勇者達の住むお城へ(9)白銀の髪の美少女とパンイチの青年
「いっ、いやあああああああーーー⁉」
ガガゴンンン‼‼
新たな塔の壁をぶち破り、
ボフン‼
「ぐへっ⁉」
体全体から感じる着地の衝撃。
ただ、床にベタンとうつ伏せで這いつくばっている状態を、着地と言っていいか疑問だが……。
ダメージ階級:D
負担ダメージ:24
マナポイント(MP)付与:7
蓄積ダメージ:D×1
ヒットポイント(HP):14万4053/14万5000
蓄積マナポイント(MP)284
視界の端に、異世界保険の力によるダメージ変換の数値を確認しながら、体の具合を確かめる。痛みは全くなかった。それよりむしろ、
ふわっ。
と体全体から感じる柔らかな感触。
俺は、柔らかな絨毯の上にいた。
そして視界の端に見える部屋っぽい雰囲気。瓦礫の土煙みたいなのはあまり漂っていなかった。どうやらミディアの部屋に突っ込んだ時よりも、盛大に壁をぶっ壊したわけでもないみたいだ。
よ、よし、とりあえずは。
俺は立ち上がろうと、四つん這いになった時だった。
「はわわわ……⁉」
ポフン。
俺の耳が、か細くてはかなげな女の子の声をキャッチした。そして、床に敷いてある絨毯になにやら腰を落ち着けるような音。
俺の心臓が早鐘を打ち出す。
お、俺はまた誰かの、そ、その女性の部屋に……。
四つん這いの状態で、下を向いていた視線を、恐る恐る上げると、
「あっ」
俺は思わず、見惚れて声が出た。
白銀の髪色
そして、淡いオレンジ色のふわっとしたワンピースのようなものを着た、お姫様がそこにはいた。
フランスとかヨーロッで見かけそうな、飛び切りの美少女。小顔で均整のとれた目鼻立ちに、銀色の瞳。
そして上品な光沢を放つ白銀の髪。
前髪はヘアピンで七三にきっちりと止められ、後ろ髪もしっかりまとめている感じだ。チラッとリボンみたいな紐がみえる。
そのきっちり整えられた髪形は、ふわっとしたワンピースの柔らかい印象とは対照的で、気真面目さを感じさせる。でも、どこか彼女に似合ってない印象があった。
もっとふわっとした髪形の方が、お姫様ぽくって似合いそうなんだけどな。
そんな事を考えながら、あらためて彼女の顔を眺めた。
えっ?
白銀の髪の美少女は、青ざめた驚愕の表情で俺を凝視していた。
俺は強烈な焦りがこみ上げてくるなか、彼女の今の様子を一つ一つ捉えていく。
尻もちをついている。そして、何かに脅えるように、カタカタと体を震わしている。
そして、膝を立てている白い両足からチラリと覗く、鮮やかなライトグレー。白の細いラインが入った縞のパンツがお目見えしていた。
「!?!?!」
バッと、美少女が慌てて両足を地面に伏せた。
顔を赤くし、身構える白銀の髪の美少女。
俺は慌てて口を開く。
「あの―」
「⁉⁉⁉」
美少女はものすごい勢いで後ずさった。後ろにあった壁にピタッと背中をひっつけ、警戒心MAXの目で俺を捉えている。
うん、そうだよね、普通そうなるよね。
彼女は青ざめた表情で、口を金魚みたいにパクパク動かしながら、何やら言葉を発している。
えっ? 声が小さくて―。
俺はそろっと立ち上がり、彼女へ足を一歩踏み出した。
「⁉⁉⁉」
ガタガタと震え出す美少女。
い、いかん⁉ 完全に怯えている‼‼
「い、いや、違うんだ。お、落ち着いて」
俺はこの状況に焦ってしまい、不用意にも怯える彼女へさらに距離を詰めてしまった、その時だった。
パチパチン‼‼
彼女の白銀の髪が突如、小さく弾けるような音とともに淡い光を放ちだす。そして、
ピョコン!
彼女のきちんと整えられた髪形に不釣り合いな、勢いよく飛び出た髪が一束。漫画で言う、アホ毛みたいなのが彼女の頭にあった。
俺は突然の出来事に唖然とする。と同時に、白銀の美少女は大きな声を発した。
「近づかないでください‼‼ 変態さんー‼‼」
彼女がそう叫んだと同時に、歪で小さな光の筋が放たれた。その光が俺の胸に触れるや否や、
ビリビリビリ‼‼ 「あだだだっ⁉⁉」
体に走る電撃。あまりの出来事に思わず両膝を付く。だが電撃の痛みは一瞬だった。今のは一体⁉ というか痛みがある⁉ なぜ⁉ そしてまたもや変態呼ばわり⁉
俺は少し落ち込みながら、白銀の髪の美少女を見る。
彼女は髪だけでなく、体全体が淡い光に包まれていた。パチパチパチと、静電気に触った時のような小さな音を響かせ、真っ赤な顔をしながらも、必死に俺から目を逸らさないようにしている。そしてなにやら、俺に訴えかけていた。小さな声に耳を傾ける。
「……パンツ……ですか!」
「えっ? パンツ? がなに?」
俺がすっと立ち上がると、尻もちをついていた彼女もビクッと条件反射のごとく立ち上がる。そして慌てながら口を開く。
「なんでパ、パンツ……た……んですか!」
へっ?
俺は聞き取った言葉から必死に解読を試みる。パンツ……。彼女のグレーの縞パン? を、なんで……見たんですか? つまり俺。はっ!
俺の頭が答えを見事に導き出した。俺は急いで言葉にする。
「なんでパンツ見たんですか! か‼」
「⁉⁉⁉」
彼女が顔を赤くし慌てる様子を無視し、俺は話を続ける。
「いやあれは不可抗力なんだ‼ 君の履いている、グレーの縞パンを見たのは‼」
「⁉⁉⁉」
俺の言葉に口元をわなわな震わせ、驚愕する彼女。だが俺は誤解を解くためにも、大事なことを二度言わねばならない。ってどこかの偉い人が言っていた。
「ほんとに見るつもりは無かったんだって‼‼ 君の履いている、ライトグレーの縞パ―」
「なんでパ、パンツ姿なんですかーーー‼‼」
「いいっ⁉」
突如、白銀の髪の美少女が大きく叫んだ。いきなりの大音量に俺は驚く。
彼女は顔を真っ赤にし、頭に生えてるアホ毛をピコピコ揺らしながら、俺を睨みつけていた。その怒ったような顔つきに、俺はたじろぎながらも、彼女が言ったある言葉をおもむろに繰り返した。
「パ、パンツ姿?」
「そっ、そうです‼」
彼女がしどろもどろに答える。
「えっと……、それは―」
誰が?
と言いかけたとき、彼女がおずおずと俺に指を刺す。
パンツ姿=パンイチ=俺
……、いやいやいや。そんなことあるわけ―。
ふと、彼女のそばに姿鏡があるのに気が付いた。そこに映っていたのは、
パンツ姿の、一人の青年。
誰? この人?




