出会いは別れへの加速装置
プロローグ
その恋に名前はない。
一目惚れではなく、長く寄り添ったから生まれた恋心でもない。
遠目から見ているだけの恋。
それが私の初恋。
これはきっと、世界で一番くだらない恋。
〜本編〜
学校への電車へ乗った。
都会の電車はうるさい。
車掌のアナウンスはまだしも、男の騒ぎ声やギャルの下事情まで聞こえてくる朝の通学は、美緒にとって最悪の時間だった。
いつからだろうか、通学が嫌いになったのは。そんなことを考えてるうちに高校の最寄り駅に着く。
ごった返す駅のホームで、改札に着いた瞬間、遠くから
「美緒ー」と呼ぶ声に気づく。親友の由奈だ。
「おはよう」
呼ばれた声に返すように挨拶をする。
「おはよ」
軽いあいさつを終え高校までの道を歩く。
「今日の一限なんだっけ?」
いつもしてくる質問だ。
「国語だったはず」
そんな話をしてると、私の好きな人が横切っていく。
美神透、大人しい性格で裏表のない人当たりの良い男の子。話したことは数少ないけど、何故か好きになっていた。
「好きなら告白すればいいのに」
サラッと由奈にそんなことを言われたこともあったけど、
私には告白なんて出来ない。
彼には彼女がいるから。
初恋の人。
きっと生涯記憶に残る人。
たとえ私以外の人と愛し合っていても、
私はあなたを愛そう。
私にはそれくらいがちょうどいい。