美緒の占いという名の人生相談
「どれだけ身体が近くにあったとしても、心が繋がっていなければそれは孤独と同じよ。 同時にどれだけ遠く離れても、心が繋がっていれば2人は永遠の親友でいられるでしょうね」
深いものだった。由奈の笑顔が浮かんだ。
聞きたいことはもうひとつある。
「好きな人に彼女がいるんです」
「なるほど、言いたいことは分かるわ」
「どうしたらいいでしょうか」
またも戸惑いを感じる。
「愛する人の幸せを願うこともまた愛」
その答えは私の生涯に残る言葉となる。
占いを終え、ふと思った。人生相談じゃね?今の。自分にツッコミを入れていると由奈と合流し、軽い会話をする。
「終わったの?」
「うん!」
「じゃあ帰ろっか」
由奈に先導されるように歩き出す。
卒業旅行と言っても1泊もしない日帰り旅行だ。最後に由奈に聞いてみた。
「由奈は、好きな人に彼女がいたらどうするの?」
聞いたあとに後悔する。
気を遣わせてしまうだろうか。
「愛する人の幸せを願うこともひとつの愛。 なんじゃない?」
由奈は占い師になれそうだ。
「ははっ」
「どした?きついこと言われて頭おかしくなったの?」
サラッとひどいことを言う。
いや、言える仲なのだ。
「いや、逆かな」
由奈の頭の中のはてなマークを鎌倉に残し、家路に着いた。
楽しい思い出は一瞬。
もうすぐ卒業式を控えていながら、少しフレッシュな気持ちになれた。
これも全て由奈のおかげだろう。
〜卒業式当日〜
友人の少ない人にとって卒業式とは退屈な行事。
由奈以外ほぼ友人のいない美緒は、集合写真のみ写り、あとは由奈と写真を撮りまくっていた。
涙を流すこともなく終わった卒業式に、寂しさを感じながらも、これからも由奈と一緒にいれることを安心する。
ここに、美神くんがいれば。
淡い願いは叶うことを知らない。
chapter.1 長く短い初恋 〜ℯꫛᎴ〜
彼への思いに、
終止符は打たなかった占い師。
その優しさに、
私は涙を浮かべる。
そのあなたが、
将来親友になるなんて、
誰も予想しなかった未来。
未来の見えるはずの、あなたですら。