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三人七色 〜愛物語〜  作者: 逢沢零
chapter.2 SEVEN COLORS
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七色の儚い光

待ち時間は嫌いだ。

大学の入学式なんて特に大事な話などないから。


教授だか先生だかの話なんて、暇な時間でしかない。早く終わって、由奈と大学の講義棟を回りたくてソワソワしている。


そんなことを考えてるうちに、式は終わった。


「由奈どこだろ」


「ここ」


「うわぁっ!」


背後から由奈の声がして、びっくりした。


「可愛いな。 ビックリしすぎじゃない?」


「後ろから来るからだよ。 回ろうか」


「ごめんごめん。 どこから行く?」


「食堂かな」


「ここの大学食堂美味しいらしーよ」


他愛もない話をしながら、歩き回る。


色んな景色を頭に入れながらふと、とある女の子に目がいった。


「ねえ、あの子見たことない?」


「どの子?」


「あの子」


由奈が私の指のさす方を見た。


「ほんとだ、どっかで見たことあるかも」


「高校同じだったのかな?」


「うーん、どうなんだろう」


由奈は気にしいなところがある。

気にしだすと止まらないのだ。


ふとその子が振り返った。


やはり思い過ごしではない。


必ず会ったことがある。


謎めいた確信をもっていた。


プライベートで2人とも会ったことのある人なんて本当に限られている。

記憶を辿るけど分からずじまいだった。


その日は由奈のお家で、ご飯をいただく予定だ。


「だいたいマップは頭に入ったかな?」


尋ねてみた。


「そだね。 もう帰ってもいんだよね?」

「うん。 楽しみだな。 由奈のお母さんのお料理」

「そんな期待しないでよ。 普通だから」


「それはそうとあの子誰だったんだろ」


やはり気になり口に出してしまう。


「気にしてんねー。 珍しい。」

「会ったことある気がするんだよね」


この謎めいた確信はどうやら確固たるものらしい。

人違いとは思えなかった。


少し疑問符を残しながら由奈の家に到着する。


「お邪魔します」

「ただいま」

「いらっしゃい、美緒ちゃん。 おかえり、由奈」


由奈のお母さんが笑顔で迎えてくれた。

柔らかい雰囲気だが、それでいてかなりしっかりしたお母さんだ。

由奈が、しっかり者に育ったのは間違いなくお母さんの影響だろう。


「ごめんね、美緒ちゃん。 大したもの作れなくて。 それに夫もいないし」


「いや、結構大したものばっかりですよ。 お父さんはお仕事ですか?」


「最近忙しいらしいよ?」


少し会ったことのあるお父さんはかなりの仕事師だった。

あまり由奈には仕事の話をしないらしい。


「頑張ってくれてるからね、責められないわ」


由奈のお母さんの曇りのない笑顔に、お父さんへの愛を感じた。


中村家はかなり仲良し夫婦、仲良し親子といったイメージだ。


物腰柔らかなお母さん、おっちょこちょいだが、仕事師のお父さん、2人を足して2で割ったとしか思えない由奈。単純に羨ましかった。


「美緒? どした? 遠い世界に旅に出てるの?」


由奈に声をかけられ我に返る。


「ごめんごめん、ボケっとしてた」


由奈のお母さん特製の唐揚げを頬張った。


「美味しー。 美味しすぎる」


「ありがとうね。 たくさん食べてね」

「ありがとうございます!」


「そう言えば大学はどうだった? かっこいい男の子いた?」


母として気になるところなのだろう。


「だだっ広い感じかな?」


かっこいい男の子の下りはスルーだ。


「そうなの? あんまり大きくないって聞いたけど」


スルーすらスルーするお母さん。


下手なダジャレの完成だ。


「結構広い感じしましたね」


「何はともあれ楽しいキャンパスライフの始まりね。 若いっていいわねー」

「やめてよお母さん。 恥ずかしい」


三人で笑い合い、ご飯をいただいた。


ご飯をいただき、家へ帰る電車の中でふと思った。

美神くんは、元気だろうか。

噂では隣の県の大学にいったようだ。


寂しさは隠せないが、由奈がいてくれることに感謝していた。


酸味強め、辛味入り、苦味たっぷり、甘さ控えめの恋愛はまだ終わりそうにない。

虹色のキャンパスライフ。


美しいはずの大学生活。


そこに彼はいない。


そっと夜空を見上げる。


彼もこの空を見ている気がした。

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