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 雲がたなびく橙色の空を見上げながら俺は籠を背負い直した。閉鎖的なこの村では、男衆は森や山に入り、女衆や子ども達は平原や村の近くを流れる河で生活に必要なものをみんなで集める。そうして長老衆が知恵や経験で生活を補ってくれる。とても平和な村だ。


 ただ、この村には言い伝えがあって、それのお陰でみんなどことなく修験者のような、自律と相互扶助の精神で暮らしている。

 この世界はあらかじめ決められた運命(シナリオ)に添って繁栄し進んでいるのだとか、この世界に暮らす人々はみな無意識にその運命の通りに世界が進むための行動をしているのだとか、その運命は決して覆されることはないのだとか、個人の意思や感情さえも大いなる世界の意思の前では組み込み済みなのだとか。


 それってつまり、例えば歴史に残る偉業を達成した人がいたとしても、世界中から絶賛されるような素晴らしい人がいたとしても、努力を重ねて夢を叶えた人がいたとしても、それは全部、元から決まっていた、そうなるべくしてなったということじゃないか。そう気付いてしまったときから、この世界はものすごくつまらない、どうでもいいものに思えてきた。そんな個人なんてどうでもいい世界で生きてる俺もどうでもいい存在に思えて、頑張るのがバカらしくなった。そもそも俺は運動神経も、頭も人並みにはあるし、そんなに努力しなくても普通に生きていける。


それに、世界の運命(シナリオ)とかいうやつは誰にも覆せないんだろ?俺が何をしてもしなくても、元々それすらも折り込み済みなんだろ?なら、俺は虚しくなるだけの努力なんてしない。したいやつだけがしてりゃ良いんだ。


「レイ兄ちゃん、お帰りなさい」


「おかえり!」


 村に帰ると向かいの家のアリンソン(アリー)フィオナ(フィオ)が飛び付いてきた。


「アリー、籠背負ってる人間に突進すんなって。」


「レイ兄ちゃんなら平気でしょ?」


「そりゃあ俺だからな」


「今日は何とってきたの?」


「フィオ、剣には触るなって言ったの覚えてるか?」


「えー?そうだっけ?」


「首傾げてもダメなもんはダメだぞ」


 アリンソンを抱えたまま、フィオを躱しつつ俺は長老衆の集会所に向かう。基本的に協力して生活してるこの村ではみんなが収穫を持ち寄って分け合う。俺は生来の運動能力の高さから他のみんなが行かないような辺りにもちょくちょく立ち寄るので大人達の覚えも良い。ついでに、この世界そのものにうんざりしてるせいで同年代の連中と比べて不平不満を言わない。お陰で親世代からは可愛がられているが、村の言い伝えを疎んじていることも、村のみんなが知っているから長老衆には不良だと思われているらしい。


「ただいま戻りました」


「レイモンド。待ってたぞ」


 集会所に入るとほとんどみんな揃っていた。期待の眼差しを受けて俺は籠を下ろし、今日の成果を披露する。


「おぉ、さすがレイモンド!」


「量も質も最高だわ...」


 近く行われる祭祀に欠かせない神木のてっぺん辺りになる果実。河の激流の真っ只中にある巨人の涙と呼ばれる岩の中の空洞からとれる鉱石と、北の断崖絶壁にしがみつくように生えた木に巻き付いている蔦はあらゆる病気に効く薬の原料だ。村の狩りに使う武器を作るための砥石は大蛇の洞窟でなければ手に入らない。

 どこも危険な場所ばかりで、正直、なんでそんなとこにあるものを使うことにしたんだとご先祖達を問い詰めたい。


「ご苦労だったな、レイモンド。いつもすまんなぁ」


 この村の頭である長老は聞こえづらい嗄れ声で言った。この長老も、俺が言い伝えを疎んじていることを知っているが、他のみんなにするのと全く態度は変わらず自分の孫のように可愛がってくれる。

 まあ、他の長老衆も、反抗期の子どもを見る目で俺を見ているようだから、不良扱いはするものの、邪険にされたことはない。

 基本的にこの村は、運命共同体というか、村のみんなが家族だ。だからか俺も、世界やら運命やらを倦んではいても、少なくともこの村のみんなの事は大事だった。


「おかえり、レイ」


「ザン!?おかえりって、お前こそ帰ってたのかよ」


 アレクサン(ザン)ダー。俺の親友で兄貴みたいなやつ。気まぐれでフラッといなくなったと思ったら数か月後に突然大量の土産を持って帰ってくる自由人だ。幼い頃から武術を磨いてきたためめっぽう強い。一度武者修行の旅と称して外に出てから、気ままな一人旅にハマったらしくここ最近は年に数回帰ってきては直ぐにいなくなる。


「そう。さっきな」


「だったらザン、後で」


「手合わせだな?良いよ。お前はそれをやんなきゃストーカーも裸足で逃げる勢いでオレに付きまとってくるもんな」


「......」


 俺が黙って睨むのを見て、アレクサンダーは悪戯っぽく笑う。実は自分も手合わせを楽しみにしてるくせに、とはアレクサンダーの両親の言だ。


「と、その前に。西の丘に行きたいな」


「あぁ...じゃ、すぐ用意してくる」


 身を翻す俺に長老衆が待ったをかける。


「レイモンド!取り分、忘れるなよ!」


「食べ盛り暴れ盛りの取り分は多いからなあ、ワシらにはちと運べんよ」


「重いし大きいし、お前の家に運んどるうちに日が暮れるわい」


「どう考えても、お前が自分で運ぶほうが早いでなあ」


 あれだ、と指差された籠を見た俺が、


「や、だからあんなにいらないって」


 と言っても、


「いんや。これくらい持たせんと皆が納得せん」


 と言われていつも押しきられる。


「あ、じゃあオレが持ってくよ。レイは準備しときな」


「おお、そうか?だったらこれも...」


 アレクサンダーが言うと長老衆はこれ幸いとさらに俺の取り分に何か追加しだした。


「え、だからそんなにいらねえって」


「いいから、いいから」


「アリー、どさくさに紛れてピーマン入れるな。お前の家の分だろ」


「あ、バレた?」


 賑やかな集会所をアレクサンダーに任せて、俺は家に向かう。

 今日の崖登りや激流下りもどきでヨレヨレになった狩猟服を洗濯桶に突っ込み、ボサボサになった髪をなんとなく括り直し、西の丘に持っていくものをまとめ、改めて剣を佩き直したとき、家のドアを蹴る音がした。


「誰だよ、つか蹴るなよ」


 文句を言いながら開けると、アレクサンダーが籠を3つも抱えて立っていた。


「え、ザン、何それ」


「レイはすぐ断るからいつも持たせられない分も、てさ。運ぶのがオレだと思ってみんな遠慮しないからこんなになっちゃったんだよ」


「いらねえ、って言ってんのに...」


 気に掛けてくれることは嫌な訳じゃない。だけど俺は本当に必要としてないんだから、そんなに持たせてくれなくて良いと思う。呆れ顔を隠さずにいるとアレクサンダーが苦笑する。


「まあまあ。みんなレイがかわいくて仕方ないんだよ」


「お前に言われるとなんか気色悪い」


「酷いなあ。オレとお前は兄弟みたいなもんだろ。準備できた?」


「ああ」


 俺は小さめの籠と桶を持って、アレクサンダーはドアノブに掛けていた鞄を持って歩き出した。


「レイ、また腕を上げたんだってな。長老が色々と教えてくれたよ」


「はぁ?色々って」


「神木の実の切り口が綺麗だとか、薬草の根を切らずに採れるようになったとか、獲った獲物を毛皮を傷つけずに捌けるようになったとか」


「遠足の報告する子どもかよ...」


「あと、剣も。ついに師匠もお手上げだって嘆いてたよ」


「はあ?なんであの人嘆いてんだよ」


「そりゃ、あれでしょ。もうレイのほうが強いんだから先生だなんて呼んでもらえないーとか」


「師匠は師匠だろ。強さとか、関係ねえし」


 師匠は俺にとって、1番身近な大人だと言って良い人だ。反抗期真っ只中な俺に力の揮い方を教えてくれた。お陰で俺は村八分にされずに済んだ。


「て、いうのが建前で、レイが暴走しても止められる人が居なくなった、ていう嘆きだよ」


「あっ、そ...」


 俺ってやっぱり不良扱いなんだな。知ってたけども!


「ま、1人、いるけどな」


「ん?何が?」


「俺が暴走したときに止められるやつ」


「えー?師匠以外にいる?レイはダントツてか天才だからなあ」


 本気で考え込むアレクサンダーにきっと悪気はない。根っから優しいし、謙虚だし、良識ある大人でお人好し、村の女性達の憧れの的なのだ。


「ザンがいるだろ」


「え?オレ?」


 瞬くアレクサンダーに俺は笑う。


「最近だって、修行の旅だったんだろ?」


「そうだけど...」


 アレクサンダーは困ったように笑い返す。


「確かに自信はあるけど、あんまり村にいないからな?」


 普通に言い放ったアレクサンダーに、俺はなんとなく微妙な気分になる。謙虚というのは誤認かもしれない。俺を天才と言った後に俺を止める自信があるとか、謙虚ではない。


「レイ。顔に出すぎ。言っとくけどオレ、この前の世界総合武道大会優勝したからな?」


「え、あれお前だったのか!?...『幽玄の鬼才美青年』とか呼ばれてたぞ?」


 アレクサンダーがガク、と落ち込んだ。


「レイ、それはやめて...痛いから。すごく痛いから」


「...ゆうげ...」


「レーーイーー!!首捻り潰すよ!?」


「夕餉の支度してなかったーって独り言だったんだけど?」


「頭だけ殴り飛ばす、よ...?」


「...すんません」


 本気でヤバイ顔をしてたのでやめてやることにする。


「あ、ほら!見えてきたぞ」


 道が途切れ山の中腹でありながら草原が広がり、桜の古木が聳え立つ、丘のようになった場所。

 途中の斜面から振り替えれば夕食の支度をする家々からは良い匂いの煙が立ち上ぼり、窓から灯りが覗き、時々子ども達や親父どもの笑い声が聞こえる。

 古木の向こうを仰ぎ見れば小さく儚い瞬きが1つ2つ。

 その根本まで辿り着くと小さな塚がある。アレクサンダーはその塚に語りかける。


「おじさん、おばさん。久しぶり」


 俺が桶を差し出すとそこから水を掬って優しく塚にかける。


「旅って面白いね。色んな人や町や、変な動物がいたりして、文化が違えば生活や言葉はもちろん、親子とか師弟の在り方も全然違う。でも、商人の活気とか、長老やら町長やら(おさ)ってものの恐さとか...あと、武道家の精神は共通みたいだね。オレが鍛練してたらその辺歩いてたおじさんがものすごく嬉しそうに寄ってきて一試合申し込まれたり、全然違う流派の人たちがその流派から見たオレの弱点教えてくれたり、逆にオレにアドバイスしてって言う人がいたり。何だかんだやってるうちに気付いたら総合武道大会とか言う世界大会に出てたんだ。すごく楽しかったよ。外って、本当に刺激と変化が多い。それに比べてレイは相変わらずだね。村の外の人は目まぐるしいくらいコロコロ変わるから、この変わらなさはなんだか安心するよ」


「おい。最後は俺の悪口じゃねえか」


「あはは」


 俺は、そっと声をおとす。


「あんま真に受けんなよ、父さん、母さん」


 その塚は俺の両親の墓だ。

 8年前に両親が死んだとき俺と一緒にいたザンは俺がどれだけ取り乱したか、どんなに暴走したか知っている。だから、身寄りのなくなった俺を長老衆が引き取ろうとしたとき、かつてない剣幕で反対し普段は元の俺の家で、何かあってもすぐ隣のザンの家で暮らせるようにしてくれた。その結果、元々身近な兄貴分で仲が良かったザンはほぼ俺の兄貴状態だ。2年前からはふらっと旅に出ては思い出したように帰ってくる放蕩兄貴だけど。


「おじさんとおばさんなら全部見てそうな気もするけどね」


「あー、確かに。常に見張られてそうだな」


「見守ってくれてる、だろ」


 言いながら俺たちは塚を水と布で磨きあげ、持ってきた花と木を削って作った掌に収まるくらいの剣を供える。


「父さん、母さん、大蛇の洞窟でも1人で行って帰ってこれるようになったんだ。もう余裕だぞ。成人の儀より前に完全制覇しちまった」


 大蛇の洞窟はこの村で冬に行われる成人の儀の際にも使われる。内容は、大蛇の洞窟に入り、大蛇の鱗を1枚持って帰るというものだ。一見、危険なように思えるが実際は村の中でも特に武に秀でた連中の監視付きだし、冬なので大蛇は基本的に冬眠しており、よっぽどのことがない限り命の危機はあり得ない。ただし、そのよっぽどのことが起こった年はそれから様々な不運に見舞われる。天変地異やら疫病やらに加えて人災が起こることもある。だからこの成人の儀は子どもが大人になる境の祭祀だけではなく、凶事の前触れがないかを見極めるためのものでもある。


 春から秋にかけては砥石を採りに行くが、起きてる大蛇と出くわすこともある。恐ろしく狂暴なやつで狼のような俊迅さと獅子の如き強靭さにはどんな戦い馴れた者でもーー戦い馴れた者こそ恐怖を感じると言う。そのうえ並みの武器では傷すらつけられない頑丈さと擦れば斬れるほど縁の鋭い鱗に覆われた巨大な体躯はそいつとの戦い方を熟知していなければ生きた要塞みたいなものだ。安直に有鱗の魔物と同じように腹が弱点と決めつけて命を落とした若い剣士やら、眼を射抜かれて無事な生き物はいないとか自信満々に言ってやられた弓使いの話はうちの村ではわりと有名だ。なにしろ、腹の鱗は奴の鱗の中でも最も硬く、眼は透明な鱗で覆われている。奴を物理攻撃で倒そうと思えば、口内に刃を突き入れ、そこから尾に向かって捌くように斬り裂くくらいしかない。それも上手いこと内側の肉から斬り裂かなければ剣のほうが先に奴の鱗で折られかねない。


 だけど実は、物理攻撃に頼らなければ、もっと楽に倒す方法はある。いくら恐ろしく強いと言っても、奴はただただ、でかい蛇だ。氷系の魔法で温度を一定以下まで下げれば動けなくなる。他にも、蛇というやつは鱗の表面が潤滑油のような役割の脂質で覆われているものがある。しかもこいつの場合、結構燃えやすい。だから本気で倒したいなら、魔法でも矢でもなんでも良いから火にかけてしまえば、残酷だとか、酷い異臭がするとか、のたうち回って少し離れた辺りでも地震が観測されるレベルで暴れることを除けば楽勝だったりする。


「レイ、そんなこと出来るようになったのか?」


 大蛇の恐ろしいのは、倒しにくいことじゃない。倒してはいけないことだ。大蛇を殺すと辺りの自然が死に、天変地異に見舞われると言う言い伝えがある。嘘か本当かは知らないけど、まあ確かに、あの大蛇が居なくなったら生態系のバランスは確実に崩れるだろう。


「まあな。あいつの顔面に適当に数種類の香草を刻んで混ぜた泥団子を投げつければしばらく動かなくなる」


「結構乱暴な方法だな!?」


「だってあいつら視覚は弱いから嗅覚を封じればだいたい時間稼げんだろ」


「足音でバレるだろ」


「足音くらいなんとかなる」


 まあ、俺も毎回そんなことやってる訳じゃない。基本的にはちゃんと正面から戦って怯ませて逃がす。


「はぁ...まあレイは村の中じゃ規格外だもんな、色々と」


「お前が言うか?」


 俺たちは互いに笑い合ってようやく腰を上げた。


「じゃあな、父さん、母さん。また来るから」


 ここへアレクサンダーと2人で来ると、いつも話し込む。俺の両親ではあるが、アレクサンダーにとってももう一組の親のようなものなんだろう。


「あー、月がだいぶん高くまで昇ったねえ」


「そうだな。...手合わせは明日だな」


「だな」


 来た道を戻り、家に帰る。俺が桶や鞄を片付けている間にアレクサンダーが取り分の籠からすぐに食べられるものを適当に見繕ってテーブルに並べた。


「じゃ、今日はとっとと食って寝るぞ。朝イチ起こすからさ」


「俺より先に食ってるし」


「明日お土産とってくるから安心しろよ」


 とってくるってこいつ、ここで寝るつもりか?


「家帰らねえのか」


「もう顔出したよ。今から帰ってもどうせ明日も朝から来るんだし面倒だろ?」


「面倒って、隣だろが。ま、いいけど」


 ありあわせの夕食をサッと平らげ、ほとんどそのまま突っ伏すように眠った。元々、アレクサンダーは長旅から帰ってきたばかりだし、俺も朝から夕方まで森と激流と断崖絶壁と格闘してたからというのもあるが、結局、俺たちは手合わせが楽しみで仕方ないらしい。

 それが証拠に、朝日が昇ると同時に起きた俺たちは、軽く走って体をほぐした後、森の中の少し開けた所へ直行した。


「レイ、頭、ちゃんと起きてるか?」


「当たり前だろ。お前こそ起きてんのか?寝癖ついてるぞ」


「これはお洒落だ!」


「...なんで手合わせ前に髪型キメて来んだよ」


 アホなことを言い合いながらも俺たちは既に構えていてお互いの隙を探っている。


「いやぁ、オレもすっかり都会っ子になっちゃったかな?」


「うぜ」


 フッと笑みをこぼすと同時にアレクサンダーの姿がぶれた。そう錯覚するような勢いで間を詰め足払いを掛けてくる。

 軽いステップで避けると起き上がり様に蹴りが飛んでくる。潜り抜けるようにまた避けて剣を鞘から解き放つとアレクサンダーはそれを引き手で受け流した。

 手甲で強化された拳による殴打やお手製のブーツで強化された蹴りもそうだが、アレクサンダーの一番の売りはその身軽さだ。クルリと回って鋭い正拳が喉笛めがけて放たれる。


「させるか、よっ」


 飛び退りながら一閃、避けられるのは元より承知だ。先に躱したぶん一拍早く地に足が着く。着地の反動でアレクサンダーに向けて剣を突き入れる。


「レイ、甘いよ」


 アレクサンダーは俺の剣を弾き飛ばし、ついでといった感じで俺を投げ飛ばした。


「お互い様っ!!」


 なので俺はアレクサンダーが手を離す瞬間に掴み返し巻き込んでやった。


「いっ、て...」


「ザン、重い」


 結果、アレクサンダーは顔面から岩に衝突。俺も変な方向に力がかかって背中から地面に叩きつけられた。しかもその上にアレクサンダーが落ちてきた。


「何やってんだ、俺達は」


「さあ。寝惚けてたんじゃない?」


 あまりにも締まらないお互いの格好悪さに苦笑しながら起き上がった。


「レイ、オレの顔大丈夫?」


「見た目は別にどうもなさそうだけど」


「良かったー。お前は大丈夫か?骨折してないだろうな?」


「するわけねえだろ。たかだかお前の体重じゃ痣が限界だろ」


 日もだいぶ昇ったことだしいったん帰ろうと踵を返した俺達は固まった。なんせ、振り返った森の中に


「こんにちは」


 木々の幹のような優しいアッシュブラウンの髪を靡かせ、嬉しそうに微笑む女の子が立っていたのだから。


「こ、こんにちは」


「何返事してんだよ」


 アレクサンダーの頭を叩きながら女の子に警戒の眼を向ける。彼女はいつの間にかそこに立っていた。アレクサンダーも俺も、村では1、2を争う武人で、気配にも、視線にも敏感なはずなのに、彼女がいつからそこにいたのか、全く気づかなかった。どう考えても彼女は異常だ。


「見つけた。貴方なんだわ。一目で分かった。お願い。一緒に来て!」


「...お前は、狂信者か?討伐隊か?」


 あからさまに怪しい彼女に、そんな問いをぶつけた。そもそもこの付近に、この森に立ち入る時点で大抵そのどちらかだ。予定調和信奉者か、どこかの宗教の討伐隊と名乗る、実質排他的過激派か。

アコーダが伝承を伝える村であるせいで時折、そういう人間がやって来る。

 なぜか彼女が俺1人を指しているためアレクサンダーが微妙に蚊帳の外で、あたふたしているがとりあえず放置だ。


「貴方の言っている事はよく分からないけど、私はどっちでもない。転変の巫術師よ。お願い、一緒に来て、運命を変えて!」


「運命を、変える...」


 繰り返した俺を彼女は真剣な瞳でじっと見つめた。



なるべく週1ペースで投稿する予定です。

レイモンドはとりあえず普通に生活できれば良い、程度でダラダラと(?)生きています。基礎能力は高いのですが、本人は気づいておりません。

武道、好きなんですが書き方が今一つ分かりませんorz



レイモンド→レイ

アレクサンダー→ザン

怪しい女の子→??


『次回予告』


レイ「突然俺達の前に現れた怪しい女の子。彼女は運命を変えて、と言った」

??「怪しいとか言わないでよ、酷くない?」

レイ「そもそも巫術師ってとこから怪しいんだよ」

ザン「はいはい、決めつけてかからないの」

??「...あなた誰?」

レイ「それは俺達の台詞だ!!」





レイ「おい、この次回予告、意味あるんだろうな?前回の予告、最後の数行だけじゃねえか」

??「ねえ、せめて私の名前くらい出してくれても...」

レイ「だから誰だよ。つーか何だよこの茶番は」

??「予告ではがっつり出してたのにここでは不審者扱いなんて!」

ザン「次回、レイの大嫌いな“運命”の出会い!」

??「そこだけで嫌わないで、せめて私の人格か何かで嫌ってくれない?」

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