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自己焼却の魔法使い《セルフファイア・ウィザードリー》  作者: 煉樹
第三章 魔術総本山 ヴェネト
30/73

人形舞踏――俺の、勝ちだ

「へー。面白いことやってるじゃん」

「そう――って、しゅ、シュヴェスタさん!?」

「うぃっす、マリー、おはよ。っと、こっちはシオンじゃん。結構久しぶりか?」

「……ご無沙汰しておりますー」


 長イスの傍らの壁にいつの間にかもたれかかっていたのは、何を隠そうアイアスの師であるシュヴェスタ・ラインベリーその人だった。


「しっかし、アイアスの様子を見に行ったらいなくて、書き置きがあったから来てみたら、これだからなー」

「え、えーと……講義中連れ出しちゃってすみません……」

「んー? 別に怒ってるわけじゃねーよ? ……あいつは部屋でいろいろやらせるより、こうやって、体とか動かした方が、いいかもしれねーしなあ」


 そういって、対峙する二人を顎に手を当て眺める。


「でも、さすがにミストフェレスの譲ちゃん相手は、あんまり意味ないかもしんねーなあ」

「……まぁ、当然ですよね……」

「そりゃあな。……だって、俺があいつにやらせた術式なんてまだ火よ(イグニス)ぐらいだぜ?」


 そういって、ケラケラと彼は笑う。


「マジですか……。ていうか、全然進んでないじゃないですか」

「俺ぁ、こう見えても論理派なのよ。……まぁでも、あいつも自分でそれなりに勉強してたみたいだし、それに――」

「……それに?」


けれど、続きを聞く前に、戦況が、動いた。



「ざんねーん。時間切れー。あたしってそんなに気が長くないんだ。ごめんね」


 そう言うや否や、フェリィは勝負を決めに、術式を編む。


「其はすべて一のために一はすべて其のために。数となり裂き、煌け!」


 その詠唱を聞いて、眉を顰める。


「これは……っ!」


 地魔術第二級魔術・塵槍ハステロイ

 フェリィの得意とする地魔術にはあまり多くない、攻撃的な魔術だ。


 しかし、アイアスももちろん、このまま負ける気などなかったようだ。

 詠唱が始まった瞬間に、地を駆ける。


 魔術の詠唱は中断が許されない。なぜなら、練った魔力シカトゥールが行き場をなくせばほぼ例外なく、それは術者自身を傷つけるからだ。


 それを、アイアスが知っていたのかはわからない。

 けれど、もしかしたら、彼は本能で、待っていたのかもしれない。

 だって、シュヴェスタの言が本当なら、彼は未だにほとんど魔術が使えないのだから。

 そんな彼が、フェリィに勝とうと思うのなら、それは、今しかない。

 つまり、フェリィが長口上の術式を唱える、今この瞬間――!


「――塵槍ハステロイ


 けれど、そうであるからこそ、熟練の魔術師になればなるほど、詠唱と魔力変換のスピードは上がり、隙が少なくなる。

 フェリィはその隙を、与えなかった。

 塵槍は、空中の塵を集めて固め、放つ魔術。

 おそらく始めは魔術をアイアスの人形ドールに向けて放とうとしていたはずだ。

 けれど、こうなったからには、身を守るために使うのではないだろうか。

 そういった臨機応変さもまた、優秀な魔術師に求められる素養だ。


 けれどもちろん、それは魔術師に重要な要素では、ない。

 魔術師に求められるもの……それは、やはり、魔術そのものの、技量。

 そして、この塵槍ハステロイは、術者の技量次第で槍の生成量、大小を大きく変えることができる――。


「っ! これは――!」


 フェリィが生み出した槍の量。そして、その大きさは、想像を遥かに超えていた。

 アイアスの視界はおそらく槍以外見えないほどだろう。それほどまでに、圧倒的な量の槍が中空に浮かぶ。

 これが地を穿てば、アイアスの行く手を阻むことは間違いない。そして、身動きを封じた後に、人形ドールを落ち着いてつぶす。

 単純明快ゆえに、隙が無く、強い。


 フェリィという少女は、その奔放さに反して、魔術の扱いに関しては一途なのだ。


 しかし、その視界を覆うような槍に対して、アイアスは、ひるまなかった。


 ドドドドドッという思わず目を瞑りそうな音と共に行方を遮った槍群を、彼は、自らの服を脱ぎ、巻き取るようにして、強引に逸らす。

 けれど、槍の勢いまでは完全に殺すことなどできない。


 しかし、彼はそれすらも気にしなかった。


 そのまま、自らの体に傷がつくことも厭わず、隙間を抜け、フェリィに迫る。


「……ぅおぉ!」


 裂帛の気合いと共に狙い違わぬ下段蹴りを放ち、フェリィを転ばせる。

 そして馬乗りになり首元を右手で押さえつけ、言った。


「俺の、勝ちだ」



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