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翌日。美味い夕食と温泉と柔らかすぎないベッドで1日の疲れが吹っ飛んだ俺達は町中の見物に出ていた。
朝、宿への迎えは昼頃になりそうだという手紙が届いた。一般人に中佐から手紙が来るという状況を誤魔化すためか封筒には差出人の表記もなく、封も簡単なものだった。それでしばらく時間ができたため、王都の見物も兼ねて携行品などの装備を整えようということになった。もちろん、発案者はアレクサンダーである。
「うーん、やっぱり王都って品揃えが違うよね」
「...なんで武具屋で一見さんお断りだの入店審査だのやってんだよ」
「そりゃ、性能が良いのが揃ってるからな。誰彼構わず売ったら治安が悪くなるだろう?」
王城に近い辺りには武具も文具や家具も食品もありとあらゆる種類の一流品を扱う店が多く集まっている。宿も比較的、王城近くにあったためすぐ目についた店はみんな高級感漂う佇まいとそれ以上に気品溢れる商品ばかりが見事なガラスケースの中に陳列されていた。
「まあ、オレ達じゃ入ったところで買えるものなんてないし。見たいなら帰りにまた外から覗いてみる?」
「覗かない」
武器は眺めるもんじゃなく使うもんだ。買えないんじゃ意味がない。と思う。
「あっちの市場の近くなら手頃なお店がありそうね」
どこか澄ましたような通りを横目に賑やかな人混みの方へ歩く。昨日は丸一日役所の中だったし、一昨日はとにかく宿へ直行したため町の様子はほとんど見ていなかった。大通りの市場には様々な露店が並び、道を行く多くの人が食べ歩きを楽しんでいる。そんな店に紛れて旅人向けの店と土産物屋が並び、賑やかな通りから延びる路地には飲食店と市民向けらしい食材を扱う店、路地の向こうの通りには服やアクセサリー、家具などの小洒落た店が見える。
「レイモンド、アレクサンダーさん、ちょっと見て良い?」
ヴィクトリアは俺達の返事を聞く前に露店の品をじっと見つめていた。
「『旅のお供に素敵なお守り』...?」
剣と盾、翼のモチーフのチャームに淡い緑の石と青緑の石が嵌め込まれた耳飾りだった。ご丁寧に木製の胸像の左耳に飾られている。
「おじさん、これ下さいな」
「はいよ」
「あ!あと、これと...これもお願いします」
オレとアレクサンダーが彼女の視線の先を確認できたと同時にヴィクトリアはいくつか装飾品を購入した。
「おい、ヴィクトリア...」
「よっぽど気に入ったんだね...」
「ええ。とっても。おじさん、ありがとう」
ヴィクトリアは満足げに微笑んだ。
まあ、そんだけご機嫌なら良いか。
「次、行って良いか?」
「ええ。待たせちゃってごめんなさい。ありがとう」
そこから少し歩いたところに、武具と野営用品の店があった。旅行用品ではなく、野営用品の店だ。
「さすが王都って感じだね」
「...需要あんのか?」
アレクサンダーと二人して田舎者丸出しの発言をしていると店主らしき青年が朗らかに笑った。
「意外とお客さんは多いんですよ。遠くにいる親戚を訪ねる人とか、行商人とか、物好きな貴族とか、流れの傭兵とかいう人もたまに」
結構客層が広かった。
「貴族まで?」
「ええ。うちの品は耐久性や使い勝手は自他共に認める王都一、品数も王都一ですから!ご希望があれば予算に合わせて、いくつかオススメを見繕いますよ」
「あ、じゃあお願いします」
アレクサンダーが色々注文すると店主も真剣な顔をしてあれこれ持ってくる。
「...なるほど。今お伺いした感じでしたらこの辺りが良いんじゃないでしょうか。天幕はもう少しご説明しますね。武具はどうぞお手にとってみてください」
野営道具の事はアレクサンダーに任せて、オススメだという品を見る。俺は剣とグローブ、ヴィクトリアはブーツを新調することになった。ちなみに、アレクサンダーは自前の手甲を改良するために部品をいくつか買ったようだ。それに便乗して俺も剣の手入れ用品をつけてもらった。
「さて、調整もしたいしそろそろ宿に戻ろうかと思うんだけど、二人は他に見たいところある?」
「別に」
「私はちょっと精霊に用ができたから神殿に行っておきたいわ。すぐ戻るから二人は先に帰ってて」
「大丈夫?」
「ええ。王都の中だし、そんなに遠くはないから」
「そう?それじゃあ、お言葉に甘えて先に帰ってるよ。気をつけて」
満足げなアレクサンダーはよほど改造したくてウズウズしていたらしくヴィクトリアの笑顔を見ると荷物をまとめて背負って行ってしまった。王都見物も兼ねて、なんて言い出した張本人のくせに。
「レイモンドも先に帰ってて良いわよ?」
「いや、あの状態のザンといると絶対面倒だから遠慮する」
放蕩者の武闘家という、ぞんざいそうな響きとは裏腹に、武具をとても大切にしている。アレクサンダー曰く、共に旅をする相棒で、武闘家である自分には無くてはならない物だから、とか。なんにせよ、根っからの武人であるアレクサンダーにとっては息をするように当然のことだった。手入れはものすごく念入りにやるし、改良ともなれば村にいた頃なら数日かけていた。何度か手を貸せと言われて手伝ったことがあるが別人のように面倒だった。職人気質の頑固親父たちと良い勝負になりそうな感じで。俺だって手入れはするし大事に扱うが、アレクサンダーのあれには流石についていけない。あれは大切にしているとかその程度じゃない。
「一人でやることも見るものもないからな。お前と行くほうが良い。用心棒だとでも思ってくれ」
「そう?それじゃあ、お願いしようかしら、用心棒さん」
ヴィクトリアと並んで歩く。神殿は民家が並ぶ辺りにあって公園が併設されているらしい。民家の間を縫う道には市場の方から熱気と喧騒が流れてくる。普通の民家でも玄関口に花が飾られていたりしてさすが王都、と思う。村ではその辺りにいくらでも咲いているからか、わざわざ摘んできて飾る家はなかった。町並みは王城と合わせたように、民家や商店も白い壁がほとんどで、屋根は黒や紺、青が多い。街道に面した門の近くほど色味が薄く、門と反対側、王城に近づくほど濃くなっているようだ。ちょっと気取ったような雰囲気の町だが、しかつめらしく無く明るい雰囲気に包まれている。
ちなみにこの町の構造は、南に街道に面した門、そのすぐ内側から一般庶民の民家や商店が並び、北に行くほど富裕層に近づいていく。高級住宅街の北に役所、そのさらに北には王城と町を隔てる城門があり、城の向こう側、街道とは反対の町の外はすぐに険しい山が迫っている。
「レイモンド。見えてきたわよ」
ヴィクトリアの言葉に視線を正面に戻すと、紺碧の屋根を乗せた白磁の壮麗な柱が見えた。飾り気はなく、しかし壮麗にして威厳ある佇まいをしている。村の祠とは比べ物にならない大きさだ。ただ、そこから漂う空気はやはり、共通する何かがあるように思える。
「この中に精霊がいるのか?」
「中、と言うよりもこの辺りね。人間が仕事をするのを見るのが好きな子は神殿の中にいることが多いみたいだけど、今日みたいに晴れた日は神殿の中よりも近くにいる方が多いの。もちろん、性格にもよるけどね」
ヴィクトリアは神殿の周囲の小道をキョロキョロしながら歩き始めた。しばらくして、パッと顔を輝かせると軽やかに駆けていってしまった。目当ての精霊を見つけたんだろうが...。離れていくヴィクトリアの雰囲気はどことなく、武具の手入れや改良をするときのアレクサンダーにも似た感じがする。俺のことも意識の外のようだし、近づかない方が良いだろう。
置いてけぼりをくらったので仕方なく、公園を見てみる。ゆったりとした芝生に、人の手で通したのだろう小川が流れ、花壇には色とりどりの花々が並んで咲いている。少し離れたところにはガゼボ(柱と屋根だけの簡易な休憩所)もある。ぎっしりと詰まっている王都の中でここだけが少しゆとりを持っているような印象を受ける。行きたい場所もあてもないので、先程見つけたガゼボに入ってみる。壁がないから風が心地よく通り抜ける。ベンチも置かれていたのでのんびり過ごすにはちょうど良さそうだ。村ならいくらでも木陰があって、なんなら木の枝に腰掛けて休憩もできたが、さすがに都会は勝手が違う。周りに人がいないことでベンチに座ったまま柱に凭れて目を閉じる。町の喧騒がほんの微かに風に乗って届き、せせらぎと相まって眠気を誘う。
「レイモンド、お待たせ」
人の足音と声が聞こえてはっと目を開けた。
「ヴィクトリアか…。用事は済んだのか?」
「ええ、無事に。ここは気持ちいいわね。お昼寝に良さそう。…ちなみに感想は?」
「別に寝てた訳じゃ…」
「ふふ。そういうことにしておいてあげる」
ウトウトはしていたが寝てた訳じゃない。だからそんな微笑ましげな顔はやめてほしい。
「ほら、帰るぞ」
まだ小さく笑っているヴィクトリアに言いながら体を伸ばして立ち上がる。
「アレクサンダーさんの用事終わってるかしら」
「あいつは適当に声掛けてやらないとずっとやってる。村にいた頃、帰ってきたとき家族に声を掛ける前に部屋に籠って武具の改良し始めたことがあってな。変な物音に気づいたあいつの弟が見に行ったら帰ってきてから3日も飲まず・食わず・寝ずの状態で武具をいじってたそうだ」
「えっ…」
「さすがに俺も引いた。というか村中にすぐに知れ渡って引かれるか、めちゃくちゃバカにされてた」
ヴィクトリアの笑顔がひきつっている。そりゃあそうだろう。何の関係もない女の子であれば俺もこんな話はしないが、しばらくは3人で行動を共にすることになりそうなので、先に知らせてたほうが良いだろう。
ちなみに、家族にこってり絞られ、村中から痛い目で見られたアレクサンダーは帰ってきたらとりあえず家族(と、俺)に顔を見せて、武具いじりは帰宅の翌日以降に取り掛かるようになった。それでも、工具をやたらめったら部屋に持ち込んで置きっぱなしにするとか、無我夢中になって色々と散らかした挙げ句部屋の外から扉が開かないこともあると弟がさんざん文句を言っていた。ちなみに、開かなくなったときは扉の外から呼び掛けても反応しないので窓から侵入するか本気の殺気を飛ばすことで正気に戻すしかない。
「あー、アレクサンダーさんは集中力がすごいのね!」
「無理矢理フォローしなくて良いぞ」
そんな他愛もない(?)話をしているうちに宿に着いた。中に入ると、宿のご主人が俺達に気付いて手を上げた。
「やあ、おかえりなさい。戻られて早々申し訳ありませんが、お三方を訪ねてこられた人がいましてね。先日、食堂で鉢合わせになった例の彼なのですが…」
「私たち、その人を待っていたんです。ありがとうございます」
「ちなみに、うちの連れは、そのことは?先に帰って来たと思うんですが」
半ば予想はつくもののご主人に聞いてみると、人の良さそうな柔和な顔が困った笑顔に変わった。
「お声掛けはしたのですが…なんというか、お返事がありませんでしたので失礼ながらお部屋の戸を開けさせていただいたのですが、それ以上は憚られまして…」
「すみませんでした」
アレクサンダーが武具をいじっているときの表情は真剣すぎて怖いか、巧くいかなくてものすごい不機嫌で怖いか、巧くいって喜びのあまりすごい顔をしていて怖いかのどれかだ。しかも大抵は集中しすぎて殺気まで放っている。とりあえずアレクサンダーにはヴィクトリアと宿のご主人に引かれてることをなるべく拡大して言ってやろう。まあ、治るとも思えないが。
「私たちを訪ねてこられた方はどちらに?」
「なにぶん目立ちますから、ひとまず食堂の2階で待ってもらっています。お会いになられますか?」
「連れも同席させます」
「かしこまりました。では、準備が整いましたらお声掛けください」
ご主人に見守られながら階段を上がり、どことなく覚悟を決めたようなヴィクトリアと共に部屋の扉をノックする。案の定返事はない。
「ザン、入るぞ」
「失礼します…」
一応、作業に入る前に気は使ったのか扉はちゃんと開き、部屋の中もキレイだった。
「ザン、中佐が到着したみたいだぞ」
こちらに背を向けているので表情は分からないが無反応なのでやはり没頭しているらしい。
「ザン。ザン!」
だが、肩を叩いて大事な微調整の途中だったりすると本気で怒られるので下手に手出しはできない。
「アレクサンダーさん?」
ヴィクトリアがアレクサンダーの横の空いているスペースに膝をついてそっと覗き込んだ。
「アレクサンダーさ……ん!?」
ビクッとして、ひきつった笑顔のまま固まってしまった。
「おい、ザン。アレクサンダー!!いい加減気づけ」
最終手段として身構えながら、殺気を込めて言ってみた。
すると一瞬で反応したアレクサンダーはヒラリと振り向き体の回転そのままの勢いをのせて拳を振るってきた。さすが武闘家。殺気には敏感だ。もちろん躱したが。
「っ、え!?レイ?」
「え、じゃない。あと、お前の変な殺気に当てられて固まってるヴィクトリアに謝れ。中佐が来たことを知らせに来てくれた宿のご主人にも謝れ。ドン引きされてるぞ。あと、お前のお陰で風評被害に遭いかけてる俺とアコーダのみんなにも謝れ」
「えっ、ヴィクトリアさん!?そっかオレまたやっちゃった?」
またやらかしたことは分かったらしいアレクサンダーは顔面蒼白になりながらヴィクトリアに土下座した。
「あら…?アレクサンダーさん…。あ、そうだった私確か…」
「思い出さなくて良いぞ」
「お願いだから忘れて」
ヴィクトリアの頬が一瞬ひくり、となったあと、彼女は曖昧に微笑んだ。
「ほんとごめん」
「本当に、な」
「レイには言われたくない。てか、中佐が来たって?」
「食堂で待っているそうですよ。出られますか?」
アレクサンダーはサッと今まで使っていた工具や部品を纏めた。3人で再びご主人に声を掛け、取り次いでもらった。
「お待たせしました。わざわざお越しいただいてありがとうございます」
「こんにちは。こちらこそお待たせいたしました。3人は昼食はまだですよね?時間が時間ですから、食べながら話しましょうか」
…そんなに俺達と食事がしたいのかあんたは。
「さあ、座って。そんなに畏まらないで大丈夫ですよ」
中佐は相変わらずの笑顔だ。
「遺跡へ入る許可はどうなりましたか?」
アレクサンダーの問いに中佐はにっこりと微笑んだ。
「もちろん、頂いていますよ。陛下からの勅令で頂いていますから邪魔される心配もありません」
良かった。3人でホッと息をつく。中佐がオレの前になにか木片らしきものを置いた。
「それをお持ちください。陛下からの勅令が刻まれた木簡です。あなたたちの旅券と合わせて遺跡に入るために必要になります。それから、こちらは見た目はただの背負い鞄ですが、特殊な術がかかっていて見た目よりも相当大量の荷物を入れられます。…まあ、あくまでこの鞄の口から出し入れできるもの限定ですが。あなた方に差し上げます」
中佐の説明にアレクサンダーが目を輝かせた。
「それって、貴族や武官でも少佐以上の将校しか所有者がいないとかいうあれですか!?」
「ああ、そんな噂もありますねえ。実際は高度な魔術が施されているので価格も相応のもので裕福なものにしか手が出せない、という程度です。注文を受けてから作るので余計にそんなイメージがつくのかもしれませんが、貴族や官吏でなくとも名のある傭兵などは持っていたりしますよ」
「へえ…そうだったんだ。実在したんだ」
「アレクサンダーは軍に興味がおありですか?」
「軍、というか武術全般に」
「なるほど」
妙に意気投合したらしい2人に、話題は思いっきり逸れていく。俺やヴィクトリアは興味がないため、とりあえず並べられている料理をありがたく頂くことしばし。
「では、そろそろ本題に戻りましょうか」
中佐が満足げに言ったのはテーブルの料理があらかた食べ終わった頃だった。
「この辺りの地理はご存じですか?アレクサンダーは世界中を飛び回っているそうですから良いとしてお2人はいかがです?」
「あまり」
「では、こちらを」
中佐はどこに持っていたのか地図を広げた。
「今いる王都がここ。あなた方が向かうヨートレーマ遺跡はこちら。南西に徒歩で2日ほど、といったところです。遺跡自体は目立ちませんがすぐそばに町があり、道中も街道沿いに村がありますから迷う心配も無いでしょう」
中佐は俺達を改めて見遣る。
「ちなみに...資金の工面についてあてはありますか。先に言っておくと国からは神選の剣士には情報提供などの協力は可能なのですが、資金などの援助ができません。世界というものを相手にする神選の剣士に国が援助すると他国から目をつけられかねませんし、かといって世界中の国から援助しようにも、妙な動きをしないとも限りませんから」
分かったような分からないような理由だな。
「資金、ねえ...」
「オレは適当に色んな人のお手伝いとかして稼いでたけどな」
「お手伝い」
俺とヴィクトリアの視線を受けてアレクサンダーは大真面目に頷いて見せた。
「そ、お手伝い。まあ、犬の散歩とか買い物に始まり」
「そんなことまでしてたのかよ!」
「畑仕事に売り子、護衛とか危険害獣の討伐とか危険地帯の探索とか道場破りを返り討ちにする手伝いとか色々やったよ」
「本当に幅広いな」
俺達が呆れていると中佐は苦笑いしながら言う。
「お手伝いを推奨するわけではありませんが馬鹿にもできませんよ。ワタシも似たようなことをお勧めしようとしていましたしね」
「は?」
「自由戦士です」
自由戦士。聞いたことはある。国の防衛組織は優秀だが地方までは手が回らない。そのため、国に代わって治安維持に協力してくれる、戦いの心得のある者へ積極的に呼び掛けている。そのための組織を警吏組合と言い、各地にその拠点がある。自由戦士という呼称自体は特に所属する組織の無い武人や荒くれ者の総称のようなものだ。組合を通して自由戦士に依頼を出し、それをこなした自由戦士は報酬が貰える。依頼主は国だったり個人や商業組合だったりと色々だが依頼を出す方も受ける方もぼったくられたり騙される心配がないので需要は多い。
一般的にはこの仕組によって、自由戦士は良識ある流れの戦士、そうでない者は賊、と認識されている。ちなみに、護衛や討伐を主な生業としている者は傭兵と呼ばれ、自由戦士とは区別されている。自由戦士はあくまでも様々な依頼を引き受ける戦闘の心得がある者なようだ。
「自由戦士であればあなた方の旅についても隠れ蓑にもなりますしねえ。...神選の剣士一行であることは、なるべる知られないほうが良いでしょう」
それには全面的に同意だった。
「では、町を出る前に警吏組合で登録手続きをしましょう。ちなみに、ワタシを連れていけば色々と面倒を省けてお得だと思いますがどうしますか?」
満面の笑みで訊くな。
「じゃあ、お願いします。...こら、レイ。威嚇しない。ヴィクトリアさんも困ってるだろ。ほら、荷物まとめるよ。中佐、少しお待ちいただけますか」
「もちろんです。準備ができたらもう一度ここへ来ていただけますか。他の場所で待つとどうも目立ってしまいますから」
「分かりました」
部屋に戻り、荷物をまとめる。俺とヴィクトリアはほとんど何も出していなかったのでアレクサンダーが散らかした工具や武具の部品の片付けだったが。そして中佐に案内されて警吏組合へ。そこでも、もちろんあの中佐と一緒だったのだから全くの無事ではなかったし、本人は面倒を省けてお得だとか抜かしていたが、果たして本当にそうだったのかは微妙なところだ。ガキ三人(しかも女の子含む)で突然自由戦士の登録に訪れればもちろん面倒はあっただろうが、人をからかいまくる中佐を連れていったのはまずかったかもしれない。中佐自身は、王都の警吏組合にも役人がいるので、そこの頭でっかちを掃除できたとか嬉しそうに言っていた。
そんなこんなで、俺達が王都から出たのは結構な時刻で、その日は一番近い村に日没ギリギリに駆け込んだ。その後、遺跡に着くまでの道のりは順調で中佐の説明通り、王都を出て二日後の夕刻前には遺跡近くの町に辿り着いた。今から遺跡に向かうには微妙な時間だ。そこで情報収集も兼ねて警吏組合に行くことにした。
「こんにちは。ちょっと色々見たいんですけど」
「はいよ。そーゆーのはあっちね。君たち新人?」
「まあ、そんなとこです」
「だったら、とりあえず名前が売れるように頑張んな」
「はは...ありがとうございます」
微妙な受付の人に言われた方へ行くと雑に編綴された紙の束が数冊あった。表紙には『依頼』とか『周辺情報』とか『討伐情報』とか書かれている。その中からアレクサンダーは討伐情報を手に取った。そしてなぜかニッと笑う。
「なんだか”旅”って感じになってきたね」
「どういう意味?」
「王都まではまあ、人食い狼とか野獣はいたけどそんなに危険でもないし変わったこともなかったろう?」
「確かに、野獣はどこにでもいますしね」
「装備を整えるってのもなんか雰囲気あるよね。楽しかった」
アレクサンダーに俺達は微妙な顔になる。
「そうかもね」
「...はぁ」
頼りがいがあると言えなくもないのだが。なんとも締まらない。ヴィクトリアは慣れてきたらしく仕方がない、というように微笑んでいる。アレクサンダーはパラパラと討伐情報の束を捲っていく。
「お、見て見て。大山鯨だって!」
暢気だなあ...。
若干の不安は感じつつも、ともかく遺跡までは辿り着いた。焦りは禁物だと言い聞かせ、今日のところはこの阿呆な親友の話に付き合いつつ体を休めることにする。
投稿が大変遅くなりました。
以前も読んでくださった方、申し訳ありません。
ちゃんと話が完結するまで投稿は続けるので、よろしくお願いします。m(__)m
以下、次回予告です。
レイモンド→レイ
アレクサンダー→ザン
ヴィクトリア→ヴィ
『次回予告』
レイ「町で情報を仕入れて遺跡に向かう俺達。ひとまずは順調な滑り出しだ。...この遺跡に、村を何とかするヒントがあるわけか」
ザン「うわぁー。風化し始めた石造りの建物、生い茂った木、いかにも古そうな感じだな」
レイ「そりゃ古いだろ。遺跡なんだから」
ヴィ「でも、その割には新しそう、かも?」
ザン「そうなの?」
ヴィ「ええ、本当にふるーい遺跡だと、精霊か怨念の住処になっているのがほとんどよ。そうでなくてももっと苔むしていたりするもの」
ザン「精霊か怨念、か。さすが巫術師」
レイ「あまりのんびりしてると置いてくぞ」
レイ「ようやく遺跡か」
ヴィ「これ、村を出てからまだ10日も経ってないのよね」
レイ「作者、とっとと更新しろよ」
ザン「遺跡のマップが出来て満足だってさ」
ヴィ「今年の目標は2週間に1回以上更新が目標、らしいわ」
レイ「はぁ...」




