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裏ギルドの最強な子供  作者: 烏龍茶
6/8

訓練

初めての戦闘回

朝日が昇る。それとともに起き上がる。僕の住んでいる路上には天井がなく、簡単な布切れを代わりとしているため、朝日が所々入ってくる。他の動物達は寝ているのもいるが、既にいなくなっているものもいる。きっと朝飯を取りに行ったのだろう。

今日は特に依頼を受ける気は無いので鍛錬に行くとしようか。とりあえず身支度を進める。格好は昨日の街の村人スタイルのままでいいか。ナイフと小盾位は持って行こう。用事を済ませて帰ってきてからヘッパの店に行って武器類を受け取ろう。いつもの仮面を腰にかけ、それを覆うようにして外套を身に纏う。これで少しは冒険者らしくなったかな。

身支度ができたので家を出る。キラキラと輝く朝日が眩しく、少し肌寒い。まだ早朝ではあるが、街の人々は朝の仕込みの時間のため、忙しなく働いている。僕は走りながらスラム街を抜け、大通りに出ると目当てのパン屋を見つける。そのまま入り口をノックして入る。


「おばちゃん、朝のパン買いに来たよ〜」


そういいながら店に入ると香ばしい匂いが辺り一面に広がる。まだ陳列棚には商品であるパンが並んでいない。おそらくまだ裏手で仕込みの最中だろう。僕はそのままカウンターの呼び鈴を鳴らして伝える。

はぁーい!ちょっと待っとき!と大きな声が裏手で響き渡り、少し経つとエプロン姿のおばあちゃんが出てくる。


「あら、久しぶりだね。元気してたかい?」

「お久しぶりです、おばあちゃん。いつものお願いできますか?」

「あいよ、今袋に包んだげるから待っとき」


そう言ってまた裏手に戻る。このパン屋はまだ僕が小さい頃、残飯漁りをしていた頃にお世話になったところだ。廃棄のパン屑をいただいていたところを店主であるこのおばあちゃんに見つかり、怒られながらも追加でパン屑をくれた優しい人だ。どうしても仕事の関係上で、あまり日の高いうちはパン屋に行くことができない為、こうして無理を言って仕込みの最中に出たパン切れをお金を払って貰っている。普通はスラムのガキに集られたら追い払う筈なのに、このばあちゃんはこうして受け入れてくれる。あの時は泣きながらパン切れを食べたっけ。

久しぶりに来たせいで昔の思い出を思い出したところ、用意ができたらしいおばあちゃんが再び戻ってくる。


「はいよ、待たせたね」

「すみません、仕込みの途中に。これお金です」

「おやおや、こんなにいらないよ。銀貨なんて大金持って来て」


確かにこの町なら銀貨1枚で家族4人がレストランで夕食を食えるくらいの額だ。


「いいんですよ、わざわざこんな時間に作って貰ったんですから」

「坊やが心配することじゃ無いね。この店はまあまあ儲かってるのさ。これは受け取れないね」

「いやいや」

「いやいや」


やっぱりこのおばあちゃんは頑固だと思う。でもさすがにこれ位は貰ってくれないとこっちが心苦しい。やっぱいつものコレしか無いか。


「あ、もう直ぐ仕事の時間だからもう行くね!お金ここ置いとくから!」

「あ!ちょっとまちな!」


おばあちゃんの言葉を無視して勢いよくお店を出る。こうしないとお金を受け取ってもらえないからだ。因みに裏の仕事だと言うことはおばあちゃんには言っていない。さすがにこの仕事はバレればおばあちゃんにも被害が出るかもしれないからな。聞かれた時は当たり障りのないように濁して答えている。

そのまま走り出してから大通りの外れ、人気の無い場所まで行くと、その場所で改めて装備をつけ直す。仮面を被り、腰のナイフは直ぐに抜ける位置に設置し、小盾を左手につけ直す。


深く呼吸をする。神経を尖らせる。


再装備をおえるとそのままとある建物に入る。中は殺伐としているが、ここは裏の奴らが街の外に出るための裏ギルドが管理する場所だ。そのまま、受付で手続きを済ませて門番にギルドカードを見せる。


「はい、確認が取れました。どうぞお通りください。シロ様」

「ありがと」


いつもの挨拶を終え、そのまま門を通ると森が見える。外壁の外に出た。体をググッと伸ばすと手足がいつもの様に動くか確認。よし、問題なし。

そして目的の場所まで走り出す。森の木々を分ける様にして走る。獣人の身体能力は人より高く、何より俺自身が走るのが楽しいため、森を抜けるのが苦ではなかった。いつもより早く走る。周囲の敵を索敵しながら走る事2時間、行く手に川を発見した。いつもここに来るのには3時間くらい使うのだが、飛ばしたため早く着いたが、少し疲れが出て来た。

(でもいつ見ても綺麗だな。ここで朝食を取るか)

そう思って準備を始める。ひらけた場所に行き、川から水を汲みんで先ずは水分補給。長く走った後の水は美味しい。そのまま水筒に補給する。ここは水分が豊富なので、周囲にはいくつかの山菜がある。調理が簡単なものを選んで摘み、今朝貰ったパン切れと一緒に取る。そのまま1時間程度はのどかに過ごした。




体が完全にいつも通りの状態に戻るとよいしょと後始末をし、目的地を進む。目指すは川の上流だ。その時に合図として遠吠えしておく。これで向こうも気づくだろう。

歩けば歩くほど段々と森の茂みが濃くなってくる。もうほとんど陽の光が届かなくなってゆく。

不意に自慢の耳が何者かの接近を伝える。魔物だろうか?すぐさま臨戦体制を取る、早い!直ぐに腰のナイフを素早く抜き一歩下がると相手の刃が目の前まで迫る。


ガキン!


刃を左手につけた小盾で払いのけ、右のナイフを素早く振るうが相手は勢いをつけたままローリングをし、回避した。そして相手は木々のなかに戻ろうとする。


(危なかった…いつもの場所で訓練じゃなくて奇襲とはな。あいつも学習してる。俺も頑張らないと)


俺は相手を逃さない様にすぐさま追いかける。両者とも入り組んだ木々を軽々と超えて行く。幾度か刃を交えるも幾らかの切り傷を与えるもなかなか決定だとはならず、長い間拮抗状態となる。すると相手はいつの間にか新しい武器を持っていた。さっき使っていたロングソードを背に掛け、双剣に持ち替えていた。そのまま相手は俺めがけて突っ込んで来る。


(速い!前よりも腕を上げてる。だがまだ手数はこちらの方がある。舐めるなよ!)


相手が右手にもった刃を自分の刃を当てて逸らし、左手の小盾を下に構えながら横にローリングする前動作をする。予想通り下からあいつの足が突き上げる様に上げられたのを盾で受け止め、その勢いを利用してローリングをする。俺が立ち上がると同時に背後から突きが来る。


(ヤバ、避けられない!こうなったら!)


立ち上がると同時に大きくバク転の要領で高く跳ねる。相手の刃が背中に少し刺さるがその痛みを無視して空中で相手の突きをした腕を掴み、遠心力を利用して地面に叩きつける。


「グェっ」


地面に叩きつけられた衝撃で相手が呻く。相手が起き上がらないうちにトドメで自慢の尻尾ではたく。まえ本気で叩いたら大人が吹っ飛んだからかなり強いはずだ。相手は尻尾で叩かれた衝撃で吹っ飛び大きな木に当たって動かなくなる。

相手が完全に沈んだのを確認してから背中の傷の痛みを認識する。まあまあ抉られた。


「痛い…傷薬だけ塗っとこ。」


痛みで顔が歪むが今は治療だ。背中は手が届かないので尻尾を器用に使って先ずは水筒の水を使って付いた土を落とし、塗り薬を塗って行く。


(とりあえずあいつを川まで運んで看病するか)


そのまま朝食を食べた川岸まで戻ると、やっと相手の目がさめる。


「…ヤハリワタシハマケタカ」

「お、やっとお目覚めか。大丈夫か?どこか痛みが続くとかある?」

「セガイタイナ」

「まあアレだけキツイの2発やったからね。こっちだって背中エグラれたしおあいこだよ」

「ムウ」


なんてことのない会話をして、彼女は自分の体に異変がないか調べる


「ナゼマモノノワタシガマケルノカ、アンナニシュギョウシタノニ」

「かなり強くなってよ、ヤバいと思ったのもかなりあったし」


彼女は魔物だ、それもゴブリン。なんとビックリ、雌である。ゴブリンといえば醜悪で人間を襲うとして有名な生物であり、雄ばかりが産まれる。たが、かなり低い確率で雌も産まれる。彼女はそれ加えて変異種らしく、幼い頃にそれが原因で群れから追い出されてこの山に住み着いたのだ。初めは敵対していたのだが、互いの似た境遇と意思疎通が出来ため、僕の初めての友達になる。名前がないので呼びにくいのがが難点だけど


「デモマケタ」

「じゃあもうちょっとやろうか。僕ももっと強くなりたいしね」

「マケナイ」


そう言って両者ともにナイフと剣を抜き、日が暮れるまで打ち合った。

ちなみシロは警戒状態の時は一人称を俺に、気が緩んだ時は僕になります。それを踏まえて読むと面白いかもしれません。

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