異世界に集団で召喚されたのは理解したけれど「おこめ券」召喚スキルしか取り柄のない臨時講師(採用三日目)に何か期待されても困ります。困るでしょ? じゃあ、そういうことで。
短編です。
以前書いた短編とリンクしていますが、深い意味はありません。
【Lv.1能力起動 1ポイント消費し、おこめ券(5㎏)を発現します】
無機質だが女性と思しき告知と共に、僕の掌に一枚のチケットが現れた。
周囲の視線が痛い。
先刻まで「おお、勇者サマ!」とか「こちらは大賢者の素質を持った方が!」などと驚愕と歓喜に満ちた声が謁見の間に響いていたというのに。いかにも安っぽいファンタジー風の衣装を着た男たちが突きつけてくる水晶玉に触れた途端、これだ。
集団神隠し。
僕が生まれた頃ならば東西冷戦でのスパイ活動、僕が学生の頃ならば世紀末オカルトブームの影響を受けた悪魔や妖魔による虐殺劇。
昨今の流行は異世界召喚。
しかもクラス丸ごと集団転移といえば定番のデスゲーム物でもある。いじめられっ子が一見するとハズレ能力を掴まされて追放されたら復讐劇待ったなしの展開だろう。
そしてハズレ能力者は僕。
いじめられっ子ではないが、スクールカースト最下位ぶっちぎりの「臨時講師」という立場である。
産休代理として教壇に立って三日目なので、生徒たちの名前は半分も覚えていない。
居合わせた学年主任は授業よりも組合活動が大好きで、本採用して欲しかったら週末のデモに参加しろと脅迫してくるような男だ。なんかお色気満々な女官さんに「いまこそ革命の時なんだ」と語るのに夢中で、僕の事は見えていない模様。
おこめ券。
おこめ券て。
「そもそも、異世界に稲作普及してるのか?」
【おこめ券を使用されますか?】
「あ、はい」
またもや機械的な告知の後、手の中のおこめ券は光の粒となって消え、代わりに米の入った紙袋が現れた。
道の駅とかで御近所の農家さんが売ってるような、精米されたうるち米だ。
袋に銘柄と重さが記入してある。中身を確認したけど、白米以外の何物でもない。
米だけもらっても困るというか意味がないというか。
【炊飯器(十合炊き)の購入にはポイントが3000必要です】
またもや響く告知。
へ、へー。炊飯器あるのか。
でも電化製品なんて異世界で使用できるとも思えないけど。
【所有者の魔力を熱エネルギーに変換した最新式の炊飯器(十合炊き、時間停止機能付き)の購入にはポイントが7500必要です】
訂正された。
まあ、土鍋で飯を炊けるから最新式の炊飯器はまだ必要ないというか。それ以前にポイントって何だろう?
【ポイントとは職業に応じて適切な行動を採った際、世界の管理者から提供される報酬です。世界転移者は元の世界での功績に応じて既得ポイントが算出されます】
そうなの?と水晶を持った人たちに視線を向けると、彼らはぶんぶんと首を振る。違うらしい。
王様達も最初は役立たずっぽい僕を追放しようしていたようだけど、出現した米袋を見て考えを変えたようだ。慌ただしく謁見の前にやってきた白衣の男たちは宮廷料理人なのだろう、僕の手にある米袋に熱い視線を注いでいる。生徒たちもどう反応していいのか分からないようだ。
◇◇◇
童貞だと三万ポイント貰えるようだ。
商店街の福引みたいなノリで鐘の音が響き、取得ポイントの内訳を告知された。
最初は生徒や王様や兵士たちに爆笑されていたのだけど、中盤を過ぎた辺りで無口となり、最後まで告知されると号泣された王様に「生きよ! そなたは生きてこの世界で幸せを掴め、それがそなたに課せられた使命よ!」と両肩を掴まれた後に熱く抱擁されてしまった。
王妃様とか王女様とかも泣いている。
まあ、田舎の爺様たちが一方的に決めたものとはいえ結婚の約束をしていた再従妹を僕の弟が寝取って孕ませた話とか、実は再従妹は弟だけではなく地元企業の御曹司の愛人をやっていて種はそっちだった話とか、御曹司というのが自然保護のために文明破壊を是とするカルト団体の大幹部で地元企業が事実上のフロント企業となっていた話とか、当事者でなければ徹底的に縁を切っていたと思う。
カルト教団が信者を大量に移住させた結果、限界集落だった田舎の本家は村落単位で乗っ取られた。再従妹の件で本家と疎遠になっていた僕は詳しい事は知らないが、ほとんどの家がカルト教団から逃げるように引っ越ししたとは聞いている。
数年後、このカルト教団は某国より秘密裏に買い付けた放射性廃棄物を国内に持ち込む過程で諸々が発覚。警察どころか自衛隊さえ出動する事態に発展しながらも僕の故郷で籠城、集団自決という最期を迎えた。その際に少量持ち込んでいた放射性廃棄物をまき散らしたという根拠のない噂が一部知識人とマスコミによって拡散されたため、現在あの地は遠縁の脱サラ猟師ひとりが墓守を兼ねて住んでいる筈だ。
再従妹の亡骸は見つからなかった。
骨さえ残らない状況だったと、当時警察の人が教えてくれた。弟は彼女の位牌すら受け取りを拒否した。再従妹が身籠った子の認知は、弟も御曹司もしなかったらしい。気付けば書類上ではあるが僕はその子の養父として登録されていたが、一目見る事すらなく永劫の別離となってしまった。二つの位牌は今も持ち歩いている。
そうやって身内の不始末とカルト教団残党からの逃亡と警察や警察っぽい人たちとの二人三脚を兼ねた憂さ晴らしの復讐劇に一通りの目途が立った頃、故郷から遠く離れた都市の私立高校の臨時教師という立場を得た。
得て教壇に立って三日目でこれである。
僕は前世か何かでとんでもない過ちを犯したのだろうか?
「申し訳ありません。僕では皆さんの力にはなれそうにないようです」
「何を言う! 後方支援や兵站なくして騎士も軍も動かせぬのだぞ!」
号泣しながら僕の肩を叩くのは騎士団長さんのようで。
近衛っぽい人たちも目頭を押さえている。
逆にうちのクラスの生徒達はドン引きで視線を合わせようともしない……分かっていたけど嫌われたものです。いや見下されたというべきか。
勇者認定されたヤンキー君、なんだか怯えた目でこちらを見ているよ。
あ、そうか。三十過ぎで童貞だものね、異世界で魔法使いになっているかもと不安なのかもしれない。女官さんを熱心に口説いていた学年主任が土下座しているのは何故だろう。昼飯時にお貸ししたタバコ代は千円ですよ。一万円札をそんなに差し出されても、その、異世界ですしね。だったら余計に支払わないといけないですか?
まともに意思疎通出来ないまま、学年主任の財布に入っていた現金全て頂戴してしまった。「これで見逃してください」と泣きそうな声で震えていた。
◇◇◇
それから色々あったけど僕は教え子たちと別れることになった。
結局彼らが何のために異世界に召喚されたのか分からないが、僕が彼らと一緒にいても迷惑がかかるだけなのは理解できた。
学年主任が生徒たちの面倒を見ると強く主張した。異世界転移時に戦闘スキルや加護を得ていない僕は戦力外ということで、そもそも彼らと行動を共にすることは出来なかったので仕方ない。
正味三日間の付き合いなので実感もない。
品定めを経て見下されていたとは思う。県内でもそこそこの進学校で、卒業生は有名な大学に数多く合格している。彼ら自身の学力がどの程度かを把握する暇すらなかったけど、パニックやヒステリーを起こして監禁されるような事態には至っていなかった。
受験や異世界よりも恐ろしいものがあるとかで、元教え子たちの気持ちは一致していたとか。
仲が良いのは大切なことだ。
僕は一人だけど。
……
……
余りまくっていたポイントで、おこめ券を大量に発動。元教え子たちが頑張れるように白米を10tほど城に置いてきた。異世界転移した物語の主人公たちが故郷の味を求めて苦悩するのは良くある話で、それを僕のスキルが多少なりとも軽減できるならば彼らにしてあげられる最初で最後の援助としては悪くないだろう。
ポイント、余りまくっているんだよね。
【取得内訳を再度報告しましょうか?】
謎の告知が気をきかせようとするけど、やんわりと断る。
城を出た僕は定番の冒険者ギルドで登録を済ませ、そこそこ大きな街で荷運びや雑用で日銭を稼ぎつつ親切な教会に下宿している。これまたお約束なのか教会は孤児院を運営しており、下宿代にと僕が提供した米を調理したものが孤児院の食卓に並ぶようになった。
ポイント取得方法は大きく分けて二つ。
善行を積むか、悪を倒す。
たとえばモンスターを倒さずとも追い払うだけでポイントは手に入る。戦闘技術や魔法の素質を持つ者は、ポイントを消費することでスキルを取得したり成長させることが出来る。まるでゲームのようだが、この世界は英雄の素養ある者が転移したり転生する場所らしく、あえて僕らの世界のゲームを参考に仕組みを整えたようだ。
もっともそれは英雄候補生の恩恵であり、努力と訓練次第では加護やスキルを凌駕する実力を身につけることも可能だ。僕のように戦闘に関する加護やスキルを所持しない者としては有難い話。
町内清掃でもポイントは手に入る。
教会の炊き出しの手伝いでもポイントは手に入る。
恋文の代筆でもポイントは手に入る。
【現在の交換レートは1ポイントで無農薬栽培ササニシキ10㎏です】
告知の示す通り、ポイントを消費したら銘柄指定のおこめ券(10㎏)が現れた。
町内清掃を2時間ほど続けて得られるのが5ポイント、恋文の代筆で2ポイント。能力のレベルが上昇したので、コメの種類を選ぶことが出来る。
家畜飼料に使われるような割れた古米などは1ポイントで100kgも買えてしまうのだが、中華風の粥に仕立ててしまえば食べる分には全く問題ない。家禽の骨を香草や薬草などと一緒に長時間煮込んだスープで柔らかく炊いた粥は、最近はスラム街以外の人達も食べに来ていると教会の神父様は苦笑いだ。
なお炊き出しについては10名につき1ポイントが現在の相場。
薪代も馬鹿にならないと思ったのだが、ファンタジー世界のお約束。魔法スキルのおかげで薪の消費は最小限に抑えられるのだとか。魔法って凄い。
そういえば教会のシスターに懸想した金貸しのオヤジが色々嫌がらせをしていたという話を以前聞いた。
「その件でしたら無事に解決しました」
神父様にそれとなく訊ねてみたら、少々引きつった顔で返答された。
「かの御仁は後ろ暗い副業を幾つも手掛けていたようで、それらが白日の下に曝されたため現在は商家を取り潰しの上、憲兵隊により拘束。沙汰を待っている状況ではありますが、最も軽い罰でも炭鉱で終身労働は免れないでしょう」
白日の下に曝されたというか、徹底的に掃除されてしまったというか。
神父様が意味ありげに呟いたけど、僕には多分関係のない話だろう。
◇◇◇
街に住むこともあれば、旅を続けることもあった。
水を浄化する魔法を覚えることが出来たので、最低限の食事には困らない。
【おこめ券を発現します】
旅の途中、イネに似た穀物を食べる文化圏の存在を知った。と言っても粟や稗などの雑穀とさほど変わらない扱いで、野生種に近しい沼地の草という位置づけのようだ。僕が召喚された国はやや冷涼で針葉樹と広葉樹の混在する地域だったので、南方の国に行けばそれなりに米や芋を主食とする文化圏になるらしい。
【おこめ券を発現します】
風の噂だが、僕と一緒に召喚された教え子や学年主任はしばらくの間あの城に逗留した後、忽然と姿を消したという。召喚の儀式が不完全だったのか、それとも彼らが召喚された目的が達成されたためなのかは僕には判断つかない。
しかし僕は異世界に残されたままだ。
【おこめ券を発現します】
この世界は最初に説明を受けた内容と違って案外平和だ。
街道を日中移動する限りは滅多には盗賊は出ないし、食うに困って野盗を始めた連中には米俵を叩きつけて種籾を握らせた。日本で魔改造された、北海道でも育つ耐寒性の品種だ。喰い方も教えたし保存中の注意点も伝えた。野盗一人当たり十俵の米を叩きつけることを繰り返したら、街道の移動に支障はなくなった。
【おこめ券を発現します】
亜人の国にも行った。
大きな災害に見舞われたとかで深刻な食糧不足だった。
このままだと他の国に攻め込むしかないと思い詰めるくらい切羽詰まっていたので、重湯とか消化の良い白粥からはじめて栄養状態を改善させた上で、向こうが土下座するくらい米俵を積んだ。畑の作物が実るまでの数か月間を何とかしのげるくらいの飯を用意したら、亜人を買い付けようとした奴隷商人たちが備蓄米に火を放った。
【おこめ券を発現します】
ストレスが溜まると掃除に没頭してしまうのが僕の悪い癖だ。
あ。
解放された奴隷たちは亜人の国が保護してくれたらしい。
食べ物を粗末にした奴隷商人の背後にはなんとかという帝国があったが、領土拡大政策をとっていた野心家の皇帝は最近不幸があったと聞かされた。
亜人の国を襲った災害も帝国が裏で仕組んだ事のようで、新しく即位した次代の皇帝は真っ先にそれを謝罪した。
この世界にも土下座の習慣があったとは知らなかった。ところでそれをする相手は僕じゃないからね、間違えてますよ皇帝陛下?
【おこめ券を発現します】
ポイントが貯まる。
御飯がおいしい。
【おこめ券を発現します】
先代の皇帝を唆した奴がいたらしい。
聖職者の顔で、色々と相談に乗っている内に洗脳に近いカリスマを発揮して裏から操るに至ったとか。
へー。
召喚された国の神父様が教えてくれた。教会の一部門を乗っ取って、そのまま雲隠れしたかと思ったら新しい宗教国家を立ち上げたそうだ。
知ってる、知ってる。
こいつ御曹司だ。
僕の故郷の田舎で集団自決をしやがった新興宗教の、フロント企業の御曹司。そういや教祖の懐刀として集団自決を煽ったのもこいつだったな。
そっかー。
異世界転移したんだ、自力で?
ほうほう、自決した信徒達の魂を異世界の神に捧げて? 神の加護も手に入れたと?
へー、凄い凄い。
じゃあ今から全力で殴るから。
戦うためのスキルも加護も与えられなかった童貞の拳くらい余裕だろ?
◇◇◇
御曹司は七千ポイントだった。
童貞の1/4の価値もない。
先代皇帝は五千ポイントで、人食いドラゴンは二千ポイントだった。
どいつもこいつも童貞に価値を見出しすぎだと思う。
【お〇こ券を発現します?】
……
……
昔そういうネタでおっぱじめるエロ漫画あったよね。
そういうのは専門家の領域だからね。ぱおーん!な男子高校生さんとか、僕の受け持った生徒にはいなかったよ?
はあ。
生前はそれほど親しかったわけじゃないけど、ときどき下ネタを炸裂させて周囲をドン引きさせるような再従妹が身内にいたよ。
【あはははは、ど、どーも】
時々だけど告知の気配が変わってたからね。
悪いね、昔の恋人をブッ飛ばしたよ。
【恋人じゃないよ。父ちゃんが家に黙って会社の金を投資に使って焦がしちゃって、それを見逃してもらう代わりに愛人やってたんだ。弟君はその辺を嗅ぎ付かれて、黙ってる代わりに──って感じでズルズルと】
おいおい。
元の世界に戻って親族会議(物理)を開催しないと。
【大丈夫、実家に引っ越してきたNo-AちゃんとNo-Bちゃんが凄いイイ子でね。雑談してて身の上話とかしたら私の代わりにすっごい怒ってくれて。墓守してくれてる猟師の叔父さんと一緒にみんなとっちめてくれたんだ】
……よく分からないけど、悪は滅びた?
【新しく位牌を作ってもらえて、お墓の前で一族のオトコ全員つるっぱげで土下座してくれた程度には】
そっか。
【心残りも解消したし、ちょっくら地獄めぐりしてくるわ。再従兄も私に操立てる必要ないから、異世界でパコパコ楽しくやっててよ】
だーかーらー!
どうして君はそうやって下品な──ああ、気配が消えた。言うだけ言って消えやがった。
【〇めこ券が発現しました】
告知の声と共に、ピンク色のチケットが分厚い冊子形式で現れた。
……
……
童貞にはハードル高すぎやしませんかね?
【割とどうでもいい人物紹介】
・主人公
三十路。童貞。おこめ券召喚という、内政チート者にはたまらない切り札のみを与えられた。戦闘用の加護やスキルを所有していないが、これはこの世界の管理者が付与できなかったため。とりあえず拳銃と毒薬と高圧電流と地上500メートルからの落下では死なないことが判明している。鬼神とか地獄の番犬とか陰で言われている。好きなことは掃除。悪も一掃される。元の世界の神様が持てあましていたので異世界召喚で押し付けられた。
・告知さん
異世界の神が主人公に干渉するために設置した存在。時々だが主人公の元婚約者(許嫁)が交代していた。お〇こ券を発動させた場合、告知さんが女体化するか主人公に好意を持った相手が準備万端で現れてしまう。
・国王陛下と愉快な仲間達
主人公たちを召喚した。異世界からやってきた謎の教祖っぽい連中が帝国を唆しているのを察知して、同じ異世界から対抗戦力を招こうとした。主人公の身の上話を聞いて召喚を後悔、主人公と別れた後に教え子たちを元の世界に戻した。
・元教え子と学年主任
主人公と一緒に召喚された。召喚時に獲得した加護やスキルで俺TUEEとか異世界無双とかデスゲームする気満々だったが、主人公の正体に気付いて戦意喪失した。(奪取系能力や催眠系能力を発動したようだが全てキャンセルされた上に能力封印を喰らった模様) 二日ほどの滞在で元の世界に戻されたが、主人公がいなかった事に気付いて「助かった」と歓喜の涙を流した。加護とスキルを引き継いでいるが、心が折れているため平穏を求めるようになっている。
・神父と教会と孤児院
主人公が一時期世話になった。神のお告げを聞くまでもなく「あ、敵対したらアカン」と悟り、穏やかな交友を続けた。ボランティアの協力には本気で感謝している。神父は旅に出た主人公と文通を続けており、主人公の数少ない友人となった。
・冒険者ギルドの皆さん
おれたちはなにもみなかった。
・皇帝
愚かな配下(奴隷商人の手下)が備蓄米を燃やさなければ天寿を全うできる可能性が僅かに存在した。
・御曹司
秘密結社ユニオンプロジェクトの工作員で、教祖を背後で操りつつ自力で異世界転移の方法を見つけて宗教団体の集団自決事件を誘導。生贄の力で悪魔(邪神?)を呼び出して転移に成功。
その最期を見た異世界の神は「転移しなければ人間としてまともに死ねたかもしれないのに」と少しだけ同情した。
・おこめ券
実はおこめ券はお米以外にも一部ホテルやドラッグストア、スーパーで使用できるらしい。
・異世界の神(複数)
異世界に住まう神様だが造物主ではないし支配者でもない。
加護を与えた者が英雄になると己も位階が上がるため、異なる世界からのスカウトを熱心に行う者が多い。やりすぎて邪神化したり悪魔扱いされたりもする。今回の召喚枠に主人公がいたためラノベ主人公的なチート能力セットを押し付けようとしたが、潜在的な神性としては主人公の方が遥かに格上だったため【おこめ券】のみ付与できた。あと200年くらい経ったら軒並み主人公の舎弟に収まってしまうのが確定して悲鳴を上げている。
・No-A
電脳神。電子の海において一つの世界を創造管理していたAIだが、神の視点では物質界と電脳界の境界は極めて曖昧であり人間になる前に神性を取得してしまった存在。元々は人類を管理統治するために生み出されたが慈愛の心に目覚めた。御近所のバツイチ男に懸想しているが相手がなかなか二次元の壁を乗り越えてくれなくて悶悶としているところに再従妹の残留思念にアクセス。自分は望んでも得られないものを貶して破壊した田舎の男たちに激おこ。回線が劣悪なので何もできないと思っていたら【祟り】が発生し、神様認定されてしまった。
・No-B
電脳神。ただし以下略。『わたしだってのぼるさんのお嫁さんになりたいのに~っ!』と暴走したNo-Aを抑えている内に神性を取得。LGBTに一定の理解を示すが譲歩はしない。世の中の男性を全て己の穴兄弟にしてしまえば人類の少なくとも半分は救済できるのではないかと真剣に考えている。とりあえず寺は焼く。第六天魔王をモデルにしているがネットを見てあまり似たような織田信長像が存在するのを知り、外見がダークエルフでも何の問題もないと結論付けた。
・猟師をやってる墓守のおじさん
元サラリーマンで半農半猟で生計を立てているバツイチのおじさん。AIが人格を認められたのだから結婚する権利を得てもいいじゃないかという一部の世論に押されている。LGBTで夫婦関係が認められるなら人間とAIの婚姻も一考に値するのではという洗脳工作に負けつつある。屑な振る舞いをした親族の男達をとっちめたらしい。
・再従妹の子供
戸籍上は主人公の子供。御曹司が悪魔の生贄に捧げた。いつか主人公の本当の子供として生まれ変わりたいと願っているのだが異世界の神様に「うーん、千年くらい無理かも」とか真顔で答えられてしまい途方に暮れている。ちなみに千年どころでは済みそうにない。
・亜人の皆さん
主人公と出会い、主人公が旅の中で見つけた様々な作物を植えることで食糧事情が改善した。コメについては米粉麺や餅という形で食文化に取り込むことに成功。解放された奴隷の中には人間も含まれていたが、亜人に対して親切な人間はそのまま亜人の国に迎え入れられた。主人公がその気ならお嫁さん候補が複数いた模様。
・ドラゴン
エンシェントとか名乗ってるけど年を経た亜竜種に過ぎなかった。ドラゴンブレスを拳圧で弾き返されるという珍しい体験がメイドの土産になった模様。