とある誰かの話
ゆっくりしていってね!
「お前、今日から新入りの奴だな。裏に入るときに最初に先輩に依頼でノウハウを教わろうなんてよくわかってんじゃねえか。」
「は、はい。よ、よろしくお願いします!」
ガヤガヤと喧騒の漂うだだっ広いエントランスの隣に設置された大きめな酒場にその2人はいた。酒場のカウンターに座っている大柄な男、顔には大きな切り傷があり、どっしりと落ち着かせた腰とがっちりとした体つきが只者ではないと思わせる。少し老け顔ではあるものの、横に置いて有る使い慣らした太い大剣も合わせて貫禄が見て取れる。
対照的にカウンターの側でビクビクしながら男の目の前に立っているのは少女だった。先ほどとは打って変わって新人なのがよくわかるほど落ち着きがなかった。さっきからゆらゆらと忙しなく金髪がよく揺れている
「俺が今回お前の依頼担当のヴァルカンだ。よろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします。Fの46番です」
軽い自己紹介を挟むとヴァルカンは品定めをする様な目つきで観察した。
「にしてもこっちによくお前なのがきたな。冷やかしなら直ぐにあの世に行ってただろうが、依頼ってならもうカード持ってんだろ。よく発注してくれたな。」
「は、はい。受付でちゃんとカードを発注して貰いましたし。な、なんでかわからないですけどけっこう長い間見られました。」
「当たり前だ、お前みたいな貧相なのがきたら小間使いか冷やかしのどっちかだと思うさ。それが両方ハズレ。しかもその日にギルド入ってその日に依頼だすとかなかなか根性あるよ、お前は」
「あ、ありがとうございます」
そのまま男はカウンターに置いてあった芋の揚げたものを頬張りながら、依頼票を改めて確認した。
「依頼だししっかりやるか、取り敢えずは裏でのやり方を教わりたいんだろ?」
「は、はい。経験のない私はまず経験のある方から教わるのがいいと考えました。なのでそのノウハウを教えていただけたらと」
男はふむと髭の生えた顎に手を当てて考える。
「その前に少し気になったんだが」
「はい?」
「お前どっか良いところで前住んでたでただろ?多分貴族だな」
「!?」
その言葉を聞くと、少女はびっくりするくらい動揺してしまった。玉のような汗を吹き出し、肩が小刻みに震える。
「別に詮索するつもりもないけどここでは気をつけな。あれこれ面倒になるから」
「は、はい…」
「ついでに依頼なんかにあれこれと詮索するのもダメだ。ルールだから覚えときな。ま、今回は悪いが許してくれや」
「わ、わかりました」
「さて、何から教えるのが良いだろうか。あんまり人に教えたことないんだけど。あ、じゃあまず最初にウチのギルドについてだな」
そういって男は最初にギルドについて教えてくれた。
ここは他のギルドとは違いいつも喧騒であふれている。いつも荒れくれどもがひっきり無く移動し、自分の任務や情報などのやりとりを行う。他のギルドはもっと殺伐としているらしいが、ここは珍しくとこだな。
裏ギルド共通の掟としてある程度の礼節は守らなくてはならない。これは裏初心者での必須事項だ。ここは格差社会だからな。ランクが上の奴ほど偉い、というよりも強い。そしてそういう奴ほどヤバいところにツテがあるからな。
あと裏切り行為は漏れなく死刑だ。ここではそういう行為をした奴はほぼ逃げられないからな。見せしめのためにギルド全員で血祭りに挙げる。絶対にするんじゃねえぞ。
さっきランクの話が出たからランクの話も言っとくか、裏ギルドには上下の区別をするためにランク制度がある。上から順にS・A・B・C・D・E・Fだ。お前は初めてだからFだな、因みに俺はBだ。ウチのギルドではトップがAランクのボス、ギルド長だな。だいたいヤバい奴は2つ名持ちがほとんどだ。依頼をやり続けている内にコードネームみたいなのがギルド長から与えられる。所謂一人前になったってことだ。まずは番号で呼ばれることから卒業しないとな。因みに俺は…
などと長々と説明を続けていると不意にエントランス内の喧騒に奇妙な単語が入り混じるのに気がついた。
おい、あの仮面ってあいつじゃね。ああ、路地裏の悪魔だ。魅惑の美少女シロちゃんじゃん。バカ、静かにしろ!あいつそれ言ったやつ問答無用で潰したんだから。でも実際素顔も見てみたいよなー、めちゃくちゃ綺麗なんだろ?裏キッズの1人だし。なんであいつ路地裏なんかに住んでるんだろ。
誰かが任務から帰ってきたらしい。
「お、シロが帰ってきたか。遠出の任務から帰ってきたのか。こりゃ後で絡まないとな。」
少女にはわからないことが多すぎので取り敢えず聞いてみる
「すみません、シロってなんですか?」
「ああ、一様コードネームなんだがあいつは色々2つ名があるからな。ほら、丁度帰ってきてるから見てみな。真っ白な獣人だから」
そう言われてエントランス内を探しているとすぐに分かった。
それは異様な風貌だった。
130センチほどの身長にピクピクと動く白い耳。赤いロングコートらしきものを羽織っており、レザージャケットと特注であろうブーツがチラリと見えた。獣人特有の白くて細長い尻尾がゆらゆらと揺れる。
そして何よりも異様なのは香りに付けていた仮面であろう。動物の仮面であろうか、野良猫に似て可愛らしい風貌ではあるが、何処か薄ら寒いものを感じる
だが、ゆっくり歩いているのに何処か惹きつけられてまう。
不意に少女が歩きながらチラッとこちらを見た。
その瞬間、背筋がゾクゾクして冷や汗が止まらなかった。頭が真っ白になる。胸のドキドキが止まらない。
見られた数秒が数十分にも感じられ、ぼーっとしていた頃に再び声がかけられる。
「おい、おい!大丈夫か?」
「…は!はい。大丈夫です…」
「はぁ、やっぱり初見はそうなるよな。俺も似たようなもんだったし、シロのやつは何ていうか惹きつける力みたいなのがあるんだよ。良くも悪くもな。生まれた頃からこの世界にいるんだし」
「生まれた時からですか!?」
これには流石に驚かざるを得ない。
「ああ、だからお嬢ちゃんがいつかあいつを支えてくれる存在になってくれると嬉しいよ。昔からあいつを知っているが結構危なっかしいからな。出来ればでいいんだ」
「…わかりました。努力して見ます」
それからいろいろな私は話を聞いていたが、頭の片隅にはずっとさっきの子がチラついて離れなかった。
結局私のこの気持ちが何なのか、それはきっとそう遠くないだろう。なぜだかそう確信していた。
最初は年齢制限かけて投稿してたのですが、書いていく内にあれ?これただのラブコメみたいになってる…と思い、ついでにこっちにも書いてみました。消されても割り切ります。