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初恋の味
初恋が淡いものだとは母から聞かされていた。
淡いどころかほろ苦いすら越えて、ただただ苦い。
むしろ辛味まである。
すべてを知った由奈は随分と気を遣って
「新しい恋見つけな? ね?」
なんて言って慰めようとしてくれる。
そんな簡単に割り切れるものなの?
そんな疑問に答えを出すのも面倒に感じるほど、私は彼を好きだった。
とはいえ所詮は高校生の恋愛。
そんなことを言うのは簡単なのに、2人の邪魔なんて出来るはずもなく、見てるだけの恋になったのは2年前からだ。
もうすぐ卒業なのに、何も出来ないまま終わるのは嫌だった。どうせ終わるなら忘れさせてほしい。
中途半端に好きなまま、中途半端に愛したまま終わるのはつらいもの。
なにより、愛したままの別れなんてあまりにも寂しい。
ビタースウィートな恋愛模様。
彼の目に私は映らない。
辛くても悲しくても、
私はあなたしか見えない。
蜃気楼のような恋。
戸惑いすら覚える霧の中に、
君を見た。
幻でもいい。
君の手を握らせて。