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思い出の品 5年越しの夏休み

作者: 仁門創司

8/26。誤字・脱字・一部を修正・加筆しました。


幼い頃から特に女子達と話さず過ごした小中学校時代。

友達と言えば男友達しかいなく、女っ気が全くなかった。

少年時代は鼻垂れ小僧としか言いようがなく、趣味はゲームにおもちゃ。


小学校低学年の頃はおもちゃが大好きであったが、4~5年生の時には卒業した。

最後に印象に残ったおもちゃがあった。

だが買う事も買って貰う事もなく終えた。

今思うとおもちゃを買うのが少し恥ずかしい年頃だったから諦めたんだと思う。

それでおもちゃを卒業したんだ。



でも、おもちゃを卒業するくらいに何となく買ったおもちゃがあった。

大人になって知ったが、いわゆるチープトイと言うものだ。

当時は普通のおもちゃだと思い買ったものだが、

よくスーパーの端っこやお土産コーナー、病院の売店等で見かけるアレだ。

普通のおもちゃとは違うんだと気づいたのは大人になってからであった。



10歳くらいの頃。

あれはおばあちゃんの病院に付き添いに行った時、病院の売店で見かけた。


「はいお小遣い。なんか欲しいの買わんしょ」


おばあちゃんから500円のお小遣いを貰った。

そしてその病院の売店で、あるおもちゃを見つけた。

これは子供的には買うしかない状況。

合体ロボだ。

合体ロボなのに安い。

その1号マシンを買った。



しかしながら買った後に気が付いたが、

それは2機目がないとロボとして完成しないものであった。


1号マシンと2号マシンが合体して一機の合体ロボになるものであった。

1号が単品でロボとマシンに変形して更に合体ではない。

1号も2号も単品だけではマシンのみの状態と言う、

子供に良くあるやっちまった買いだ。



さすがに2号を買うお金がその場ではなかった。

当時の田舎の小学生のちょっと貰うお小遣いで500円と言うのは結構多い方だ。


しかしながらチープトイだからか、合体ロボでも500円しないくらい安い。

でも、子供である当時のぼくからすれば、

親等に買って貰うそれとは違って高価なものには変わりない。


当時の金額的にもおもちゃは今の時代よりも安い物であったし、

それで500円前後と言うのは低価格玩具の中では割と高額の方だ。

1号だけ買ったまま、その後2号を買ってロボを完成させる事も無く、

それで遊ぶ事も忘れておもちゃを卒業して忘れ去られてしまう事となった。



そして中学時代。

中学校ではゲームしか能がなく、勉強もろくにしなかった。

ゲーム以外特に取柄が無い僕は女子から好かれるはずもなく、

「男子はあっち行け!」と言う学校の空気の所為もあってか、

まったく女子と話す事もなかったし、女子と話したいとも思わなかった。


ゲームしか取り柄のない鼻垂れ小僧だから仕方がない。

毎日ゲーム以外の楽しみが無くがつまらない日々。

何か楽しい事は他にないかな。

ないな。

そう言う毎日であった。


そして高校受験。

美術と技術以外は成績の悪い僕はギリギリとも言えるだろうが、

何とか偏差値普通くらいの高校に受かった。



そして高校生活が始まった。

女子から当たり前に話しかけられる。

と言うか、あの小中学校と比べると女子は普通に男子に接していた。

どうやら他校の話等を聞く限り、本来これが普通らしい。


当たり前に話しかけられるも対応の仕方が分からない。

特に話すネタもないし。

「はあ、そうですか」くらいしか返せなかった。


それ以外は小学校の頃からの男子友達の他、

高校からのゲーム友達が増えたくらいでいつもの毎日は変わらなかった。

学校も楽しくないのは変わらない。

毎日何となく通ってるだけの毎日。



そして、高校生になった初めての夏休み。

家族で泊りがけの旅行に行く事となる。

3泊4日だ。

高校一年の若造からすれば結構長い。


実はそこには以前も行った事がある。

あれは5年前か。

小学生の頃だ。


あの時は1泊2日だった。

それでもとても楽しかった。

海、石炭化石館、ハワイアン施設。

子供から見れば何日でも楽しくすごせる素晴らしい場所だった。


そこへ5年ぶりに赴く事となる。

懸賞で当たったのだ。


高校一年の夏休み。

5年ぶりの旅行。

普通ならば友達や彼女と行くのであろうか。

親離れしたいところだったが、父母と久々に家族旅行に行った。



そして朝から出発し、いろいろ見回ってから3日も泊まる事となる旅館についたのは夕方の事。

空を見上げると、暗くなった青空にピンクに染まった雲。

落ちていく夕日が綺麗だった。

夕焼け空を見ながら旅館に入る。

そこで同じく家族旅行で来たと言う少女と出会う事となる。



旅館のごちそうである夕飯も食べてお風呂に入った夜だった。

ゲームやら何やら置いてある休憩所。

一目見たら若い子なら間違いなく行くコーナーだ。

そこで声を掛けられた。


「こんばんは」


僕に声を掛けてきたのは、同い年くらいの少女であった。


「?・・・こんばんは」


女子とまともに話した事なんてないからか、

何となく気まずいと言うか反応に困った。

何で見ず知らずの男子に話しかけて来たのか分からない。

それでも彼女はニコニコしながら話しかけてきた。


「何してるの?」

「いや、ゲームでもしようかと」


うわぁ・・・なんだよう・・・何を話せばいいんだ。


「こういうゲーム好きなんだ」

「はい、まあ、そうですね・・・」


とりあえず対戦格闘ゲームだ。



「どこから来たの?」

「歳はいくつ?」

「どこ出身?」


何か良くわからんが色々話しかけられる。


「15です。高校一年です」

「私より少し下だ~。住んでるところも割と近くだね!」



更に彼女が言う。


「ここには何拍ですか? 私は3日間!」

「うちも同じく3日です」

「同じだ~!初日?」

「はい」


何故か彼女は喜んだ。



そして、お盆で来た親戚や、おばあちゃん達から

たんまりお小遣いを貰っていた僕はゲームで遊び続ける。

彼女も一緒に遊んだ。

協力プレイや対戦もした。

そしてクレーンゲームもある。


「あ、これかわいい~」

クレーンゲームの小型のぬいぐるみストラップだ。


「ちょっとやってみようかな」

僕は100円入れてやってみた。

小さなぬいぐるみの山。動かない。


「あ~、これ駄目なやつだね」

「ですね」


こんなに景品があるのに動かないやつだ。

大したものでもないのに何て厳しい設定にしておくんだ。

ちくしょうめー!



すっかり遊んで夜遅くなり、両親が迎えに来てしまった。

「もう遅いから部屋に戻ろ」



そして向こうの両親も彼女を探しに来たのか現れた。

「おーい、そろそろ戻ろう。また明日もあるよ」


「「はーい」」


お互い返事をしてその日は別れる。

両親達も軽く挨拶をする。


「じゃまたね」

「おやすみなさい」


今日は楽しかった。

楽しい思いをしたまま疲れてぐっすりと眠った。



そして、翌日の朝。

ロビーまでジュースを買いに来ると彼女にまた会った。


「おはよう~」


昨日の彼女だ。


「おはようございます」


挨拶を返す。


「今日はどこか見に行くの?」

「海行った後、石炭化石館に」


石炭化石館以外は適当に行く予定だった。


「私も石炭化石館行くの!! 後でまた会えるかもね~」

「お~、そうなんですね」


しかし彼女はよく分からないがこう言った。


「何か迷惑だったらごめんなさいね」


なんだろう、返し方が不味かったのか、

それとも自分でしつこいとか思ったのかは知らないのでこう返した。


「いや、そんな事はないだすよ」

「だすよって(笑)」


女子とあんまり話さなかったので少し口調がおかしくなってしまった。

受けたっぽいからいいや。


「じゃあまたね!」

「また~」



両親の元に戻って出かける準備だ。


「昨日のかわいい女の子とまた話してたんだな。仲良くなって良かった事~」

「べべ別に何でもないよ!」


親からこう言う事言われると恥ずかしいー!


そして出かける。

まずは海へ行って遊んだ。



遊ぶと行っても高校生で両親となんで特に普通の海遊びではなく、

少し浜辺へ寄って散歩をし、海の家でご飯食べただけ。

後は釣りの出来るところで竿を貸して貰えるところがあったので釣りをした。


その後、石炭化石館へ行くと彼女がいた。


「あ!こんにちは~」

「どうも」


彼女一家も他に寄った後、ちょっと前に着いたようだ。


「お土産コーナー先に見たけど恐竜の化石のおもちゃ売ってたよ!」

「前来た時買いました。あれ好きだったな~」


そんな話をしつついろいろ見回る。


そして彼女とはいつの間にかとても親しくなってしまい、

旅行の目的そっちのけで泊まってる間、こうやって毎日会って毎日遊んだ。

本来は観光目的のはずなのだろうが、

どうせ懸賞で当たったものなので行きたいから来たのでもないし、

何より彼女と遊ぶのが楽しかった。

いつの間にか互いの両親達も仲良くなり一緒に話したりした。

翌日は一緒に出掛けたりもした。



たった三日足らずの付き合いだが、

少年から見ればその時間はとても長いはずだがとても短く感じて、

何よりとても楽しい毎日だった。

女子とこんなに仲良くしたのも初めてだった。

毎日が楽しくて、とにかくとにかく楽しかった。


そして彼女はこう言った。


「勇気を出して声を掛けてみて良かった!

 私、学校とか何となく毎日が楽しくなくて。 

 君とは何となく同じ感じがしたから話せるかな~って」


彼女はそれまで、毎日退屈して面白くなかったと言っていた。

僕と似てる。ゲーム以外楽しくない日々。

そこで僕と出会い、久々に楽しい毎日を過ごせたと言う。



一緒にいろんなところを観た。

一緒に写真も撮った。

女の子と一緒に写真を撮るのは初めてだ。

女子と遊んだり何もかも初めての事ばかりだった。

良い経験、思い出となった。



しかしそれはやってきた。

お互い宿泊も終わって帰る時が来たのだ。

しかし、最後に彼女からプレゼントを貰う事となる。


「普通のお土産とか面白くないし散々買ったろうし、良かったらこれ貰ってよ~」

「え?・・・こ、これ!!」


それは僕が小学校の時に2号を買わずに完成しなかった、

例の合体ロボの下半身になるあの2号マシンだ。


「これ昔上半身の1号だけ買って持ってる! 2号買えなかったんだ!!」

「なんと! 私と逆だね!良かった! 」


逆って? 

しかし、なぜ彼女がこれを?


「小学校の頃、ここに泊まったんだ。

 その時にここのお土産コーナーでこの2号だけ買ったんだけど、

 1号ないとロボットにならない事知らなくて他の店探してもなかったから諦めた」


子供の頃のぼくと似てた。


「それで久々にここに来る事になって思い出して、

 お土産コーナーとか古いの良く置いてある事多いから

 1号売ってないかと思って忘れない様に箱ごと持って来たの。

 でも無かったし、何となく男の子だからこう言うの好きかなと思って」


「・・・ありがとう! 大切にするよ!」


懐かしい気持ちを思いながら彼女からありがたく受け取った。

僕はお返しに特に上げれるものがなく・・・なんて事もなく、

最初の日に彼女がかわいい~と言っていたぬいぐるみストラップだ。


あの後こっそり部屋から出て来て取っていたのだ。

小さいものなのに千円以上使わせやがって・・・

しかし、それが報われる時が来た。


「じゃあ僕はこれ上げる!」

「あ!あの時取れなかったやつ取ってたんだ! ありがとう!」


彼女との別れが来た。


「じゃあね・・・バイバ~イ!」

「・・・バイバイ!」



メール等の連絡先を聞く事も出来ずそのまま別れた。

彼女は勇気を出して話しかけてくれたのに、僕は勇気を出せなかった。

一期一会の出会いとはこう言うものか。

その後、僕は何事も無いゲームだけのつまらない毎日へと戻った。



変わったのは彼女から貰った例の合体ロボの2号マシンと、

子供の頃に買った1号マシンが合体して一つのロボになった事だ。

久々に子供の頃のおもちゃ箱から1号マシンを引っ張り出して合体させた。


「おおぉ~」


幼き日の小さな夢が叶った。

上半身になる1号と下半身になる2号が合体してついにロボが完成したのだ。


何と言う事だ。

懐かしくて涙が出てくる。

ありがとう・・・ありがとう。

大事にこのまま飾る事にした。


家に遊びにきた友人達らはそれを見て言う。

「昔完成しなかったあのロボットが合体して飾ってある(笑)」


そうだよ。

合体したんだ。

完成したんだよ!

もう半分じゃないんだ!!



大事な思い出の品となった。

それを見る度に彼女を思い出す。

どうしてあの時に連絡を交換出来なかったのか。


彼女とあんなに話して仲良くなったのに所詮は一期一会で終わりなのか。

甘酸っぱい思い出で終わりか。

僕が勇気を出さなかった所為なのかな。


それとも彼女にとってはそれっきりの方が良かったのかな。

僕に付き纏われたら迷惑だったかな。

そう言うのも良くある話かもな。

でも僕はその合体ロボを見ながらいつも思い出すんだ。

彼女に恋をしてたんだなと。




そしてあれから5年経って就職もし、一段落した夏休み。

今度は僕が親孝行として思い出のあの場所に両親を連れて旅行に行く事となる。

あの時と同じ旅館に同じ日数で泊まりに来た。


着いたのはやはり夕方で、旅館の外に見えるのはあの時と同じ空に思えた。

暗くなった青空にピンクの雲。

落ちていく夕陽。

夕焼けが綺麗であの日を思い出す。

旅館に入ろうとしたその時、女の人から声を掛けられた。


「あーっ!あなたは! おひさしぶりですー!」



そこでなんと、僕は彼女と再び出会った。

5年前のあのロボットの下半身をくれたあの彼女だ。


「あぁっ!! お久しぶりです!」

「なんて偶然なのでしょう!」


偶然なのか。まさかここにしょっちゅう旅行に来ているのかな?

自分と違って彼氏なんかと旅行だったらと少し残念な事も思い浮かんだので聞いてみた。


「ここには良く来るんですか?」


「いいえ、あの時以来ですよ!

 就職して一段落して夏休みになったので親孝行を込めて思い出の場所へまた来たのです!」


「うちと同じですね!」


お互い笑った。

懐かしくて嬉しかった。


「そういやあの時に頂いて完成した合体ロボ。今でも大事に飾ってるんですよ」

「なんと本当にー!? 嬉しいな~」


そして携帯電話を見るとぶら下がるものがあった。

なんと彼女はあの時のストラップをいまだに付けていた。


「それあの時の!?」

「うん。大事な思い出の品だから」


大事な思い出の品か。

お互い大事な思い出となっていたようだった。

良かった。


今度は聞いてみよう。

恋人がいるかは知らない。

でも、でも今度は僕が勇気を出してみよう。

駄目であったとしても後悔しない様に。

連絡先の交換をお願いした。

とある家の中。

まるで御神体の様に飾られた小さな合体ロボと使い古されたぬいぐるみストラップ。

そしてそれらが見守る中、家族達が写真を見て思い出に浸っていた。


「懐かしいなぁ~」

「若い!青春だね~」

「これお父さんとお母さん?」

「そうだよ。これはね~」


END


初心者なので誤字脱字が多くて何度か修正しております。

評価して頂いた方ありがとうございます!

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