと思うと、わたわたと、せわしなく口を動かす。驚きと戸惑いの交じった表情をこれでもかと見せてくれる。10代前半のなんとも可愛らしい女の子がそこにはいた。今までのやんちゃな行いを帳消しにしたくなるくらい。って……、それじゃあ勇者指導できないじゃん。俺は教師として甘いのかなぁ……。

 するとシャルルが我に返ったかのように、怒りをあらわにした。

「ふっ‼ ふざけんな‼ っく‼ 辞めるって、力づくでも言わせてやる‼‼」

 シャルルは強くそう言うと、身構え臨戦態勢に入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ