エニグマ占い師
いつもの駅での待ち合わせ。
いつもは嫌いな電車内の時間も、今日は全く気にならなかった。
由奈がウキウキしてる顔を想像しながら、改札に向かう。
「おはよ!」
由奈の顔はめちゃくちゃ明るい。
「おはよ!」
予想通り元気いっぱいだ。
由奈と私の気持ちを表すような眩しすぎるくらいの晴天だった。
鎌倉に着いてからは、由奈に引っ張りまわされた。
神社巡りからの参拝、ちょっとしたカフェでの休憩などなど。
楽しくて仕方がなかった。
「あそこだよ!」
「言ってた占い?」
由奈が指を指した先は、謎めいた建物だった。それっぽい占い師の館だ。
「何聞くの? 占い師さんに」
「恋愛運と美緒とずっと仲良くいられるかだね!」
迷いなく答えた由奈に、友としての永遠を感じる。
占いとはなまけものの運命。
そんな歌詞を聞いたことがある。
偏見しか持っていなかったが、意外と若く私たちとほぼ変わらない年代の美人な占い師で、背も高くいわゆるモデル体型の女性が出てきた。
「お願いします」
おしとやかに言われる。
「お願いします」
優しい声色が余計に占い師としての説得力を高めている。
何故か戸惑いを感じた。
「どういった悩み、相談事をお持ちで?」
聞きたいことはもちろん決まっている。
「さきほど入ってきた女の子は私の親友なんです。 ずっと一緒にいられるでしょうか」
「ふふっ」
怖めな笑い方をしている。
これも占い師の基本なのだろうか?
「な、なんですか」
「失礼、同じ質問をされたから驚いたわ」
顔が真っ赤になっていないか心配だ。
恥ずかしくて仕方ない。
「顔が赤いわよ。 何も恥ずかしがることなんてないのに」
「い、いえ。 すいません」
意味もなく謝ってしまう。
「さて、話を戻しましょう。 答えから言うと、ずっと一緒にいることは不可能です。 同じ仕事場になれるかも分かりませんし。それでも」
一旦間が空いた。
信じるか信じないかは私次第。
占いなんて、
所詮はまじない。
それなのに、
君との友情の、
永遠を信じていたいと願う。