3
答えた俺を長老は探るようにまだしばらく見据えていたが、ふぅと1つ溜め息をつくと自分の孫を見るような慈愛のこもった瞳を俺に向け直した。
「レイモンド。お前の捻くれているようで真っ直ぐでもある心、村の皆は好ましく思っているよ」
周りのみんなもすごく温かい優しいし目で俺を見ていた。きっと俺の顔は身体中の血液が集合したんじゃないかというくらい真っ赤に違いない。
「とにかく、みんなが死ぬのは御免だから。行かなきゃなんねえんなら行ってやるさ」
伝承は鬱陶しいが村のみんなは結構大事だ。
「レイーっ!いる!?」
耳を劈くような絶叫を上げながらバタバタ踏み込んできたのはアレクサンダーだ。
「なんだようるさい。仮にも長老の家だぞ」
「長老!うちの家族、母さん以外全滅なんだけど!みんな寝込んでて1歩も動けないし、母さんは看病で付きっきりだからオレが代わりに報告に来たけども!」
その言葉に、その場の全員がまた驚愕に目を見開いた。みんなそろそろ目が飛び出すんじゃないだろうか。
「なんだと?」
「確かに他の家はみんな相談にきたのにシールズだけ来なかったけど、あなたのところはみんな丈夫だから罹らなかったのかと思っていたわ」
「ザン、本当か?だって、あの、熊みたいな親父さんに、豹みたいな妹に獅子みたいな弟、仙人みたいなじいちゃんとばあちゃんだろ?」
「...みんな、うちの家族なんだと思ってんの、特にレイ?」
アレクサンダーが半眼になって言うが、シールズ家はそれくらい、元気印だ。
「アレクサンダー、レイモンド、そして、そちらの巫術師殿。こちらへ」
長老が奥の部屋の扉を開く。そこには2台のベッドが置かれ、長老の息子の奥さんと、長女のところの孫が眠っていた。息は浅く、寝顔は苦痛に歪んでいた。孫の方はまだ幼い男の子で、涙の跡が幾条も残っている。そして何より目につくのは、顔や腕などに浮き出た痣のようなもの。
「これは」
「今朝苦しみ出した2人にはこの痣のようなものが浮かび、酷い熱があった。1度目を覚ました妻に聞くと痣が浮かんでいるところはズキズキと痛むと言っていた。その痛みで体が動かせないそうだ」
「アレクサンダー。お前のところは」
「...うちも、みんなそうです」
アレクサンダーは固く拳を握りしめ、ヴィクトリアは苦しそうな彼らに顔色を失っている。
俺はふと思い出す。周りには聞こえないよう、ヴィクトリアの耳元で小声で訊く。
「ヴィクトリア。お前は手立てを探しながらここまで来たって言ってたな。あの病気について何か分かるか?」
ヴィクトリアはゆるゆると首を振った。
「ごめんなさい。あまり詳しくは。心当たりはあるわ。でも、私1人では調べられなくて...。国と交渉が必要で、神選の剣士を条件にされたわ」
なるほど、そうきたか。神託も厄介だが、確かに国としては神託にまさに命運がかかってるって訳だ。
しかし、こうなるとやはり、逃げられそうにない。アレクサンダーの家族には本当に世話になっている。それに、アレクサンダーに俺みたいに家族を喪ってほしくない。いや、あいつだって今は大丈夫だけど罹らない保証はない。
「ザン、わりぃけどちょっと急ぐから。話は長老達にでも聞いてくれ。...ヴィクトリア。準備するからとりあえず着いてきてくれるか」
「え、レイ?」
「行ってやるさ、神託やらの通りに」
呆けたようなアレクサンダーを任せた俺は急ぎ足で長老の家を後にし、自宅へ向かう。本当は走りたい気分だが、ヴィクトリアが着いてこれる気がしないので早歩きだ。
「あの、レイモンド?すごく怖い顔してるけど大丈夫?」
「元からだ。無愛想で悪かったな」
「そういう意味じゃ無かったのだけど...」
「そんなに気遣わなくていいし」
どうしても気が立って物言いがキツくなってしまう。病だと言われても、神託の影響かと思うと本当に頭に来る。
「着いたぞ。適当に座って休んでろ」
俺の家は村のほぼ中心にある長老の家から1番遠い。ずっと小走りで着いてきたヴィクトリアは息が上がっている。とりあえず水を渡してやる。
「ありがとう。あなたの家はひょっとして番人か何かなの?」
「...なんでそう思った」
「伝統的な村や集落は、まず中心に有事の避難場所も兼ねた長の家があり、街道に近い位置には自警の要となる家や詰め所が作られる。この2つは外部の人間から村や集落を守るための機能ね。けれど、この村みたいに周りを森でで囲まれていたら人間以外の存在にも対処しなきゃいけない。自警組織が当たることもあるけど本当に昔からの伝統を引き継いでいる村は自警組織とは別に、人間以外に対処する専門の家がある。その家は番人と呼ばれ、自警の要とは反対側、つまり村の奥の外れに家や拠点を持ってる。そう、本で読んだことがあるわ。
私は直感を頼りに直接森の中を通ってあなた達のいたところまで歩いたけど、村の前を通りすぎるとき、街道から自警の拠点が見えたわ。入り口に剣と盾が架けられていたからすぐに分かったわ。ここはその反対の村の外れのようね。このお家とお隣のお家が番人?」
「そうだな」
当たりだ。うち、アークトゥルスと隣のシールズは代々番人をしている。
「もしかして、あなたが、神託は大嫌いだと言ったあなたが神託に従うと言ったのは村のみんなを番人として守るため?」
真剣な目でそう訊いたヴィクトリアに俺は首を振る。
「違う」
「なら、どうして?」
「番人として、とは違う。俺は幼い頃に両親を亡くした。祖父母も番人だった頃の怪我が原因でもっと前にいなくなった。そんな俺をこの村のみんなが守ってくれた。特にザンの家族ーー隣の家な。ザン達はこの家から離れたくないって我が儘を言った俺をずっと守ってくれた。いや、家族として一緒にいてくれた。
血の繋がった家族はもういないけど、この村のみんなは俺の家族だと思える。だから、俺のせいでみんながいなくなるのは耐えられない。
だったら、どうせ運命とやらは決まってるんだから、その神託に乗ってやる」
と、格好つけられたのはここまでだった。それは、
「レイ、長老から、聞いたよ」
アレクサンダーが追い付いてきたからだ。
「ザン」
「まさか長老のとこのお嬢さんまで神託を聞いてたとはね。これで神選の剣士決定だ」
「そうだな」
「それで良いのか」
「あ?」
アレクサンダーにしては珍しく、人を睨み付けて、怖い顔をしている。
「長老のとこで行ってやるって啖呵切ってたけど、本当に行くのか?お前は本当にそれで良いのか?と言うか、本当にやれるのか?」
「うるせえよ」
「レイ。オレは...」
「仕方ねえだろ、どうせ運命は決まってるんだから」
「聴けよ!」
突然アレクサンダーが掴み掛かってきた。単純な膂力では俺の方が劣るから引き剥がそうにもそれができない。
「いてえ、放せよ」
「レイモンド。オレはお前がそんな性格になった原因を知ってるから、そして今までは必要なかったから何も言わずに来たし、父さんや母さんが何か言おうとしたときも止めた。今までみたいに、村の中で生きていくだけならお前は腕も立つからみんなから認められていて爪弾きにされることもないし、わざわざ言うことなんてなかった。でもな、村の外に出るなら、まして神選の剣士なんてものをやるなら、『どうせ運命は決まってる』なんて言ってちゃダメなんだよ!
お前のためだけに言ってるんじゃないぞ。神託を得た巫術師と神選の剣士が共に旅をするんなら、お前の命はお前だけのものじゃなくなる。お前はヴィクトリアさんも守らなきゃいけないんだよ。そんな、人を守ろうってときにどうせ、なんて言って、外でそんなことが通用すると思うな!」
外を旅したからこその言葉だった。お前のためだけに言ってるんじゃないぞ、と言いながら、アレクサンダーの目には俺を心配する色が覗いていて、この親友が何を言おうとしているのか、頭では分かった。
たとえば俺が、どうせ...と、甘い考えをしているうちに、ヴィクトリアを守りきれなかったら。たとえば、俺がヤル気のない旅をしてる間に、行くのが遅くて村のみんなが命を落としてしまったら。どちらも俺にとって深い傷になる。それ以前に、俺がうわべだけの旅をして守れなかったら、命を奪われた人々はあまりに報われない。
それは分かる。
「旅をするっていうなら腹を括れ。旅をするのに必要なのは、神託に従う覚悟じゃなく、自分自身が人を守る覚悟だ。いや、世界を守る覚悟だ。仕方ないから、なんてそんな甘えた考えでやるなら、自分にはできないと言う奴よりも臆病者で、とんでもない卑怯者だ」
アレクサンダーの言葉は正論だ。でも、俺にとって神託も運命もどうせ決まってるものでしかなく、それを叶えるために必死になるなんて、簡単には変われない。
「そりゃ、行きたくなんかねえよ!けど、仕方ねえだろ、行くしかないもんは行くしかねえんだ。俺は使命感に燃える物語の主人公じゃないもんでね。こんな物語だか遊戯だかなんだかの中の世界で、そんな事やってらんねえんだよ」
「...支離滅裂だな。もういい。これ以上話してるとお前が嫌いになる一方だ」
「そりゃ奇遇だな。俺もだ」
アレクサンダーは俺を投げ捨てた。
「何が神選の剣士だ。お前なんてただの反抗期のガキじゃないか」
「あー、そーだよ!悪いかよ」
扉がものすごい音をたてて閉まる。ヒビ入ったかも。
「おい、ヴィクトリア」
「は、はいっ」
ヴィクトリアは部屋の隅っこで小さくなっていた。涙眼になってるのでかなり怖かったんだろう。
「すぐに出るぞ。のんびりしててまたあいつに説教されたら堪ったもんじゃねえし」
「分かったわ」
既に日は傾き始めている。どちらにせよこの村から他の村や町に行くには馬でも(うちの村の馬なら)1日半弱かかる。人の足で歩くなら4日ほどになるか。なので出発は明日にしようと今日だろうとしばらくは野宿だ。ヴィクトリアも徒歩で来たようだからそれは分かっているはずだ。
昨日貰った俺の取り分の中から干し肉やらの日持ちするものだけを取り出し、ヴィクトリアに鞄に詰めるよう頼んだ。次いで米や麦、粟などの穀物を適当に臼に入れて挽く。こうして粉状にしておけば少しの量でも粥のように煮ることで嵩が増える。と、アレクサンダーが言っていた。これも鞄に詰めてもらう。ちなみに鞄は革製だ。丈夫である上に、本当に食料がなくなったときには非常食に出来る。これもアレクサンダーが言っていた。
それから水。町に寄れば買えるだろうが持っておいて損はない。これもアレクサンダーから聞いた。
「レイモンドはこういうの慣れてるの?」
「全然」
「その割にはちゃんとした準備をするのね」
「ザンの土産話が初めの頃は旅の苦労話ばっかだった」
「仲、良いのね」
縄や火打ち石、小刀、当て布や手当てに使える端切れ、適当な器などの道具類も鞄に放り込む。
こうしていると本当にアレクサンダーの苦労話ばかり思い出す。一緒にあいつの能天気な笑顔まで出てくるのが苛立つから、脳内で既にあいつを50回くらいぶん殴ってる。
「こんなもんか。おい、休憩できたか?」
ヴィクトリアに声を掛けながら愛用の剣を佩く。
「ええ。大丈夫よ」
「欲しいものとかないか?」
「ええ」
「なら、行くぞ」
鞄を背負って家を出ると、すぐそこに何か袋(荷物?)が置かれていた。視線を感じて隣家を見ると慌てたように窓がバタンと、カーテンもピシャッと閉められた。でも、視線はもろに合ったぞアレクサンダー。
「仲、良いのよね?」
「......」
置かれていた荷物?の中を見ると、小型の簡易天幕などの野宿に必要な道具が入っていた。大事に使い込まれているのを見ると、アレクサンダーがこの前まで使っていたものなんだろう。
(持っていけ、てことか)
たぶん、俺に説教をする前に持ってきていたんだろう。あれだけぶちギレたくせにこういう道具は持っていけと言外に示すところはやはり兄貴分のアレクサンダーだ。
「行くぞ」
アレクサンダーの野宿用品も持って、俺達は村を出た。
村が見えなくなった辺りで訊いてみた。
「それで?国と交渉するってのはどういうことだ?」
「ええ、遥か昔に流行った病について、文献が残っていたの。まず、文献によると、その病の特徴は昨日まで元気だった人が突然倒れ、熱と悪夢に魘され、体には奇妙な痣が浮かび痛みに苛まれるとか」
「まんまその病気みたいだな」
「その病を治すには普通の治療や薬では効かなくて特殊な製法の薬と、巫術で治したと書かれていたわ。でも、その方法は使い方を間違えれば暴発して死の巫術に繋がるから碑文に記した後封印されたんだって。その封印された碑文は国が管理する遺跡の中にあるのよ」
「なるほど。遺跡の中に入りたけりゃ神選の剣士を連れてこいってことか」
「それだけじゃなくて、あなたを連れていったうえで交渉することになるかも知れないわ。この前私がお会いした役人はずいぶんひねくれた人のようだったから」
「もしかして、しばらく役人とやりあったのか?」
「そんな物騒なことはしないわよ。ただ、神選の剣士に会いに行く前に入れて欲しいって、3日ほど粘っただけよ。最後は害虫みたいに追い払われたけどね」
ヴィクトリアの嫌そうな顔に本当に嫌な奴だったんだなと感じる。俺も彼女にとって嫌な奴だろうと思うのだが、始終笑顔か気遣うような表情をしている。その彼女が顔を顰めるのだから相当だろう。
「...まさか、再生の巡礼の後でないと入らせない、なんて言わないだろうな」
「それはさすがに...ない、と信じたいわね」
「まあ、脅してでも先に入るけどな」
「脅しちゃダメだと思うわ」
「本気で脅しはしねえよ。村を潰されても困るし」
俺はひたすら彼女と話しながら歩いた。黙っていると、アレクサンダーの言葉が頭の中をグルグル回って、押し込めようとしている、どうして俺が、という感情を思い出してしまうから。
そうして休憩しながら歩き、日が沈む前に野宿する場所を作る。
道から少し森に入ったなるべく平らな場所で、周囲の邪魔な枝を打ち払い、道中で拾った小枝で火を焚く。
「結構手慣れてるのね」
ヴィクトリアが感心したように言う。
「私、旅に出たばかりの頃に枝を拾い忘れて、打ち払った枝で火を起こそうとしたことがあるの。今では笑っちゃうけどね」
「まあ、これくらいはな。村にいても、森の深くまで入るときは野宿もしたからな。...お前は、この旅は今までずっと1人だったのか?」
「ええ、そうよ。火を起こすことさえ家でするのとは全然勝手が違って驚いたわ。1人旅には憧れていたこともあったけど、想像以上に大変ね」
そう言ってクスクスと笑う。女の子1人で野宿もしながらの旅は結構堪えるだろう。しかも、それが初めて旅するならなおさら。
「怖くなかったのか」
ヴィクトリアは笑うのをやめた。
「怖いわ。すごく。...あなたも、怖いでしょう」
真剣な、気遣うような目で、俺を覗きこむ。
「あの、ね?巡礼の旅が嫌なら、それは今は考えなくて良いんじゃないかしら。とにかく、あなたの村の皆さんを助ける事だけ考えて、やってみて、巡礼の旅の事はその後で良いんじゃないかと思うの。あなたのお友達は、本気であなたを心配していたわね。あのお友達と仲直りして、自分の気持ちを整理して、それからでも良いと思うの。...神託を聞いてあなたを連れにきた私が言うのもなんだけどね」
そう言いながら座った膝の上で揃えられている彼女の手は震えていた。
(怖い、か。怖かった、でなく)
神託を得た巫術師は、神選の剣士を探し出さねば世界が滅ぶ、というある意味神選の剣士本人よりも重いものを背負っていると言える。俺のような奴ならまだしも、ヴィクトリアは違う。たった1人で、世界というものの重みに耐えてここへ来た彼女は揶揄でなく、すごいと思う。
「お前はそれで良いのかよ。遠路はるばるここまで来たんだろ?」
「誰だって、嫌なものは嫌だもの。私だって、本当はこれで良いのかすごく迷ってる...」
「迷ってる?」
「あなたは本当は行きたくないのでしょう?それを、村を人質にして無理矢理旅立たせるというのは、私も嫌だわ。あなたがどうしてそこまで神託を嫌うのかは分からないけれど、でも、良い気はしないわ」
そんなこと考えてたのか。
「私ね、すぐになんでも信じてしまって、それで友達やお父さんやお母さんにたくさん迷惑を掛けてきたの。今まではそれでも良いって言ってくれる身内の人ばかりだったから良かったの。でも、あなたは違う。私は神託を信じているわ。でも、あなたに迷惑は掛けたくない。だから、今すぐに全部の覚悟を決めようなんて焦らないで。私とあなたは違う。私は神託は悲しみを遠ざけるものだと思っていたし、今もそう思っているわ。でもあなたにとっては、悲しみに向かっていくようなもの...でしょう?」
泣きそうな彼女に、重い鎖が絡み付いている幻覚を見た。
どうせ、運命や神託というものに縛られて諦めたまま生きるのなら、彼女の巫術師の使命を神選の剣士とやらとして一緒に背負っても良いかもしれない。
「ヴィクトリア。俺が村のみんなを守りたいのは本音だ。だから、みんなを守れるなら俺は神託に従ってやる。途中で投げ出しはしない。こうなった以上、逃げられないのは分かってるから。
お前の神選の剣士を導くとか言う使命もほとんど俺の使命みたいなもんだろ。どうせ背負わなきゃならないなら、お前の使命も一緒に背負ってやる」
「レイモンド...」
一瞬茫然としたヴィクトリアだったが、やがて普段の明るい笑顔を取り戻して言う。
「なんだか、告白でもされたみたいね」
クスクスと笑う彼女に、俺の顔は真っ赤に違いない。
「でも、嬉しいわ。ありがとう、レイモンド」
心から嬉しそうに笑う彼女は、とても可愛かった。
照れ隠しにそっぽを向いたとき、ふと冷静になった。誰かに、あるいは何かに見られている。火の灯りのギリギリ外から視線を感じる。それが殺気を含まないものだったせいで今になってようやく気づいたが、確実に何かに見られていた。
「レイモンド?どうしたの?」
ヴィクトリアが俺の肩に手を置いた。さっきの笑顔を見た後だとその仕草も可愛く思える。が、そんなことを思ってる場合じゃない。俺は振り返って彼女の両肩を掴む。
「ヴィクトリア。何かがいる。こっちを見てる」
「え!?何かって?」
彼女は怯えたように俺の腕を掴み返した。
「分からない。俺から離れるなよ」
立ち上がろうとしたとき、頭の中で警鐘がけたたましく鳴り響いた。思わず彼女を抱えて逃げようと抱き寄せたとき、足音が聞こえた。それもすぐ真横から。がむしゃらに飛びすさって、構えようとした。
「良い感じになってるところ悪いけど!そろそろ気付いて!」
とてもよく聞き慣れた声に、よく知った顔。なぜかボロボロのそいつに、目を瞠った。
「なってねえし」
「あ、うん、そうね」
そしてとりあえず、変な誤解を解きにかかった。
森から出てきたのは、アレクサンダーだった。
更新、遅くなりました(>_<)
作中、レイモンドがこの物語だか遊戯だかなんだかの中の世界、と言っているのは半分は揶揄ですが半分本気で言っています。
...彼は厨二な悟り世代かもしれません。
以下、次回予告です。
レイモンド→レイ
ヴィクトリア→ヴィ
アレクサンダー→ザン
『次回予告』
レイ「神選の剣士として旅することになった俺達は、ひとまず謎の病を治す方法を調べるため、国が所有する遺跡に入るため、許可をもらいに王都を目指すことにした」
ヴィ「絶対許可を貰わなくちゃ。またあの蛇みたいなお役人に話しなきゃいけないのかなぁ」
レイ「まあ、なんとかなんだろ」
ザン「なんかごめんね、せっかくの良いところ邪魔して」
レイ「だから、違うつってんだろ」
ヴィ「ちょっとしつこいですよ、アレクサンダーさん」
ザン「分かった、分かった。ごめんてば。...息はぴったりだね」
レイ「ザンは少なくともしばらく退場だと思ってたんだが、普通に着いてくんのかよ」
ザン「え、ダメ?」
ヴィ「そんなこといって、本当は嬉しいくせに」
ザン「レイ、すぐ睨まないの。次回、王都へ向けて、珍道中!」




